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57話
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何気ない土曜日が終わり、日曜日がやってくる。しかし、今日も予定は決まっていない。朝布団から起きると、冬子さんが扉を開けた。
「おはようございます」
「おはようございます。相変わらず早いですね」
「少しずつ遅くはなってきてるんですけどね」
「それでも早いですね」
まだ布団から上半身を起こしただけの自分とは正反対で完全に起きた姿になっている冬子さん。それでも遅くなった方だと言うのだから、すごい生活リズムだったことは間違い無いのだろう。
ふとスマートフォンの時計を見た。自分が寝坊しているだけの可能性ももちろんある。そう思い確認してみたが、7時を回った頃だった。自分の中では圧倒的に早い方だ。遠出する用事があってもこんなに早いことは珍しい。布団から体を完全に起こして、洗面台へと向かう。
かつて一人暮らしというにも限界があるほどの清潔感のなさだった洗面台も、随分と綺麗になった。掃除は欠かさずやっているし、綺麗に使うように心がけるようになった。自分に起きた変化を改めて認識する。他人との出会いや生活というのは、人の生活を大きく変える。いままで自覚のなかったことが、少しずつ実感を伴ったものに変わってくる。不思議な感覚だった。
顔を洗って、歯を磨いて、髭を剃って、部屋に戻る。冬子さんは着替えた状態で座っていた。
「今日って予定ありますか」
「今日は特に予定はないですね。何かやりたいこととかありますか?」
「特に決まってるものはないんですけど、1日一回外出はしないと思ってますね」
「早めに家出ますか。まだ8時くらいですけど」
「分かりました」
分かりましたとは言ったものの、何一つ着替え終わっていなかった。最近は少しずつおしゃれというものを学びつつあります。自分に似合うを目指しつつ、世間の流行を取り入れるように頑張ってみる。どう頑張っても無理ならポロシャツという手に出る。今日はその日だった。
ジーパンを履いて、ポロシャツを着て、冬子さんと一緒に外に出る。真夏日だった。
「朝ですらこんなに暑いなんて、流石に夏ですね」
「真夏日って、昼だけ暑かったら私たちはそれだけで満足できるんですけどね」
「地球温暖化もここまで来たかという感じがします」
「ぼちぼち駅まで歩きましょう」
「そうですね」
夏の日差しは朝と言えども容赦ない。ポロシャツはまだ涼しい部類だが、太陽がもう少し手加減をしてくれれば、まだ過ごしやすくなる。それは叶わない願いなのだけれど。
冬子さんとぼちぼち歩きながら信号に引っ掛かる。通勤でも引っ掛かる信号だった。
「ここの信号、長いんですよね」
「私も駅まで行く時はここ通りますけど、なんでこんなに長いんでしょうね」
「優先道路が車側だからでしょうけど、それでもなかなかです」
「本当にそうですね」
信号が長いのに木が生えてなければ太陽を遮る建物もない。昨今の夏の気温を考えれば、日除の一つは欲しいところである。
そんな会話をしていると信号はいつもより早く変わった気がした。
青になった信号を確認してから歩き出す。面倒だが仕方ない。
そこから少し歩いて左に曲がると、駅につながる通りに出る。
「最近では見慣れた景色になってきました」
「良かったです。少しずつ、取り戻していきましょう」
「ありがとうございます」
偉そうなことが言える立場ではないのだけれど、それでも冬子さんの役に立ちたいという気持ちが勝って、出てきてしまった。冬子さんが不快に思っているわけではなさそうだったので、良しとしようか。
そこからさらにもう少し歩くと、駅がある。その手前の交差点の信号は、今回は捕まらずに済んだ。
「さて、どこいきましょうか」
「とりあえず、いつも自分が行ってるところに行きましょう」
「そうします」
今日は休日。冬子さんと一緒に出かける。それが、とても楽しみな1日だった。
「おはようございます」
「おはようございます。相変わらず早いですね」
「少しずつ遅くはなってきてるんですけどね」
「それでも早いですね」
まだ布団から上半身を起こしただけの自分とは正反対で完全に起きた姿になっている冬子さん。それでも遅くなった方だと言うのだから、すごい生活リズムだったことは間違い無いのだろう。
ふとスマートフォンの時計を見た。自分が寝坊しているだけの可能性ももちろんある。そう思い確認してみたが、7時を回った頃だった。自分の中では圧倒的に早い方だ。遠出する用事があってもこんなに早いことは珍しい。布団から体を完全に起こして、洗面台へと向かう。
かつて一人暮らしというにも限界があるほどの清潔感のなさだった洗面台も、随分と綺麗になった。掃除は欠かさずやっているし、綺麗に使うように心がけるようになった。自分に起きた変化を改めて認識する。他人との出会いや生活というのは、人の生活を大きく変える。いままで自覚のなかったことが、少しずつ実感を伴ったものに変わってくる。不思議な感覚だった。
顔を洗って、歯を磨いて、髭を剃って、部屋に戻る。冬子さんは着替えた状態で座っていた。
「今日って予定ありますか」
「今日は特に予定はないですね。何かやりたいこととかありますか?」
「特に決まってるものはないんですけど、1日一回外出はしないと思ってますね」
「早めに家出ますか。まだ8時くらいですけど」
「分かりました」
分かりましたとは言ったものの、何一つ着替え終わっていなかった。最近は少しずつおしゃれというものを学びつつあります。自分に似合うを目指しつつ、世間の流行を取り入れるように頑張ってみる。どう頑張っても無理ならポロシャツという手に出る。今日はその日だった。
ジーパンを履いて、ポロシャツを着て、冬子さんと一緒に外に出る。真夏日だった。
「朝ですらこんなに暑いなんて、流石に夏ですね」
「真夏日って、昼だけ暑かったら私たちはそれだけで満足できるんですけどね」
「地球温暖化もここまで来たかという感じがします」
「ぼちぼち駅まで歩きましょう」
「そうですね」
夏の日差しは朝と言えども容赦ない。ポロシャツはまだ涼しい部類だが、太陽がもう少し手加減をしてくれれば、まだ過ごしやすくなる。それは叶わない願いなのだけれど。
冬子さんとぼちぼち歩きながら信号に引っ掛かる。通勤でも引っ掛かる信号だった。
「ここの信号、長いんですよね」
「私も駅まで行く時はここ通りますけど、なんでこんなに長いんでしょうね」
「優先道路が車側だからでしょうけど、それでもなかなかです」
「本当にそうですね」
信号が長いのに木が生えてなければ太陽を遮る建物もない。昨今の夏の気温を考えれば、日除の一つは欲しいところである。
そんな会話をしていると信号はいつもより早く変わった気がした。
青になった信号を確認してから歩き出す。面倒だが仕方ない。
そこから少し歩いて左に曲がると、駅につながる通りに出る。
「最近では見慣れた景色になってきました」
「良かったです。少しずつ、取り戻していきましょう」
「ありがとうございます」
偉そうなことが言える立場ではないのだけれど、それでも冬子さんの役に立ちたいという気持ちが勝って、出てきてしまった。冬子さんが不快に思っているわけではなさそうだったので、良しとしようか。
そこからさらにもう少し歩くと、駅がある。その手前の交差点の信号は、今回は捕まらずに済んだ。
「さて、どこいきましょうか」
「とりあえず、いつも自分が行ってるところに行きましょう」
「そうします」
今日は休日。冬子さんと一緒に出かける。それが、とても楽しみな1日だった。
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