完全に疲弊しきった官公庁勤務の女の子と同居するだけの話

ぽよ

文字の大きさ
34 / 82

34話

しおりを挟む
 何事もない金曜日が過ぎ去り、冬子さんと夕食を食べ、土曜日の朝に起きる。そして今、僕と彼女は電車に揺られていた。

「部屋に上がっていいんですか?」
「大丈夫ですよ。大体なんとかなります」
「はぁ、なるほど」

 今の時刻は朝の8時。平日なら駅のホームで待っている時間だが、今日は既に1時間以上電車に揺られていた。
 冬子さんと2人で冬子さんの部屋へと向かっている。電車で2時間というのは案外遠い。乗っていれば着く距離を超えている。乗り換えが必ず発生するからだった。

「あ、次の駅で乗り換えです」
「了解です」
「それを乗り換えると7駅くらいですね」
「まだ結構ありますね」
「まぁ、そうですね」

 なぜかいつもより少しだけ明るい冬子さん。駅に着くと2人で降りて、別の路線へと乗り換える。彼女は自分の部屋にかえりたくなっていて、それで今日が楽しみだったのかもしれない。つまり、今日のここで最後になるかもしれないということだ。そうなったら、その時はその時だろう。
 電車を乗り換え、30分が経過した頃、冬子さんの家の最寄駅に到着した。

「着きました。ここから15分ほどで私のアパートです」
「社宅とか寮とかじゃないんですね」
「隣に同僚住んでるの、なんか嫌だったんですよね」
「まぁ、気持ちはわかりますよ」
「ありがとうございます」

 冬子さんが前を歩いて、その後ろを自分が歩く。自分の家と変わらないような住宅街の景色がしばらく続くと、彼女が立ち止まる。

「ここですね」
「普通のアパートですね」
「築5年くらいなんでまぁまぁ新しい方だと思います」
「なるほど」
「2階の一番階段側です」
「了解です」

 冬子さんが慣れた足取りでアパートまで行き、階段を登って、鍵を開ける。本当に入っていいんだろうかと自問自答するが、何の抵抗もなく扉を開け、手招きをしてくる彼女に何かをするのは無意味だと悟った。

「ただいま、あっつ」
「お邪魔します」
「廊下抜けたら部屋なんで、適当に鞄置いて座ってください」

 いつもとは違うどこかフランクで、生身の冬子さんが見えた気がした。
 廊下を抜けて扉を開けると、荷物は確かに置かれているが、必要最低限の部屋、という感じが徹底されているように見えた。そんな部屋で鞄を置いて座ると、彼女が部屋に入ってくる。

「やっぱり何気に遠いですね」
「まぁ、そんな感じですね」
「今日は私の部屋を全力で片付けて欲しいんです」
「なんかそんな話してましたけど、割と大丈夫そうじゃないですか?」
「先週ここに帰ってきたのにほとんど進んでないんです。だから秋吉さんを呼びました」
「全くもって理解できないんですけど」
「私、もう仕事は退職届出したんです」
「はぁ、なるほど」
「この部屋も、退去まであと2週間なんです」
「え、それは初耳ですね」
「引越し手配で秋吉さんの部屋に送ろうとしてる荷物の段ボールがクローゼットの中にいます」
「それも初耳です」
「まだ2個なんですけど、段ボールは残ってて、今から一緒に片付けて欲しいんです」
「それは別に大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」

 唐突に出てくる衝撃の事実の数々に驚かざるを得ないが、仕方のないことだ。冬子さんにも事情はある。そう思うしかない。

「じゃあ、10分くらい休んだらやりますか」
「了解です」

 最寄駅からここまで異様な暑さだった。冬子さんと一緒に部屋に座り、一時の休憩を取ることにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...