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人
対峙
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「遅すぎるんじゃないか」
目の前に立つ男からそう告げられる。午後10時。心地よい秋風と呼ぶには少々強すぎる風が、2人を煽っていた。
「俺はいつだってあなたを見ていた。それでも振り向かなかったのに今更そちらを向くはずがないだろう」
「済まない」
「今更謝らなくていい。俺はあなたに怒りの感情なんて抱いていないのだから」
目の前に立つのは、世界最悪の犯罪者。そんな彼は、組織の長ではない。一匹狼でありながら、数々の犯罪を犯してきた。骨董品の窃盗から要人の殺害まで、ありとあらゆる重罪を犯してきた。そんな男もまた、ある男の息子だった。
「俺を捕まえるのか」
世界警察長官。これまで数々の難事件を解決し、ここまで上り詰めてきた。そんな男の息子が、世界最悪の犯罪者。世間にはまだ露見していない事実。しかし、いずれは全世界に報道される日が来る。その日が来た時、世界はどうなるのだろう。まるで他人事のように思考していた。
「あなたが仕事で忙しいことは知っていた。それでも俺はあなたに見てほしかった。けれど、それは叶わなかった。だから、俺は今この姿であなたの前にいる」
「あぁ、そうだな」
「あなたは俺をどうしたいんだ」
「俺は、お前をそのままの姿で見届けることが責務だと思っている」
「そうか。それなら俺がここで死ぬことも止めないということだな」
「あぁ、そうだな」
息子に向き合いもせず仕事だけをこなしてきた。今更何かを語ったところで何一つ届きはしない。そんな俺にできるのは、見届けることだけだ。
「ま、今死ぬことはない。どうせ人間なんてどうせいつかは死ぬんだ。やりたいことはやりきってから死ぬのが道理だろう」
「そうだな」
「あなたが見逃してくれるというのなら、俺にはまだやりたいことがある」
息子はそう言うと、俺の前を通り過ぎて、去っていく。ここはビルの30階を優に超える超高層ビルの屋上。颯爽と飛び降りると、パラグライダーで飛び去っていった。
息子とまた対峙する瞬間が、今日から死ぬまでにあと一回はあるだろう。その時に何を語ることができるのか。虚空を見上げながら考えた。
目の前に立つ男からそう告げられる。午後10時。心地よい秋風と呼ぶには少々強すぎる風が、2人を煽っていた。
「俺はいつだってあなたを見ていた。それでも振り向かなかったのに今更そちらを向くはずがないだろう」
「済まない」
「今更謝らなくていい。俺はあなたに怒りの感情なんて抱いていないのだから」
目の前に立つのは、世界最悪の犯罪者。そんな彼は、組織の長ではない。一匹狼でありながら、数々の犯罪を犯してきた。骨董品の窃盗から要人の殺害まで、ありとあらゆる重罪を犯してきた。そんな男もまた、ある男の息子だった。
「俺を捕まえるのか」
世界警察長官。これまで数々の難事件を解決し、ここまで上り詰めてきた。そんな男の息子が、世界最悪の犯罪者。世間にはまだ露見していない事実。しかし、いずれは全世界に報道される日が来る。その日が来た時、世界はどうなるのだろう。まるで他人事のように思考していた。
「あなたが仕事で忙しいことは知っていた。それでも俺はあなたに見てほしかった。けれど、それは叶わなかった。だから、俺は今この姿であなたの前にいる」
「あぁ、そうだな」
「あなたは俺をどうしたいんだ」
「俺は、お前をそのままの姿で見届けることが責務だと思っている」
「そうか。それなら俺がここで死ぬことも止めないということだな」
「あぁ、そうだな」
息子に向き合いもせず仕事だけをこなしてきた。今更何かを語ったところで何一つ届きはしない。そんな俺にできるのは、見届けることだけだ。
「ま、今死ぬことはない。どうせ人間なんてどうせいつかは死ぬんだ。やりたいことはやりきってから死ぬのが道理だろう」
「そうだな」
「あなたが見逃してくれるというのなら、俺にはまだやりたいことがある」
息子はそう言うと、俺の前を通り過ぎて、去っていく。ここはビルの30階を優に超える超高層ビルの屋上。颯爽と飛び降りると、パラグライダーで飛び去っていった。
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