43 / 50
交わり
16話
しおりを挟む
ついたラーメン屋は、ラーメン屋というよりつけ麺屋だった。ラーメンもあるし、油そばもある。流行に疎い莉子でも流行っていることだけは把握していたが、ここまで来ているとは思わなかった。
「ここ、来てみたかったんですよ」
「あら、初めてなのね」
「はい!」
元気に返事をする後輩の後ろから、メニューを覗く。つけ麺か油そばならチャーシュー、ラーメンなら味玉がついてくるらしい。どうやら今日はおまけがつく日らしいことだけは汲み取れた。
「中に入りましょう!」
「入りますか」
後輩と望月の会話の後、店に入る。流石に昼時とあって、混んでいる。ウェイティングシートに名前を書き、椅子に座って待つ。
昼時だが客の回転率は良く、5組待ちだったが15分ほどで中に入ることができた。中は少し狭いが居心地は悪くない。通されたボックス席に座る。店の外で見ていたメニューをもう一度見ながら、何を食べるか決める。
「私はつけ麺で!」
「じゃあ、私もそれにしようかしら」
「俺は味噌ラーメンかな」
「じゃあ押しちゃいます」
後輩が店員を呼ぶベルボタンを押すと、すぐに店員が来た。食べるものを注文して、少しの待ち時間だ。
さっきの喫茶店では一番しゃべっていた望月が喋らなくなった。莉子と後輩が思っていたより乗り気じゃなかったことが分かったのかもしれない。莉子と後輩はどんなつけ麺が来るかと楽しみにしていた。
「あ!きました!」
「きたわね」
莉子が注文したつけ麺は中、後輩が注文したつけ麺は大だった。見た目的にはほとんど分からないが、器の深さが微妙に違う。そのサイズの差を後輩と見ているうちに望月が頼んだラーメンも届く。
「いただきます!」
「いただきまーす」
「いただきます」
つけ汁の味付けは味噌だった。太めの麺に絡む粘度でしっかりと味と食感を感じる。つけ麺を初めて食べる莉子でも食べやすい味だった。隣に座る後輩と、目の前に座る望月も同じように食べていた。味が美味しいと話をした後は3人とも黙々と食べていた。
望月が最初に食べ終わり、それに続く形で莉子と後輩が食べ終わる。3人とも特に無感動のまま手を合わせる。
「美味しかったですね」
「ここのつけ麺、アリですね」
莉子と後輩が話をする間、望月は無言でそれを眺めていた。入る余地がないと諦めているのかもしれない。
結局その空気のまま望月が会計をして店を出る。
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした」
望月に感謝を伝えると、望月は申し訳なさそうな顔をした。
「俺、いらない存在でしたかね」
「いや、そんなことないですよ。あとは仕事場で面倒な感じにならなければ完璧だと思います」
「はぁ、なるほど」
容赦のない後輩の一言にがっくりとした望月だったが、おとなしく聞き入れた。実は望月と後輩は不仲だったりするのかもしれない。
ラーメン屋を出てしばらく歩くと駅に着く。そこでも望月が最初に口を開いた。
「じゃあ、俺はこれで。お疲れ様でした」
「お疲れ様です」
「お疲れ様でした」
駅の改札までくると、望月は挨拶もそこそこに改札を抜けていった。莉子と後輩が二人残され、しばし無言になる。
「私、なんか悪いことしちゃったかな」
「先輩は悪いことしてないと思います。望月さんも先輩には好きになってもらえないって分かっちゃったんじゃないですか?」
「そういうことなのかな。由佳に実害がなければいいんだけど」
「多分大丈夫です。変な人ですけど、機嫌であれこれをやってくる人ではないので」
「はぁ」
後輩はそういうが、莉子は生返事しかできない。人というのはたしかにすぐには変わらない。しかし、変化点を迎えると真逆の人間になることだってある。それをなんとなく知っていた莉子は失敗したかもしれないと思った。
「大丈夫ですよ。何かあったら相談する人もいます。もちろん先輩も含めて」
「うーん、それならいいんだけど」
「今日は私もそんなに気合い入れてなかったので喧嘩にならなくて良かったくらいで思ってます」
「そうなの」
「えぇ、はい。何度も言いますけど、大丈夫ですよ。きっとなんとかなります」
「それならいいんだけど」
やはりどこか心配にはなる。しかしそこに介入するほど莉子も事情に詳しいわけではない。そこは後輩に任せることにした。
「じゃあ、帰りましょうか」
「そうしましょう」
その会話の後、二人で改札を抜ける。今日はなんだか気疲れが多かった。そしてこのモヤモヤはしばらく抱えることになる。それは確信していた。それを解消するのに先輩に色々聞いてみようか。それを考えながら階段を降りる。自分が抱える問題をじっくり考える時間も必要かもしれないと思った。
「ここ、来てみたかったんですよ」
「あら、初めてなのね」
「はい!」
元気に返事をする後輩の後ろから、メニューを覗く。つけ麺か油そばならチャーシュー、ラーメンなら味玉がついてくるらしい。どうやら今日はおまけがつく日らしいことだけは汲み取れた。
「中に入りましょう!」
「入りますか」
後輩と望月の会話の後、店に入る。流石に昼時とあって、混んでいる。ウェイティングシートに名前を書き、椅子に座って待つ。
昼時だが客の回転率は良く、5組待ちだったが15分ほどで中に入ることができた。中は少し狭いが居心地は悪くない。通されたボックス席に座る。店の外で見ていたメニューをもう一度見ながら、何を食べるか決める。
「私はつけ麺で!」
「じゃあ、私もそれにしようかしら」
「俺は味噌ラーメンかな」
「じゃあ押しちゃいます」
後輩が店員を呼ぶベルボタンを押すと、すぐに店員が来た。食べるものを注文して、少しの待ち時間だ。
さっきの喫茶店では一番しゃべっていた望月が喋らなくなった。莉子と後輩が思っていたより乗り気じゃなかったことが分かったのかもしれない。莉子と後輩はどんなつけ麺が来るかと楽しみにしていた。
「あ!きました!」
「きたわね」
莉子が注文したつけ麺は中、後輩が注文したつけ麺は大だった。見た目的にはほとんど分からないが、器の深さが微妙に違う。そのサイズの差を後輩と見ているうちに望月が頼んだラーメンも届く。
「いただきます!」
「いただきまーす」
「いただきます」
つけ汁の味付けは味噌だった。太めの麺に絡む粘度でしっかりと味と食感を感じる。つけ麺を初めて食べる莉子でも食べやすい味だった。隣に座る後輩と、目の前に座る望月も同じように食べていた。味が美味しいと話をした後は3人とも黙々と食べていた。
望月が最初に食べ終わり、それに続く形で莉子と後輩が食べ終わる。3人とも特に無感動のまま手を合わせる。
「美味しかったですね」
「ここのつけ麺、アリですね」
莉子と後輩が話をする間、望月は無言でそれを眺めていた。入る余地がないと諦めているのかもしれない。
結局その空気のまま望月が会計をして店を出る。
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした」
望月に感謝を伝えると、望月は申し訳なさそうな顔をした。
「俺、いらない存在でしたかね」
「いや、そんなことないですよ。あとは仕事場で面倒な感じにならなければ完璧だと思います」
「はぁ、なるほど」
容赦のない後輩の一言にがっくりとした望月だったが、おとなしく聞き入れた。実は望月と後輩は不仲だったりするのかもしれない。
ラーメン屋を出てしばらく歩くと駅に着く。そこでも望月が最初に口を開いた。
「じゃあ、俺はこれで。お疲れ様でした」
「お疲れ様です」
「お疲れ様でした」
駅の改札までくると、望月は挨拶もそこそこに改札を抜けていった。莉子と後輩が二人残され、しばし無言になる。
「私、なんか悪いことしちゃったかな」
「先輩は悪いことしてないと思います。望月さんも先輩には好きになってもらえないって分かっちゃったんじゃないですか?」
「そういうことなのかな。由佳に実害がなければいいんだけど」
「多分大丈夫です。変な人ですけど、機嫌であれこれをやってくる人ではないので」
「はぁ」
後輩はそういうが、莉子は生返事しかできない。人というのはたしかにすぐには変わらない。しかし、変化点を迎えると真逆の人間になることだってある。それをなんとなく知っていた莉子は失敗したかもしれないと思った。
「大丈夫ですよ。何かあったら相談する人もいます。もちろん先輩も含めて」
「うーん、それならいいんだけど」
「今日は私もそんなに気合い入れてなかったので喧嘩にならなくて良かったくらいで思ってます」
「そうなの」
「えぇ、はい。何度も言いますけど、大丈夫ですよ。きっとなんとかなります」
「それならいいんだけど」
やはりどこか心配にはなる。しかしそこに介入するほど莉子も事情に詳しいわけではない。そこは後輩に任せることにした。
「じゃあ、帰りましょうか」
「そうしましょう」
その会話の後、二人で改札を抜ける。今日はなんだか気疲れが多かった。そしてこのモヤモヤはしばらく抱えることになる。それは確信していた。それを解消するのに先輩に色々聞いてみようか。それを考えながら階段を降りる。自分が抱える問題をじっくり考える時間も必要かもしれないと思った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
一条さん結婚したんですか⁉︎
あさとよる
恋愛
みんなの憧れハイスペックエリートサラリーマン『一条 美郷(※超イケメン)』が、結婚してしまった⁉︎
嫁ラブの旦那様と毒舌地味嫁(花ちゃん)....とっ!その他大勢でお送りしますっ♡
((残念なイケメンの一途過ぎる溺愛♡))のはじまりはじまり〜
⭐︎本編は完結しております⭐︎
⭐︎番外編更新中⭐︎
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる