【完結】氷の王、クラウス。

❄️冬は つとめて

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    暗殺。

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城の敷地内の北の小高い森の中に、王家の墓所。小さな教会がある。その中の祭壇の前でクラウスは膝を折り祈っていた。

床にはおびただしい血、転がる死体。教会の後の方では目を閉じて黙祷をする五人の騎士。

明日アンジェリカの命日のため前日から、籠もるようクラウスは王家の墓所にいた。そこに数十人の刺客がクラウスを襲った。クラウスが祈る中、五人の騎士は祈りを邪魔することもなく刺客を葬りさった。

此処は王家の墓所。王家の者の許可がない限り入ることは許されない。墓荒らしを避けるために、強固な壁に囲われ飛び移れないよう数メートルの距離を置いて木が植えられていた。入り口はひとつ、兵士が立っていて入ることは適わない。

クラウスは祈りを止め、立ち上がった。血と死体が転がる中を歩き、教会の外に出る。その後を五人の騎士が続く。
外には大勢の騎士達が控えていた。大地には、血と死体が転がっている。襲撃を聞きつけた騎士達が、国王を護るために駆けつけたのだ。

「陛下。このたびの刺客は、貴族派の生き残りと教会の者が。」
「そうか。」
王家の影の者が、控えながら報告する。少し口籠もり、続ける。
「王妃とアルファ様も、絡んでいる模様です。」
「そうか。」
クラウスは、目を閉じた。

「哀れなる弟よ。もう少し上手くやれば、殺さずにすんだものを。」
此処まで大袈裟になってしまっては、罪に問わない訳にはいかない。国王暗殺、其れは死罪でしかない。

クラウスは目を開けた。
「国王暗殺を組し者を直ちに捕らえろ!! 抵抗するなら殺しても構わない。」
「「「はっ。」」」
「王妃と、アルファは生かして捕らえろ。彼等は、見せしめに使う。」
「「「はっ。」」」
国王の命令に、騎士達は動く。

「城へ戻る。」
「「「はっ。」」」
後に使える騎士が、返事をする。
クラウスは感情を見せぬまま、馬を走らせた。



「暗殺に失敗した。」
アルファは、ほっとした。皆に担ぎ上げられたがやはり兄を殺すのは躊躇われた。力を無くして、ソファに座り込む。
「アルファ様、逃げましょう。」
キャロットが、アルファにしがみ付いた。
「もういいよ、僕には兄上は殺せない。」
「何を言っているの? 彼が死ななければ此れからも多くの犠牲者が出るのよ。」
キャロットはヒステリックに叫んだ。
「貴方が止めなくては、誰がクラウス様を止めるの!? 」
(冗談じゃないわ。このままじゃ私は殺される。)

「御願い、アルファ様。一緒に逃げて。」
(貴方がいないと、誰が私を護ってくれるの。)
彼女はただの王妃。名ばかりで有り、身籠もってもいない。王家の繋がりなど何も無い者。地位も護る意味もない者。誰も彼女を護ってくれる筈はない。アルファが王家の血を引く者がいることで、貴族派の者や教会の者がついでに彼女を護っているような者だ。
「御願い。アルファ様。」

既に離宮は騎士達に囲まれて、逃げる場は無い。扉を閉じ、貴族派の者が対応しているが騎士達が此処に来るまで時間の問題だ。
「暖炉の後に隠し通路がある。そこから、姉上はお逃げ下さい。」
子供の頃、兄と冒険した隠し通路。
「僕が此処に居れば、其方に目が向かないでしょう。」
アルファは、疲れたように笑った。
キャロットは暖炉に目を向ける。

「そうよ、火を点けましょう。その隙に、逃げましょうアルファ様。」
キャロットは、暖炉の火の付いた薪を金具で掴み部屋へと巻いた。
途端に火が燃え上がる。
「さあ、アルファ様。今の内に。」
(火に巻かれて死んだと思わせれば……。)
「クラウス様を止める為に、アルファ様は生き残らなくては。」
キャロットは手を取って、アルファを引っ張る。
「クラウス様の為にも、御願い。」
(貴方がいないと、誰も私を匿ってはくれないのよ。)
「兄上の為に……。」
兄の為と聞き、アルファはふらふらっと立ち上がった。
逃げる時に、キャロットはランプの油を巻いた。離宮は勢いよく燃え上がった。




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