世界で一番遠い場所 Rev.1

ぽよ

文字の大きさ
36 / 40

一歩先へ

しおりを挟む

 仕事から帰宅途中、最寄駅から家まで帰る途中で梨咲は考えていた。高杉がもう帰ってきているかは分からないが、今日は話をする。最近の高杉について。そして、二人のこれからについて。考え事をしている時は時が経つのが早い。それは歩いていても同じだった。特に風景を見ることもなくスマートフォンを見ながら歩けば目の前に家の扉があった。
 同棲を始めた時に作った合鍵でロックを解除して部屋に入る。まだ高杉は帰ってきていなかった。帰宅して荷物を置いてから手洗いうがい。冬も差し迫ってきて風邪が少しずつながら流行り始めている。予防は怠らないのが吉だ。それも終わって冷蔵庫の中に冷やしてあるデザートを食べている時に高杉が帰ってきた。

「おかえり」
「ただいまー。疲れたー」
「達也お疲れ様」
「梨咲もお疲れ様」
「うん、ありがとう。今週も大変だった」
「本当だよね」

 いつしか私たちは下の名前で呼び合うようになっていた。ずっと苗字で呼んでいた大学生の頃が懐かしいほどだ。気がつけば無意識に名前で呼ぶようになり、はっと自覚した時には違和感を覚えた。しかし、それもまた関係性を含めた進歩の一つだと言えるはずだと梨咲は感じていた。二人でゆっくりと座って休憩すること10分。夕食を作る段階になる。
 今日の夕食はチャーハンだった。二人で具材を切って炒めて作る。二人とも料理の腕はかなり上がってきており、どっちが炒めても中華料理屋のようなチャーハンが出来上がっていた。デートの時に買った中華料理屋にありそうな皿に盛り付ける。そして食卓に持っていって二人で食べる。料理を作っているときは真剣な顔をする高杉も、食べる時になると笑顔に変わる。
 味わいながらチャーハンを二人とも食べ終えて、食器を流し台に出してから一息つく。10分ほど二人ともスマートフォンを操作する時間があってから、梨咲は高杉に聞いてみた。

「最近、疲れてる?」
「え?うん、まぁ」
「そっか」
「どうしたの」
「最近、達也の返事が生返事だったりすることがあるなぁって」
「あー、ごめん。頑張って直すようにはする」
「うん、ありがとう」

 なんとなく気まずい空気が流れる予感がしたが、そんなことはなくいつも通りの日常が流れていく。眠そうな高杉と話をしながら寝る時間までの幸せを享受する。二人の関係性が今後どうなるかなんて誰にも分からない。けれど、幸せになれるのなら、それが一番であることは梨咲も分かっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?

akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。 今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。 家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。 だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?

一条さん結婚したんですか⁉︎

あさとよる
恋愛
みんなの憧れハイスペックエリートサラリーマン『一条 美郷(※超イケメン)』が、結婚してしまった⁉︎ 嫁ラブの旦那様と毒舌地味嫁(花ちゃん)....とっ!その他大勢でお送りしますっ♡ ((残念なイケメンの一途過ぎる溺愛♡))のはじまりはじまり〜 ⭐︎本編は完結しております⭐︎ ⭐︎番外編更新中⭐︎

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁

瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。 彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。

処理中です...