完全に疲弊しきった官公庁勤務の女の子と同居するだけの話

ぽよ

文字の大きさ
6 / 82

6話

しおりを挟む
 2人が動画を見て数時間が経過した。用事もなければイベントもない。寂しい男の一人暮らしなんてものはそんなもんだ。そう念じながらスマートフォンを閉じたところで、冬子さんが話しかけてきた。

「今から散歩でも行きませんか」
「散歩」
「そう、散歩」
「いいですけど、どこ行くんですか?」
「なんか適当に歩きましょう」
「はい」

 突然提案された散歩。しかし、この辺りは都会とも田舎とも言えない街だった。スーパーもコンビニもある。娯楽のためなら少し歩けばそれなりには楽しくできる。しかし、そのための移動は少しだけ時間を要するものがほとんどだった。
 冬子さんは自分が返事してすぐに立ち上がり、準備を始めた。自分もそれに合わせて準備を始める。
 準備が終わって、部屋を出る。家の鍵を閉めてから、アパートを出てひとまず駅の方向へと向かって歩き始めた。

「どこ行きます?」
「この町、何があるんですか」
「駅前にご飯屋さんが大量にあるのと、スーパーとコンビニです」
「田舎ですね」
「ギリギリ不便じゃないくらいですね」
「スーパー、日用品売り場ありますか」
「3階より上にはあります」
「分かりました」
「でも、袋有料ですけど」
「それは用意してあります」
「なるほど」

 用意周到な冬子さんとは対照的にいつもの適当なカバンで出た自分は、買い物があった時に容量が足りるか少しだけ不安になった。
 駅前のスーパーまでは2人で歩けば結構すぐ到着したように感じた。他愛のない会話は盛り上がることはないが、場をつなぐにはそれなりに役に立ってくれた。
 スーパーに入ると、冬子さんは無言で階段を登っていった。自分もそれについていく形で階段を登っていく。
 冬子さんは買うものが全て決まっていたようで、目当てのものを見つけて買い物籠へと取り込んでいった。
 カゴの中身をセルフレジで通し、代金を入れて袋に詰め込んでいく様は、店員さながらのスピード感だった。

「ありがとうございます。必要なものは買えました」
「袋、結構中身入ってますね」
「まぁ、買い物できる時にしておかないと」
「なるほど」
「秋吉さんも買い物したんですね」
「まぁ、必要なものがあったので」

 洗濯洗剤と食器洗い洗剤を買った。いつも無くなる直前に気づくのに、買うのを忘れてしまうものだった。たまたま今日思いついたので買っただけだったが、今の洗濯洗剤の容器の中身が分からない。思いついた時に買っておくのが悪くない選択肢のはずだった。
 買い物が終わるとすぐにスーパーを出た。買い物袋にパンパンに詰まった荷物を持つ冬子さんと、適当な袋にちょっと入った荷物で済む自分。2人で荷物を持ちながら、入り口付近で立ち止まる。

「今から何します?」
「思ってたより買い物が多かったので、一回秋吉さんの家に帰ります」
「了解です」

 冬子さんの荷物の量を見て、まだ散歩を続けましょうとは言えなかったので、ある意味助かったと言える。まだ時間も早かったが、ひとまず僕と冬子さんは家に戻ることにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...