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二人三脚

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 二学期もいつも通り過ぎていく。特に変化があるわけでもなく、今年も淡々と決まる出場種目の中に飲み込まれていく。そして、予定通り高島さんとの二人三脚に決定する。今日この体育祭まで何一つ練習をしていないけれど、去年はなんとかなったから大丈夫だろうか。不安だった。

「体育祭だね」
「めんどくさいなぁ」
「二人三脚を出るだけで済んだし大丈夫だよ」
「まぁ、それはそうか」

 学校のグラウンドで開催される体育祭。盛り上がることはあるが、粛々と進んでいく。高校の体育祭は、走ってばっかりだ。体育祭とは名ばかりの陸上競技会みたいな感じに見える。そんな中で異色の二人三脚。高島さんは誰よりも先に手を挙げていた。そして僕が巻き込まれる。そして、それに異論を出す人はいなかった。いつもとは質の違う喧騒の中、ぼんやりと眺めていると、ついに二人三脚がきた。

「行くよ!」
「はーい」

 やる気満々の高島さんに連れられて僕もグラウンドへと向かう。1クラス1組が選ばれ、学年ごとのリレーになっている。他のクラスも去年と同じ顔ぶれのような気がする。二人の足を紐で結んで、スタートラインに立つ。全組の準備が整ったところで、ピストルが鳴る。

「いよいよだ」
「転けないようにしたい」
「去年は大丈夫だったしいけるよ!」
「なんとかなるかな」

 去年の二人三脚は、バトンを渡した後よろめいた。なんとか二人で踏ん張って持ち堪えたのだが、なかなか危ない状況だった。考え事をしている間に前のクラスの人が近づいてくる。それに合わせて高島さんと走り始める。

「いち、に、いち、に」
「いち、に、いち、に」

 今にも転けそうな走りだが、安定感は去年よりある。二人でバトンを受け取ってからペースを上げて走る。二人で走りながらコーナーも曲がる。二人三脚でとてつもない技術を求められる。なんとか転けないように走り、次のクラスの人にバトンを渡す。

「お願い!」

 高島さんの叫びと共に二人とも脱力。その瞬間に姿勢が崩れ、足がもつれてそのまま転倒。どちらかが下敷きにならなかっただけ運が良かった。

「いたたた…。大丈夫?」
「まぁなんとか。びっくりした」
「びっくりしたね」

 二人で立ち上がりながら笑い合う。なんとか順位は維持しつつバトンは渡すことができた。高島さんとの思い出が、また一つ増える。それが、たまらなく嬉しかった。
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