短編集

ぽよ

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「出掛けるか」

 今日は土曜日。俗にいう日勤職場の俺は、土日が休みだ。この休みのうちにできる趣味はできるだけこなす。音楽ゲームをやったり、女装したりする。もちろん平日の家事じゃこなしきれないようなこともやる。音がうるさい掃除機をかけたり、朝のうちに洗濯機を回して外干しにしたりする。朝8時に起きて、ゴロゴロしながら時間を過ごす。体が起きてきたタイミングで歯を磨き、出掛ける準備をする。今日は音ゲーをする予定だが、その前に買い物だ。今日は最近ハマっているキャラクターのグッズを買いに行く。電車に乗って30分ほどだ。いつもより遠くの街に行くことになる。当然外の景色も違うものになる。見慣れない景色を見ながら揺られていてしばらくたった頃、違和感に気づく。

「あれ、これ乗り過ごしたんじゃないか?」

 思った通りだった。中央快速に乗った後乗り換えなかったが故の通過だった。思わぬ伏兵に焦りを感じながらも、扉が開くのを待つ。扉が開いた瞬間飛び出し、反対側の電車に乗る。次に乗ったのは快速だった。乗ってから二駅で目的の駅に着く。

「着いた!」

 とりあえず目的地につけてひと段落。前しか見ていなかったが、気がつけば見逃していた。後ろに下がる方向に行かなければならなくなった。まぁいいか、と歩を進めて行く。10分ほど歩いたところに店があり、目的の商品を見つけることができた。ほっと胸を撫で下ろしながら、商品を取ってレジへと運ぶ。この商品を見つけるまで長かった。地元の田舎で探し、東京でもこれで5軒目の店だった。レジでの買い物が終わり、店を出る。そのあと適当に街を歩き回る。実は数回しか来たことがない。しかも、デートでしか来たことがない。改めて歩いてみれば、駅前はかなり栄えているほうだろう。娯楽施設も種類が豊富だ。そんなデートできた街を歩きながら、ふと思い出す。

「もう、ここにはいない」

 2年が経過していた。恋人と別れてから。ここに来たのはデートで一度。そして、オフ会とデートの融合で、一度。街を歩いたり音楽ゲームをしたり。少ないながら、濃い思い出のある街だ。のんびり歩きながら、頭は高速で回転する。あの人は、こんなご飯が好きだったなぁ。この店には置いてあるのかなぁ。このお酒が好きだったなぁ。買っていけば、会えたりしないのかなぁ。思考はほとんどストーカーのそれと変わらないレベルになってしまっていた。どうしても、その人が忘れられない。カラオケも音楽ゲームもセンスが光って上手かった。その技術を、今はもう聞けない。途端に気分が落ち込んでしまう。しかし、現実を見て歩いていかなければならないのだ。後ろばかりを向いていられない。前を向いて行く。少しずつ、少しずつ。今はまだ、完全には前を向けていないけれど、いつかきっと過去のことだって言えるようになれるまで。少しずつ、少しずつ。
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