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交わり
14話
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土曜日の朝。目が覚めると後輩はまだ眠っていた。立ち上がり歯を磨く。そして部屋に戻ると、後輩が起きていた。
「おはようございます」
「おはよう」
「今日は10時からなんで、そろそろ起きます」
「私もそろそろ起きるわ」
夏にしては涼しい朝の8時。準備諸々を含めるとそろそろ起きないと間に合わなくなる。立ち上がって歯を磨きに行った後輩の後ろで、パンを取って食べる。莉子がパンを食べ終わる間に後輩がパンを持って部屋に戻ってくる。
「今日は消化試合みたいなものですよ。考えたら負けです」
「由佳も乗り気じゃないのね」
「仕事の時のテンションで行くなら今からでもキャンセルしたいくらいですよ」
「私もよ」
二人で苦笑しながら支度を進める。おしゃれも程々。化粧も程々。時間がある時とはまた違う準備の遅さで着々と進めていく。
9時ごろに二人の準備が終わり、いよいよ向かうかというところで、やはり二人ともやる気が出なかった。望月がどれだけ気合を入れているか分からないが、波風を立てないようにしないといけない。それが厄介だった。後輩の今後のことを考えると何かが起きる前に全てを治める必要もある。
「じゃあ、行きますか」
「そうですね」
立ち上がり、廊下を抜けてドアを開ける。鍵を閉めて階段を降りたあたりから二人は臨戦体勢だった。集合は会社の最寄駅だというのに緊張が漂っていた。
駅に到着すると電車はまだ来ていなかった。ホームの椅子に座って電車を待つ。
「このまま電車が来なかったらドタキャンみたいにできるんですけどね」
「由佳がそんなこと言うなんて」
「私、仕事場の人とプライベートで会うの嫌なんですよ」
「え、私は?」
「先輩は先輩です」
「あ、あぁ」
「大丈夫ですよ。私は先輩のこと大事に思ってるので」
ニコニコしながらそんなことを言ってくる後輩のその言葉はおそらく本心だ。だからこそ、反応に困ってしまう。たとえその反応が後輩を傷つけるとしても、莉子には愛想笑いをすることしかできなかった。
ホームに着いた電車に乗り込み、特に会話のないまま揺られる。いつも通りのはずなのに、空気は重苦しかった。
「着いたわね」
「着きましたね」
スマートフォンの時計は9時30分を表示した。来るのが少し早すぎたかもしれない。周りの景色を見ながら後輩と喋っていると、見たことのある人影がいた。その人影はこちらに近づいてくると手を上げて、話しかけてきた。
「こんにちは」
「こんにちは」
「どうも」
望月だった。前回の飲み会の時とは違うラフな動きやすそうな格好だった。前回が気取った服装だったことが判明した。しかし、あの時の服は似合っていなかったような気もする。決して口には出さないが、今の服の方が良い。
仕事を含めた世間話をして、いよいよ動き始める。莉子も後輩も緊張していた。
「じゃあ、どこ行きます?」
「適当に喫茶店でお茶でよくないですか?」
「私もそれで良いと思います」
後輩が出してくれた助け船に乗って、なんとか喫茶店に行く方向に持っていく。小倉のことを思い出すと、正直このメンバーで服屋に行くのは避けたいし、もはや買い物全般も避けたい。
喫茶店は駅から歩いて15分ほどのところにある。土曜日の午前中なら混んでいるということはないと思ったのだが、予想が外れた。しかし、二組待ちならなんとかなるということで、椅子に座って待つことにした。
「いつも岩科がお世話になってます」
「あー、いえいえ」
「自由なやつでしょう」
「そんなことはないと思いますけど」
後輩が仕事場でどんな人間なのかさっぱりわからない。確かに自由だと言うのは感じなくもないが、それが一番にくるかと言われると、そうではない。少し我の強いところもあるが、気遣いのできる良い後輩だ。実は仕事場では違うのかもしれないが、莉子にはそう映っていた。
3人でなんだかんだと話していると順番が回ってきた。果たしてこの選択が吉と出るか凶と出るか。それが、今回の山場だと確信した。
「おはようございます」
「おはよう」
「今日は10時からなんで、そろそろ起きます」
「私もそろそろ起きるわ」
夏にしては涼しい朝の8時。準備諸々を含めるとそろそろ起きないと間に合わなくなる。立ち上がって歯を磨きに行った後輩の後ろで、パンを取って食べる。莉子がパンを食べ終わる間に後輩がパンを持って部屋に戻ってくる。
「今日は消化試合みたいなものですよ。考えたら負けです」
「由佳も乗り気じゃないのね」
「仕事の時のテンションで行くなら今からでもキャンセルしたいくらいですよ」
「私もよ」
二人で苦笑しながら支度を進める。おしゃれも程々。化粧も程々。時間がある時とはまた違う準備の遅さで着々と進めていく。
9時ごろに二人の準備が終わり、いよいよ向かうかというところで、やはり二人ともやる気が出なかった。望月がどれだけ気合を入れているか分からないが、波風を立てないようにしないといけない。それが厄介だった。後輩の今後のことを考えると何かが起きる前に全てを治める必要もある。
「じゃあ、行きますか」
「そうですね」
立ち上がり、廊下を抜けてドアを開ける。鍵を閉めて階段を降りたあたりから二人は臨戦体勢だった。集合は会社の最寄駅だというのに緊張が漂っていた。
駅に到着すると電車はまだ来ていなかった。ホームの椅子に座って電車を待つ。
「このまま電車が来なかったらドタキャンみたいにできるんですけどね」
「由佳がそんなこと言うなんて」
「私、仕事場の人とプライベートで会うの嫌なんですよ」
「え、私は?」
「先輩は先輩です」
「あ、あぁ」
「大丈夫ですよ。私は先輩のこと大事に思ってるので」
ニコニコしながらそんなことを言ってくる後輩のその言葉はおそらく本心だ。だからこそ、反応に困ってしまう。たとえその反応が後輩を傷つけるとしても、莉子には愛想笑いをすることしかできなかった。
ホームに着いた電車に乗り込み、特に会話のないまま揺られる。いつも通りのはずなのに、空気は重苦しかった。
「着いたわね」
「着きましたね」
スマートフォンの時計は9時30分を表示した。来るのが少し早すぎたかもしれない。周りの景色を見ながら後輩と喋っていると、見たことのある人影がいた。その人影はこちらに近づいてくると手を上げて、話しかけてきた。
「こんにちは」
「こんにちは」
「どうも」
望月だった。前回の飲み会の時とは違うラフな動きやすそうな格好だった。前回が気取った服装だったことが判明した。しかし、あの時の服は似合っていなかったような気もする。決して口には出さないが、今の服の方が良い。
仕事を含めた世間話をして、いよいよ動き始める。莉子も後輩も緊張していた。
「じゃあ、どこ行きます?」
「適当に喫茶店でお茶でよくないですか?」
「私もそれで良いと思います」
後輩が出してくれた助け船に乗って、なんとか喫茶店に行く方向に持っていく。小倉のことを思い出すと、正直このメンバーで服屋に行くのは避けたいし、もはや買い物全般も避けたい。
喫茶店は駅から歩いて15分ほどのところにある。土曜日の午前中なら混んでいるということはないと思ったのだが、予想が外れた。しかし、二組待ちならなんとかなるということで、椅子に座って待つことにした。
「いつも岩科がお世話になってます」
「あー、いえいえ」
「自由なやつでしょう」
「そんなことはないと思いますけど」
後輩が仕事場でどんな人間なのかさっぱりわからない。確かに自由だと言うのは感じなくもないが、それが一番にくるかと言われると、そうではない。少し我の強いところもあるが、気遣いのできる良い後輩だ。実は仕事場では違うのかもしれないが、莉子にはそう映っていた。
3人でなんだかんだと話していると順番が回ってきた。果たしてこの選択が吉と出るか凶と出るか。それが、今回の山場だと確信した。
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