1 / 40
邂逅
高杉という人間
しおりを挟む
一人暮らしの部屋の鍵を閉める。今日も大学で授業がある。それを受けるために大学へと向かうのだ。梨咲は大学1年生。不安だった友達作りもなんとかギリギリ成功して、ラインも交換した。電車の最寄駅に向かって歩く。今日は2限から授業がある。
「おはよう」
「おはよー。梨咲は今日2限だっけ」
「うん」
「頑張れ。私はもうちょっと寝る」
「寝坊しないようにね」
「うん」
友人との何気ないラインが終わる頃には、駅に着いて改札は抜けていた。大学が始まってから1週間。最初は緊張したけれど、案外なんとかなっている。
梨咲は、大学の単位と呼ばれるシステムがよくわかっていない。なんとなく必修の授業として心理学や哲学、教養の授業として社会学や数学を履修申請していた。ガイダンスから始まる授業もあれば、何事もないかのように教科書の内容を淡々と説明する授業もあった。
「授業の90分、なんか思ってたより長い」
高校までの授業のスタイルとは少し違う。大学という学校の授業の受け方をまだまだ模索していた。そんな大学生活が始まって一週間。今日は2限の講義に哲学があった。自由着席の講義だから、誰かが隣に来ることは当然ある。隣に座っている学生がなんとなく気になっていた。それでも、板書を取ったり気になったことをスマートフォンで検索したりする。莫大な厚みの辞書で調べることもあったりする。哲学という科目は初めて受ける。それ故に分からないことがたくさんある。
「それじゃあ、今からグループディスカッションです」
講義が半分を過ぎた頃、教授が宣言した。シラバスにも書いてあったグループディスカッションだ。最初に自己紹介から始まって、その後に今回の議題についての議論がスタートする。私の横に座っていた学生とは同じグループになった。名前は高杉達也というらしい。自己紹介の様子を見ると、緊張している様子はないらしい。今回の議題は、トロッコ問題と呼ばれるものだった。正直哲学というより倫理という気がするが、そこは気にしないことにする。
4人の小さなグループで行うディスカッションは30分で終わり、その中で得られたものを出席カードの裏側に書いてに書いて提出するというのが授業の流れだった。2限が終わり昼休み。今日も食堂に行き、1人で昼食を食べる。そうしようとしたところで、背後から声がした。振り振り向くと、そこには高杉がいた。
「もしよかったら一緒にご飯どうですか」
「え?えぇ、まぁいいですけど」
1人で食べる予定だった昼食を高杉と食べることになった。特に変なことをするような雰囲気は出ていないし、そもそも昼食を食べるだけなら誰と食べても変わらない。1人で食べるよりは気が紛れるが、特に何かが変わるわけではない。2人で食堂に向かって歩いていたが、特に会話をすることもなく淡々と歩いていた。初対面だから当たり前だが、梨咲自身がコミュニケーションを好んで取る方ではなかった。そして、食堂に着く直前で高杉が話しかけてきた。
「小宮さんは普段ご飯は何食べるの?」
「え?あぁ、昼ごはんかぁ。私はパン買って食べたりとか、弁当作ってきてたりとかするかな」
「弁当作ってるんだね、すごいな」
「まぁ、たまーにね」
「それでもすごい。俺、ほとんど料理とかしたことないんです」
「まぁでも出来なくても生きていけるよ。多分だけど」
素っ気なく返しているつもりはない。でも、少しだけ冷たい返答になっているかもしれないとは思う。特に気まずいと言うことはないが、二人には話題がなかった。特に喋ることもなく昼食を食べる手だけが進んでいく。無言のまま時間だけが過ぎていく。何かを焦っているかのような様子の高杉が話しかけてくる。
「小宮さんは次の授業ある?」
「次は英語だけど」
「クラスは?」
「B」
「じゃあ一緒に授業は受けられないなぁ。俺、Cだから!」
「うん、分かった」
「じゃあ、また後で!」
「はい」
どうしても素っ気ないような返事になってしまう。そして高杉は同じクラスじゃなかったからなのか会話が終わると手早く食堂を出て行った。梨咲も次の英語の授業がある。弁当を片付けて食堂を後にした。
「おはよう」
「おはよー。梨咲は今日2限だっけ」
「うん」
「頑張れ。私はもうちょっと寝る」
「寝坊しないようにね」
「うん」
友人との何気ないラインが終わる頃には、駅に着いて改札は抜けていた。大学が始まってから1週間。最初は緊張したけれど、案外なんとかなっている。
梨咲は、大学の単位と呼ばれるシステムがよくわかっていない。なんとなく必修の授業として心理学や哲学、教養の授業として社会学や数学を履修申請していた。ガイダンスから始まる授業もあれば、何事もないかのように教科書の内容を淡々と説明する授業もあった。
「授業の90分、なんか思ってたより長い」
高校までの授業のスタイルとは少し違う。大学という学校の授業の受け方をまだまだ模索していた。そんな大学生活が始まって一週間。今日は2限の講義に哲学があった。自由着席の講義だから、誰かが隣に来ることは当然ある。隣に座っている学生がなんとなく気になっていた。それでも、板書を取ったり気になったことをスマートフォンで検索したりする。莫大な厚みの辞書で調べることもあったりする。哲学という科目は初めて受ける。それ故に分からないことがたくさんある。
「それじゃあ、今からグループディスカッションです」
講義が半分を過ぎた頃、教授が宣言した。シラバスにも書いてあったグループディスカッションだ。最初に自己紹介から始まって、その後に今回の議題についての議論がスタートする。私の横に座っていた学生とは同じグループになった。名前は高杉達也というらしい。自己紹介の様子を見ると、緊張している様子はないらしい。今回の議題は、トロッコ問題と呼ばれるものだった。正直哲学というより倫理という気がするが、そこは気にしないことにする。
4人の小さなグループで行うディスカッションは30分で終わり、その中で得られたものを出席カードの裏側に書いてに書いて提出するというのが授業の流れだった。2限が終わり昼休み。今日も食堂に行き、1人で昼食を食べる。そうしようとしたところで、背後から声がした。振り振り向くと、そこには高杉がいた。
「もしよかったら一緒にご飯どうですか」
「え?えぇ、まぁいいですけど」
1人で食べる予定だった昼食を高杉と食べることになった。特に変なことをするような雰囲気は出ていないし、そもそも昼食を食べるだけなら誰と食べても変わらない。1人で食べるよりは気が紛れるが、特に何かが変わるわけではない。2人で食堂に向かって歩いていたが、特に会話をすることもなく淡々と歩いていた。初対面だから当たり前だが、梨咲自身がコミュニケーションを好んで取る方ではなかった。そして、食堂に着く直前で高杉が話しかけてきた。
「小宮さんは普段ご飯は何食べるの?」
「え?あぁ、昼ごはんかぁ。私はパン買って食べたりとか、弁当作ってきてたりとかするかな」
「弁当作ってるんだね、すごいな」
「まぁ、たまーにね」
「それでもすごい。俺、ほとんど料理とかしたことないんです」
「まぁでも出来なくても生きていけるよ。多分だけど」
素っ気なく返しているつもりはない。でも、少しだけ冷たい返答になっているかもしれないとは思う。特に気まずいと言うことはないが、二人には話題がなかった。特に喋ることもなく昼食を食べる手だけが進んでいく。無言のまま時間だけが過ぎていく。何かを焦っているかのような様子の高杉が話しかけてくる。
「小宮さんは次の授業ある?」
「次は英語だけど」
「クラスは?」
「B」
「じゃあ一緒に授業は受けられないなぁ。俺、Cだから!」
「うん、分かった」
「じゃあ、また後で!」
「はい」
どうしても素っ気ないような返事になってしまう。そして高杉は同じクラスじゃなかったからなのか会話が終わると手早く食堂を出て行った。梨咲も次の英語の授業がある。弁当を片付けて食堂を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?
akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。
今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。
家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。
だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
一条さん結婚したんですか⁉︎
あさとよる
恋愛
みんなの憧れハイスペックエリートサラリーマン『一条 美郷(※超イケメン)』が、結婚してしまった⁉︎
嫁ラブの旦那様と毒舌地味嫁(花ちゃん)....とっ!その他大勢でお送りしますっ♡
((残念なイケメンの一途過ぎる溺愛♡))のはじまりはじまり〜
⭐︎本編は完結しております⭐︎
⭐︎番外編更新中⭐︎
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜
侑子
恋愛
小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。
父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。
まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。
クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。
その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……?
※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。
氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁
瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。
彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる