無限大の魅力を持つ君と一歩ずつ歩み寄った僕

ぽよ

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日常

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 体育祭が終わった次の日も普通の登校日だったけれど、クラス内には疲労の雰囲気が漂っていた。授業もどことなく緩い空気が流れ、今日という日も過ぎていく。

「おつかれ」
「おつかれー」

 流石の高島さんも今日ばっかりは疲れの色が見えている。そんな状態でも、高島さんは数学の炎を燃やしている。

「今日も数学やろう!」
「やるんだ、結構疲れてるように見えるけど」
「大丈夫!多分!」
「多分かぁ」
「体は動かさないから!」
「まぁそれはそうだけども」
「今日は私が普段やってる数学をやろう!」
「え、それは構わないけど、僕に理解できるのかな」
「多分!」
「頑張る」

 頼りない上に確証のない返事で申し訳ないのだけれど、高島さんの数学について行く自信は微塵もなかった。高島さんが付箋を貼ったページを開くと、何が書いているかすら分からない数式らしきものが羅列されていた。

「今日はこれをやるよ!」
「見たことないやつだ」
「これはインテグラルって言うんだよ。積分って前にやってなかったっけ」
「なんか聞いたことのある名前のような気がする」
「なんかで説明したような気がする」
「いま数学でやってるこういう式が積分に変わるんだよ」
「なんかよく分からないけど」
「これを区分求積法って言うんだよ」
「名前はかっこいい」
「これを使うと色んな面積が出せるよ!って感じ」
「なんだかざっくりだ」
「気のせいだよ!面積なんて元々ざっくりなんだから!」

 身も蓋もないことを笑顔で言う高島さん。けれど、なぜか納得してしまう迫力があった。そしてその言葉を皮切りに数学会が始まる。今までにない熱量で、高島さんは授業を続ける。なんだか、懐かしい気分になった。最初に数学の話をしていた頃も、こんな感じだった気がする。思わずぼんやりしていると、高島さんが解説を止めて話しかけてきた。

「どうしたの?なんかあった?」
「いや、なんか懐かしいなぁって」
「そう?」
「一年の春もこんな感じだった気がして」
「そうだったかもね」

 ふと高島さんを見ると、さっきまでの熱量が消えた姿で立っていた。何事かと思って待っていると、ぽつりと言った。

「もう一年かぁ」
「厳密には一年と半年くらい?」
「早いねー」
「その話前もしなかった?」
「したっけ?忘れちゃった」
「したような気がするだけかもしれないけど」
「まぁいいや。もうちょっとしたら修学旅行があって」
「うん」
「二学期が終わって三学期になって」
「うん」
「三年になって受験勉強に追われて」
「うん」
「いつか、この集まりも少なくなっちゃうのかな」
「同じクラスなら毎日会えるし大丈夫だよ」
「それはそうだけど。こうやって二人でやるから楽しいこともあるわけじゃん」
「まぁそれはそうだね」
「そういう青春が過ぎていくなぁってさ、ふと考えたんだよ」
「そっか」
「さっきから反応が薄いよ!もっと実感を持ってよ!」
「ごめんごめん。まぁそうだよね。もう一年は経過してるし、去年の今頃はバタバタしてるかもしれない」
「そう!そうだよ!」
「だから、今を楽しもう!」
「楽しむよ!」

 高嶋さんはそう言うと、またさっきの数学の解説に戻った。いつもの日常は、いつか消えてしまう。そのいつかが来ないようにするにはどうすればいいのか、僕には分からなかった。
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