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邂逅
梨咲という人間
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大学の中でも少し小さめの講義室の中で英語の授業は行われる。梨咲のクラスも例に漏れずそれに該当した。小さめの講義室ながら特に席順は決まっておらず、毎回自由席で学生が好きな席に座る。
20人ほどの少人数で行われる授業だが、各々が席に対してはこだわりは無いらしい。梨咲は今回後ろの壁側に座った。高杉のことが気になっていて、考える時間が欲しかった。
「結局何がしたかったのかな」
高杉は、明るく溌剌とした印象を受けるがコミュニケーション能力がずば抜けて高いということは無さそうだった。梨咲に話しかけて来た時の敬語がその証拠だった。英語の授業はぼんやりと説明を受け流すように聞きながら適当にやり過す。授業が終わるチャイムがなって、学生がぞろぞろと講義室から出る。梨咲もその流れに乗って講義室を出た。ちょうど扉を出て左の壁に高杉が凭れていた。待ち伏せをされていたということだ。
「お疲れ」
「お疲れ様です」
「どうしたの」
「いや、うーん、あの」
辿々しく話しかけてくる高杉。焦っているからなのか、敬語が抜けていた。しかし、分からないことがある。高杉の方が授業に行くのは早かったはずで、見送られたわけでもない。梨咲の授業の教室を知っていたとは思えなかった。ということは調べたということだろう。そこまでして会いたい理由には何かがあるのか。
「小宮さんはこのあとなんかあるの?」
「それ、さっきも聞いたんだけど。敬語抜けてるけど大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫」
「あぁ、そう。次は空いてるよ。図書館にでも行こうか悩んでた」
「そっか」
「で、要件は何?」
「連絡先が欲しいなって」
「あぁ、うん。別にそれは構わないけど」
「ありがとう!」
敬語が抜けた理由がいまいち分からない。講義室を出てすぐの所で立ち話をしながら連絡先の交換をした。大学生になってから作った大手のメールアドレスで、まだまだ使いこなしてるとはいえない。2年ほど前にリリースされたアプリのアカウントもあるけれど、まだ教える気にはなれなかった。そんなことをしている間に休み時間は足早に過ぎていき、そろそろ4限が始まろうかというところで、高杉は走り出した。
「急にごめんね!俺はこのあと4限あるから!またね!」
「あ、うん」
そんなにゆっくり話す気が無かったのかもしれない。連絡先が聞ければ万々歳だったのか。それとも、もっと深いところまで話すつもりがあったのかもさっぱり分からない。梨咲としては悪い気持ちにはならなかったので気にしないことにした。高杉のことが少しだけ気になったが、大学の中にある図書館へと向かう。
15時を過ぎた大学の構内は、梨咲が大学にいる時間帯の中で、一番活気がある時間だった。そんな構内を10分ほど歩けば図書館に着く。盗難防止用のセキュリティのゲートを抜けて2階への階段を登ればそこに広がるのは専門書のエリアであった。一歩間違えれば5分は迷う迷宮のような広さをしている。適当な席に着いたところで、スマートフォンが振動した。
「梨咲は教職取ってないんだっけ?」
「うん、取ってないよ」
「そっかー」
「そっちは取ってるんだっけ」
「まぁ、一応ね。次がそれだから、梨咲取ってたらなーって思って」
「あー、なるほど」
「そういうこと!じゃあ、頑張ってくる!」
「頑張って」
大学で作った数少ない友人の一人から連絡が来ていた。どうやら4限は教職課程があるらしい。高杉が受ける4限の授業もそれだろうか。普段の会話には興味がなくても、高杉の動きには気になってしまう。ぼんやりと考えながらそのままの流れでスマートフォンを操作していた。
図書館には通い詰めているというほどの頻度で行くわけではなかった。たまたま暇潰しで入った図書館が思いのほか居心地が良く、何かに集中したり、休憩するのに最適だった。大学が始まって一週間。特に高校と変化のない生活が、高杉が話しかけてきたことで少しだけ変わる気がした。
20人ほどの少人数で行われる授業だが、各々が席に対してはこだわりは無いらしい。梨咲は今回後ろの壁側に座った。高杉のことが気になっていて、考える時間が欲しかった。
「結局何がしたかったのかな」
高杉は、明るく溌剌とした印象を受けるがコミュニケーション能力がずば抜けて高いということは無さそうだった。梨咲に話しかけて来た時の敬語がその証拠だった。英語の授業はぼんやりと説明を受け流すように聞きながら適当にやり過す。授業が終わるチャイムがなって、学生がぞろぞろと講義室から出る。梨咲もその流れに乗って講義室を出た。ちょうど扉を出て左の壁に高杉が凭れていた。待ち伏せをされていたということだ。
「お疲れ」
「お疲れ様です」
「どうしたの」
「いや、うーん、あの」
辿々しく話しかけてくる高杉。焦っているからなのか、敬語が抜けていた。しかし、分からないことがある。高杉の方が授業に行くのは早かったはずで、見送られたわけでもない。梨咲の授業の教室を知っていたとは思えなかった。ということは調べたということだろう。そこまでして会いたい理由には何かがあるのか。
「小宮さんはこのあとなんかあるの?」
「それ、さっきも聞いたんだけど。敬語抜けてるけど大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫」
「あぁ、そう。次は空いてるよ。図書館にでも行こうか悩んでた」
「そっか」
「で、要件は何?」
「連絡先が欲しいなって」
「あぁ、うん。別にそれは構わないけど」
「ありがとう!」
敬語が抜けた理由がいまいち分からない。講義室を出てすぐの所で立ち話をしながら連絡先の交換をした。大学生になってから作った大手のメールアドレスで、まだまだ使いこなしてるとはいえない。2年ほど前にリリースされたアプリのアカウントもあるけれど、まだ教える気にはなれなかった。そんなことをしている間に休み時間は足早に過ぎていき、そろそろ4限が始まろうかというところで、高杉は走り出した。
「急にごめんね!俺はこのあと4限あるから!またね!」
「あ、うん」
そんなにゆっくり話す気が無かったのかもしれない。連絡先が聞ければ万々歳だったのか。それとも、もっと深いところまで話すつもりがあったのかもさっぱり分からない。梨咲としては悪い気持ちにはならなかったので気にしないことにした。高杉のことが少しだけ気になったが、大学の中にある図書館へと向かう。
15時を過ぎた大学の構内は、梨咲が大学にいる時間帯の中で、一番活気がある時間だった。そんな構内を10分ほど歩けば図書館に着く。盗難防止用のセキュリティのゲートを抜けて2階への階段を登ればそこに広がるのは専門書のエリアであった。一歩間違えれば5分は迷う迷宮のような広さをしている。適当な席に着いたところで、スマートフォンが振動した。
「梨咲は教職取ってないんだっけ?」
「うん、取ってないよ」
「そっかー」
「そっちは取ってるんだっけ」
「まぁ、一応ね。次がそれだから、梨咲取ってたらなーって思って」
「あー、なるほど」
「そういうこと!じゃあ、頑張ってくる!」
「頑張って」
大学で作った数少ない友人の一人から連絡が来ていた。どうやら4限は教職課程があるらしい。高杉が受ける4限の授業もそれだろうか。普段の会話には興味がなくても、高杉の動きには気になってしまう。ぼんやりと考えながらそのままの流れでスマートフォンを操作していた。
図書館には通い詰めているというほどの頻度で行くわけではなかった。たまたま暇潰しで入った図書館が思いのほか居心地が良く、何かに集中したり、休憩するのに最適だった。大学が始まって一週間。特に高校と変化のない生活が、高杉が話しかけてきたことで少しだけ変わる気がした。
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