35 / 82
35話
しおりを挟む
10分ほどの休憩の後、冬子さんの部屋の片付けが始まった。見ていいのか分からないものが少しある気もするが、それにはなるべく触れないことにする。
「一般的な引越し段ボールの作り方でいいんですよね?」
「そうですね、それだと助かります」
「じゃあカテゴリーで固めて入れていきます」
「お願いします」
僕と冬子さんは部屋に置いてある段ボールに荷物を詰めていく。当たり障りのない私物をひたすら詰め込んでいく。
荷物をひたすら段ボールに詰め続けて1時間。思っていたよりは時間がかかった。蓋を閉じて、ガムテープで開き留めをして、何が入っているかをテープに書く。一息ついたところで、冬子さんが口を開いた。
「私、先週帰らなかったじゃないですか」
「え?えぇ、そうですね」
「どうしたらいいんだろうってずっと考えてたんですよね」
「なるほど」
「大学を出て、政府の省庁で仕事をするために頑張って、それでも全然成果が出なくて」
「はい」
「どうしたらいいか分からなくなって」
「はい」
「実は秋吉さんのところにいくのも間違ってるんじゃないかって」
「大丈夫ですよ」
「……ありがとうございます。でもやっぱり、私はどうすればいいのか分からなかったんです」
「戻ってきたのはなんかあったんですか?」
「もう職場は退職して、この部屋も退去届は出しちゃったんです」
「退去届も出してたんですね」
「だから、荷物を作ってたんですけど、その途中で、そんなことを考え始めちゃうと、止まらなくなったんです」
「なるほど」
「でも、もう私には秋吉さんに頼るしか選択肢が無いんだってなって、ちょっとしか進んでない荷造りを放り出して、秋吉さんの部屋に行くことにしたんです」
「良いと思いますよ。生きてるなら大体なんとかなります」
「ありがとうございます」
少しずつ話をする進む冬子さん。その返事は、間違いのないように言葉を選びながらになる。その話もひと段落ついた時、冬子さんにはまだ続きがあったようで、口を開いた。
「私、親の反対を押し切って、今の仕事についたんですよ」
「なるほど」
「私頑張れるから!って言って、引越しまでして自分のやりたいことを押し通したんです」
「僕も似たような経験はあります。気持ちは分かりますよ」
「え、そうなんですか」
「だからこそ、冬子さんの気持ちが今分かっているんだと思います」
「秋吉さんの話、また聞かせて欲しいです」
「まぁ、そのうちですね」
「親とは結局もう半年くらい連絡も取ってなくて、どうすれば良いのかすら分からなくなってます」
「早く連絡が取れるならその方がいいんでしょうけど、気持ちの整理がついてからにした方がいいと思います」
「はい。ありがとうございます」
冬子さんはそこまで話すと、全てを話し終わったようで、動きも落ち着いたように見えた。
その後はまた荷造りを再開し、終わったのは夕方頃だった。
「そういえば、お昼食べてないですね」
「カップラーメンならありますよ」
「いただいてもいいですか」
「もちろん。好みとかあります?」
「なんでも食べますよ」
「助かります」
冬子さんはそう言うと、キッチンに立って湯を沸かし始めた。初めてみる調理風景だった。
湯沸かし器に水を入れてスイッチを入れると部屋に戻ってきた。
「ご飯食べたら配送の手配して風呂入って寝ましょう」
「そうですね」
「来客用の布団はあるので」
「助かります
女友達の部屋ですら寝たことがない。果たして無事に睡眠にありつけるだろうかと考えながら、湯沸かし器を待った。
「一般的な引越し段ボールの作り方でいいんですよね?」
「そうですね、それだと助かります」
「じゃあカテゴリーで固めて入れていきます」
「お願いします」
僕と冬子さんは部屋に置いてある段ボールに荷物を詰めていく。当たり障りのない私物をひたすら詰め込んでいく。
荷物をひたすら段ボールに詰め続けて1時間。思っていたよりは時間がかかった。蓋を閉じて、ガムテープで開き留めをして、何が入っているかをテープに書く。一息ついたところで、冬子さんが口を開いた。
「私、先週帰らなかったじゃないですか」
「え?えぇ、そうですね」
「どうしたらいいんだろうってずっと考えてたんですよね」
「なるほど」
「大学を出て、政府の省庁で仕事をするために頑張って、それでも全然成果が出なくて」
「はい」
「どうしたらいいか分からなくなって」
「はい」
「実は秋吉さんのところにいくのも間違ってるんじゃないかって」
「大丈夫ですよ」
「……ありがとうございます。でもやっぱり、私はどうすればいいのか分からなかったんです」
「戻ってきたのはなんかあったんですか?」
「もう職場は退職して、この部屋も退去届は出しちゃったんです」
「退去届も出してたんですね」
「だから、荷物を作ってたんですけど、その途中で、そんなことを考え始めちゃうと、止まらなくなったんです」
「なるほど」
「でも、もう私には秋吉さんに頼るしか選択肢が無いんだってなって、ちょっとしか進んでない荷造りを放り出して、秋吉さんの部屋に行くことにしたんです」
「良いと思いますよ。生きてるなら大体なんとかなります」
「ありがとうございます」
少しずつ話をする進む冬子さん。その返事は、間違いのないように言葉を選びながらになる。その話もひと段落ついた時、冬子さんにはまだ続きがあったようで、口を開いた。
「私、親の反対を押し切って、今の仕事についたんですよ」
「なるほど」
「私頑張れるから!って言って、引越しまでして自分のやりたいことを押し通したんです」
「僕も似たような経験はあります。気持ちは分かりますよ」
「え、そうなんですか」
「だからこそ、冬子さんの気持ちが今分かっているんだと思います」
「秋吉さんの話、また聞かせて欲しいです」
「まぁ、そのうちですね」
「親とは結局もう半年くらい連絡も取ってなくて、どうすれば良いのかすら分からなくなってます」
「早く連絡が取れるならその方がいいんでしょうけど、気持ちの整理がついてからにした方がいいと思います」
「はい。ありがとうございます」
冬子さんはそこまで話すと、全てを話し終わったようで、動きも落ち着いたように見えた。
その後はまた荷造りを再開し、終わったのは夕方頃だった。
「そういえば、お昼食べてないですね」
「カップラーメンならありますよ」
「いただいてもいいですか」
「もちろん。好みとかあります?」
「なんでも食べますよ」
「助かります」
冬子さんはそう言うと、キッチンに立って湯を沸かし始めた。初めてみる調理風景だった。
湯沸かし器に水を入れてスイッチを入れると部屋に戻ってきた。
「ご飯食べたら配送の手配して風呂入って寝ましょう」
「そうですね」
「来客用の布団はあるので」
「助かります
女友達の部屋ですら寝たことがない。果たして無事に睡眠にありつけるだろうかと考えながら、湯沸かし器を待った。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる