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聖女召喚
聖女無双。(ぱーとふぁいぶ)
しおりを挟む「キレたわ。」
少女を抱きしめ、アイシアは呟いた。
「久々に、キレたわ。」
優しく少女達を抱きしめ、回復魔法を施す。いつの間にかアイシアの腕の中には、離れていたもう一人の少女も抱きしめられていた。
アイシアは軽く転移魔法を使ったのだ。
「帰りたい、帰りたいよ…… 」
「お母さん、お父さん…… 」
アイシアの腕の中で泣きながら呟く少女二人。
「分かったわ。もう少し此処で待っていてね。」
アイシアの優しい声。
無理やり知らない異世界に召喚され、拘束され蔑まれ使い潰されていた少女達の心に優しくアイシアの声が染み込む。
この世界に来て、温かさと安らぎを二人の少女は初めて感じていた。
「少し待っててね。」
少女二人はその場で、眠るように目を閉じた。
アイシアは二人を放すと、すくっと立ち上がった。
可愛らしかったアイシアのその表情は凍てついた氷のように変わっていた、冷たい眼差しをその場にいる者達に向ける。
意識が、ゾッとする。
意識だけではない、体も何故だがゾクッとする。
ピキピキと、床がうっすらと冷気を孕んで凍っている。
アイシアは一歩前に出た。
ピキッと、冷気で1℃下がる。
「き、貴様!! 儂に逆らうのか!! 天罰が下るぞ!! 」
叫ぶ王。
「コレ? 」
アイシアが手を首の拘束具に触れると、ソレは霧のように霧散した。それと同時に、黒髪の少女二人の拘束具も霧散する。
アイシアはもう一歩、前に出る。
「な、何をしている!! 捕まえろ!! 」
王の声に、アイシアの圧力に屈していた騎士達が動き出す。
脅しの為に剣を抜いて、アイシアに向ける。普通の令嬢なら、青ざめ震えその場に崩れ落ちただろう。
だがアイシアは恐れることなく、一歩前に出る。
「ひと~つ、異世界の若者を誘拐する。」
アイシアは囲んでくる騎士達を払うように右手を振るった。
ペキペキと、騎士達の剣と足元から体が凍りつく。
動けなくなる騎士達を見て、驚愕する王と周りの貴族達。
『聖女』ができることは、魔の浄化と回復と結界魔法のはずであった。攻撃魔法が使えるなど聞いたことがない。だからこそ、黒髪の聖女は抗うことなく捕まり搾取され続けていたのだ。
だがアイシアは全魔法を使える、超TUEEEEEE万能聖女であった。
アイシアは凍った騎士の間を縫って、王に歩み寄る。
「な、何をしている!! こ、殺せ!! 殺してしまえ!! 」
王は近くにいる近衛騎士や魔法師に命令をする。アイシアから王を守るように、近衛騎士は立ちはだかった。
「ふた~つ、不埒な拘束・搾取。」
今度は左手を横に振るった。
近衛騎士達はアイシアの風魔法で木の葉のように壁まで弾き飛ぶ。
「みっつ、 」
魔法師の放つ魔法を、アイシアは『聖女』お得意の結界魔法で防御しついでにカウンターで魔法師へとお返しする。
魔法師は己が放った魔法に撃たれ、崩れ落ちる。
今回はアイシアはマジギレの為、回復は死なない程度だ。
「醜い異世界の王を、 」
アイシアは王座に腰を抜かす王の肩を掴み、上から見下ろした。
「退治て見せよう、聖女アイシア。」
ペキペキと王の体が、顔を残してゆっくりと凍りつく。
ダン!! と、アイシアは床に足を踏みつける。
謁見の間が瞬時に凍りつく。
逃げ出そうとする者達を謁見の間に閉じ込めたのであった。
一気に謁見の間の温度が、下がる。
恐怖と寒さにその場の者達は体を震わせた。
「わ、悪かった!! 儂が悪かった、だから命ばかりは!! 」
顔以外、体が凍りつき身動きができない王がアイシアに許しを請う。
「ああん? あたしは聖女だよ、人の命は取らない。」
王達貴族は、アイシアの言葉にほっとする。
「あたしは優しい聖女だよ。あんたらの願いを叶えてあげるわ。」
優しくアイシアは微笑むが、目は笑ってない。
「黒が、嫌いなんだろ? 」
「はぁ? 」
アイシアの言葉は、風魔法によってその場にいる者全ての耳に届いている。
アイシア言葉の意味が分からない王とその場の者達。
「いでませ、炎。」
王の肩から手を放すとその右の手に手のひらサイズの炎が丸く渦巻いている。その炎が辺りを照らし、熱で凍りついている謁見の間や者達が溶けていく。
焼き殺されるのかと、その場の者達や王はその熱さに体と意識が遠のいていく。
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