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7話
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スーパーから出て帰り道を歩く。散歩の帰り道、冬子さんは何故か申し訳なさそうな顔をしていた。
「すいません」
「なんかありました?」
「散歩って言ってたのに、結局買い物だけで終わっちゃって」
「別にそれは気にしないでください。自分も買い物あったんで助かりました」
「それならいいんですけど」
重そうな荷物を抱えているが、持ちましょうかとは言えない空気感だった。そのまま歩いて家へと向かう。
帰り道も特に何も気にせず会話をして歩いていた。1人で歩く時とは違う楽しい気持ちで歩いて帰ることができた。
「ただいま」
「おじゃまします」
家を出た時と変わらぬ景色。当たり前なのだが、今更ながら人を招き入れてることを考えれば惨状と呼ぶべきなのかもしれない。
それでも冬子さんを入れないわけにはいかず、廊下を歩いて部屋へと入る。
特に会話もなく、やることもなく。自分の部屋に誰かがいるという状況があまりにも異質な気がして、どうすればいいかが分からなかった。
そんな状況でも、一つ聞いておかなければならないことがあることに気が付いた。
「今日、晩御飯どうしますか?」
「うーん、なんかあります?」
「パスタ茹でるか、肉と野菜で炒め物作るか外で食べるかですね」
「なるほど」
「今日はパスタ茹でようと思ってましたけど」
「それでお願いします」
「アレルギーとかありますか?」
「特に無いです」
「今から作っていいですか?」
「問題ないです」
特に膨らむことのない会話だが、淡々と返事をしてくれるのは正直助かっていた。
自分の部屋に恋人どころか友人とすら呼べるか怪しい女性を置いておくのも気が引けたが、夕食を作るためなら仕方ない。そう言い聞かせて、パスタを茹でる。
適当にパスタを茹でてソースと絡めて出来上がったものを、部屋へと持っていく。2皿持っていくのは初めてで、何だか不思議な感じがした。
部屋に入って机の上に皿を置こうとしたところで置けないことに気付く。今までは1人分の皿が置ければ良かったが、今は2人分の皿を置かなきゃいけない。どうしようかと思いながらも冬子さんに話しかける。
「机の上、グチャグチャなんですけど適当に避けてもらっていいですか?」
「分かりました」
「助かります」
冬子さんは丁寧に机の上のものを避けていく。床に置いたり端に寄せたりと配慮もしてくれていた。
ある程度荷物を避け切ったところで、パスタを盛った皿を置く。
「カルボナーラです」
「定番ですね」
「それが一番外れなさそうだったので」
「なるほど」
「いただきます」
「いただきます。ありがとうございます」
少しの会話の後、カルボナーラを食べ始める。あいかわらずの適当調理だったが、期待を裏切らない安定感だった。ソースが少しだけ重たい気がしないでもないが、それもカルボナーラの良さだと振り切って食べ進める。
夕食を食べている間は自然と会話はなく、2人でパスタを啜る音だけが響いていた。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした。ありがとうございます」
「皿、持っていきますよ」
「ありがとうございます。致せり尽せりで申し訳ないです」
「そんなことないですよ。ありがとうございます」
カルボナーラが盛られていた皿を流し台へと持っていく。そして、また部屋へと戻る。これからの予定は全くの未定だった。冬子さんがきてからまだ1日も経っていないはずなのに、随分と長い時間が経った気がした。
「すいません」
「なんかありました?」
「散歩って言ってたのに、結局買い物だけで終わっちゃって」
「別にそれは気にしないでください。自分も買い物あったんで助かりました」
「それならいいんですけど」
重そうな荷物を抱えているが、持ちましょうかとは言えない空気感だった。そのまま歩いて家へと向かう。
帰り道も特に何も気にせず会話をして歩いていた。1人で歩く時とは違う楽しい気持ちで歩いて帰ることができた。
「ただいま」
「おじゃまします」
家を出た時と変わらぬ景色。当たり前なのだが、今更ながら人を招き入れてることを考えれば惨状と呼ぶべきなのかもしれない。
それでも冬子さんを入れないわけにはいかず、廊下を歩いて部屋へと入る。
特に会話もなく、やることもなく。自分の部屋に誰かがいるという状況があまりにも異質な気がして、どうすればいいかが分からなかった。
そんな状況でも、一つ聞いておかなければならないことがあることに気が付いた。
「今日、晩御飯どうしますか?」
「うーん、なんかあります?」
「パスタ茹でるか、肉と野菜で炒め物作るか外で食べるかですね」
「なるほど」
「今日はパスタ茹でようと思ってましたけど」
「それでお願いします」
「アレルギーとかありますか?」
「特に無いです」
「今から作っていいですか?」
「問題ないです」
特に膨らむことのない会話だが、淡々と返事をしてくれるのは正直助かっていた。
自分の部屋に恋人どころか友人とすら呼べるか怪しい女性を置いておくのも気が引けたが、夕食を作るためなら仕方ない。そう言い聞かせて、パスタを茹でる。
適当にパスタを茹でてソースと絡めて出来上がったものを、部屋へと持っていく。2皿持っていくのは初めてで、何だか不思議な感じがした。
部屋に入って机の上に皿を置こうとしたところで置けないことに気付く。今までは1人分の皿が置ければ良かったが、今は2人分の皿を置かなきゃいけない。どうしようかと思いながらも冬子さんに話しかける。
「机の上、グチャグチャなんですけど適当に避けてもらっていいですか?」
「分かりました」
「助かります」
冬子さんは丁寧に机の上のものを避けていく。床に置いたり端に寄せたりと配慮もしてくれていた。
ある程度荷物を避け切ったところで、パスタを盛った皿を置く。
「カルボナーラです」
「定番ですね」
「それが一番外れなさそうだったので」
「なるほど」
「いただきます」
「いただきます。ありがとうございます」
少しの会話の後、カルボナーラを食べ始める。あいかわらずの適当調理だったが、期待を裏切らない安定感だった。ソースが少しだけ重たい気がしないでもないが、それもカルボナーラの良さだと振り切って食べ進める。
夕食を食べている間は自然と会話はなく、2人でパスタを啜る音だけが響いていた。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした。ありがとうございます」
「皿、持っていきますよ」
「ありがとうございます。致せり尽せりで申し訳ないです」
「そんなことないですよ。ありがとうございます」
カルボナーラが盛られていた皿を流し台へと持っていく。そして、また部屋へと戻る。これからの予定は全くの未定だった。冬子さんがきてからまだ1日も経っていないはずなのに、随分と長い時間が経った気がした。
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