短編集

ぽよ

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「えー彼氏と別れたんだ」
「うん」
「そんな話あったっけ」
「いや、話したことはなかったけど」
「そんな雰囲気だったんだ。わたし知らなかった」
「まぁね」

 元彼と別れて1週間。今日は友人の家で夕食を食べていた。今回の別れ話を聞いてもらうためだった。きのこクリームパスタを食べながら友人に語る。普段はそんなに語るタイプではないのだが、今日は止まらなかった。

「なんとなく、元彼がわたしのことを好きじゃなくなったなっていうのは察してはいたんだよ」
「あ、そうなんだ」
「でも、見て見ぬ振りしてきたの。デートはするし、何か変なことをしてくるわけでもないし。ただ、そこには、前みたいな好きっていう気持ちがないなって分かった」
「ほうほう」
「それをずっと見て見ぬふりをしてきたんだけどさ、もうダメだった」
「そっか。辛かったんだね」
「自覚はなかったけど、多分」

 だらだらと話しながら、振り返る。最初は落ち込んでいたけれど、立ち直るのは意外と早かった。こうして友人に話ができるくらいだから、いまはもうそんなに落ち込んでいない。目の前の友人は彼氏がいたことがない。スタイルが良くて顔もいい。それでいて、性格も悪くない。それなのに本人は恋人がいらないの一点張りで作ってこなかった。それもまた、一つの人生なのかもしれないと思う。しかし、今の本題はそれではなかった。

「私、今回のことで分かったことがあるんだ」
「何、急にどうしたの」
「失恋ってさ、振られた側がよくいう言葉だと思ってたんだけどさ」
「うん」
「今回のパターンはさ、私が気持ち的にはもう振られてたんだよ。それに終止符を打ったのが私だったから私が振ったような感じにはなってるけど、本当の意味で振られてるのは私なんだ」
「なるほど」

 特に深い同意もなくただ理解を示してくれる友人。反応は淡白だが、今はそれがありがたかった。なおも私の語りは止まらない。

「恋って難しいね」
「恋は難しいだろうな。私はしたことないけど」
「なんであんたって恋人作らないの?」
「めんどくさいでしょ」
「え、それだけ?」
「うん。それだけ。いいんだよ。今時結婚だけが幸せへの近道じゃない」
「それはそうだけれども」
「まぁ、私も結婚するならそろそろ考えなきゃいけないけど、結婚する気もないし」
「あ、そうなんだ。そこまで振り切ってたんだ」
「うん。まぁ生きていけるよ。多分」
「そんな楽観的な」
「そういう人生もある」
「そっか」
「そういうあんたはまた恋人探すの?」
「うーん。多分ね。今はしばらくいいかと思ってるけど」
「たまにはゆっくりしたら?焦って彼氏探してもいいことないよ」
「なるほど。確かに」
「今日も泊まって、ゆっくりしていきな。たまにはそういうのも必要だよ」
「うん。そうする」


 私は恋人がいる人生を歩んできた。だから、この先もいつかは恋人を探す人生がまた始まると思っている。でも、一回ここでゆっくり周りを見渡してみるのもいいかもしれない。他の人がどうやって生きているのか。幸せになるとはどういうことなのか。もう一度、考えてみてもいいかもしれない。今日は友人の家に泊まる。明日は土曜日。仕事は休み。いつの間にか食べ終わっていたきのこクリームパスタの皿を流し台へと持っていき、もう一度座る。絨毯が敷かれたフローリングに座る。そんな時、友人がトランプを持ってきた。

「じゃあ今日はトランプやろう!久しぶりに!」
「いいよ!本当に久しぶりだね」

 友人が持ってきたトランプで遊ぶ。今日はきっと夜更かしだ。何も考えずに遊べるなら、今はそれが1番いい。それも分かってくれている友人で、それも嬉しかった。今はきっと、立ち止まっていい。また歩き始めることができるようになるまで、ゆっくりしよう。この友人に話して良かった。2人でトランプを混ぜながら、それを実感していた。
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