世界で一番遠い場所 Rev.1

ぽよ

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邂逅

高杉という人間

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 一人暮らしの部屋の鍵を閉める。今日も大学で授業がある。それを受けるために大学へと向かうのだ。梨咲は大学1年生。不安だった友達作りもなんとかギリギリ成功して、ラインも交換した。電車の最寄駅に向かって歩く。今日は2限から授業がある。

「おはよう」
「おはよー。梨咲は今日2限だっけ」
「うん」
「頑張れ。私はもうちょっと寝る」
「寝坊しないようにね」
「うん」

 友人との何気ないラインが終わる頃には、駅に着いて改札は抜けていた。大学が始まってから1週間。最初は緊張したけれど、案外なんとかなっている。
 梨咲は、大学の単位と呼ばれるシステムがよくわかっていない。なんとなく必修の授業として心理学や哲学、教養の授業として社会学や数学を履修申請していた。ガイダンスから始まる授業もあれば、何事もないかのように教科書の内容を淡々と説明する授業もあった。

「授業の90分、なんか思ってたより長い」

 高校までの授業のスタイルとは少し違う。大学という学校の授業の受け方をまだまだ模索していた。そんな大学生活が始まって一週間。今日は2限の講義に哲学があった。自由着席の講義だから、誰かが隣に来ることは当然ある。隣に座っている学生がなんとなく気になっていた。それでも、板書を取ったり気になったことをスマートフォンで検索したりする。莫大な厚みの辞書で調べることもあったりする。哲学という科目は初めて受ける。それ故に分からないことがたくさんある。

「それじゃあ、今からグループディスカッションです」

 講義が半分を過ぎた頃、教授が宣言した。シラバスにも書いてあったグループディスカッションだ。最初に自己紹介から始まって、その後に今回の議題についての議論がスタートする。私の横に座っていた学生とは同じグループになった。名前は高杉達也というらしい。自己紹介の様子を見ると、緊張している様子はないらしい。今回の議題は、トロッコ問題と呼ばれるものだった。正直哲学というより倫理という気がするが、そこは気にしないことにする。
 4人の小さなグループで行うディスカッションは30分で終わり、その中で得られたものを出席カードの裏側に書いてに書いて提出するというのが授業の流れだった。2限が終わり昼休み。今日も食堂に行き、1人で昼食を食べる。そうしようとしたところで、背後から声がした。振り振り向くと、そこには高杉がいた。

「もしよかったら一緒にご飯どうですか」
「え?えぇ、まぁいいですけど」

 1人で食べる予定だった昼食を高杉と食べることになった。特に変なことをするような雰囲気は出ていないし、そもそも昼食を食べるだけなら誰と食べても変わらない。1人で食べるよりは気が紛れるが、特に何かが変わるわけではない。2人で食堂に向かって歩いていたが、特に会話をすることもなく淡々と歩いていた。初対面だから当たり前だが、梨咲自身がコミュニケーションを好んで取る方ではなかった。そして、食堂に着く直前で高杉が話しかけてきた。

「小宮さんは普段ご飯は何食べるの?」
「え?あぁ、昼ごはんかぁ。私はパン買って食べたりとか、弁当作ってきてたりとかするかな」
「弁当作ってるんだね、すごいな」
「まぁ、たまーにね」
「それでもすごい。俺、ほとんど料理とかしたことないんです」
「まぁでも出来なくても生きていけるよ。多分だけど」

 素っ気なく返しているつもりはない。でも、少しだけ冷たい返答になっているかもしれないとは思う。特に気まずいと言うことはないが、二人には話題がなかった。特に喋ることもなく昼食を食べる手だけが進んでいく。無言のまま時間だけが過ぎていく。何かを焦っているかのような様子の高杉が話しかけてくる。

「小宮さんは次の授業ある?」
「次は英語だけど」
「クラスは?」
「B」
「じゃあ一緒に授業は受けられないなぁ。俺、Cだから!」
「うん、分かった」
「じゃあ、また後で!」
「はい」

 どうしても素っ気ないような返事になってしまう。そして高杉は同じクラスじゃなかったからなのか会話が終わると手早く食堂を出て行った。梨咲も次の英語の授業がある。弁当を片付けて食堂を後にした。
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