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許されない世界。
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「其れでもわたくしは、二度ほど王都を逃げ出そうとしましたわ。あの死は偶然ではないかと。でも…… 」
『僕の名はネピア。エリエール、エリスと呼んでもいいかい? 』
「同じでした。」
背を向け潮風か、虚しさに震えるエリエールの肩にそっと上着がかけられる。
「三度ほど、自ら死を選んだこともあります。」
エリエールは上着ごと体を抱きしめた。
「結果は…… 」
『僕の名はネピア。エリエール、エリスと呼んでもいいかい? 』
三度の逃亡も、三度の自死もエリエールはネピア殿下との出会いの10歳に戻ってしまう。
エリエールは八回の死を体験し、巻き戻っていた。そして最後に思い出すのは悲しそうなネピア殿下の声。
「きっと、神はエルモア譲を虐めたわたくしをお許しになっていないのです。」
エリエールは諦めたように目を閉じた。
「エルモア譲に許しを得るまで、死を受け入れてはくださらないのです。」
『僕の名はネピア。エリエール、エリスと呼んでもいいかい? 』
『俺もエリスと、呼んでいいな。俺はカルタスだ、エリス。』
『駄目だ!! エリスと呼んでいいのは僕だけだ!! 』
『はいはい、分かったよ。ガキのクセに、いっちょうまいに嫉妬か? 』
『一つしか、違わないだろ!! 』
優しく微笑む10歳のネピアとカルタス。エリエールは九度目の人生を受け入れた。
学園に入るまでは二人は限りなくエリエールに優しい。学園に入ると、エリエールに向けられた瞳はあのエルモア男爵令嬢にそそがれる。
(一度目、二度目の人生のように二人はきっと変わってしまう。)
一度目のネピアはエルモアに興味をしめし、二度目のカルタスはエルモアに愛情を示した。
(いえ、違う。変わってしまうのは、わたくしも……… )
何故かエリエールは、学園でエルモアを見ると嫉妬に駆られて虐めてしまう。一度目の王妃教育の為に学園を出ると、憑き物が取れるように嫉妬の心は収まる。それは、ネピアとカルタスも同じであった。
学園内の三人は、まるで操られるように一人の令嬢へ心が向かってしまう。
それは興味、愛情、憎悪。
学園外では、不思議なほどにエルモア令嬢への心が動かない。
興味も、愛情も、憎悪も。
まるで恐ろしいほど三人はエルモアに関心が持てないでいた。まるで絵空事のように感じてしまう。
学園内での絵空事は何時しか学園外でも真実となり、三人を苦しめた。
ネピアはエリエールとの婚約破棄に。
カルタスはエルモアとの婚約に。
エリエールは、悪役令嬢として斬首刑に。
(きっと今回もそうなるのね。)
エリエールは諦めていた。
(今は何回目かしら? )
エリエールは首を傾げて、無機質に笑う。三、四、五の人生は運命から逃れようと10歳で衰弱死をした。
六、七、八の人生は子供ながら自死をした。三度、屋敷の四階のテラスから飛び降り、安らかな死を願った。
其の願いは神には届かなかった。
『僕の名はネピア。エリエール、エリスと呼んでもいいかい? 』
ネピア殿下の天使のような、笑顔。
(神はわたくしを許してはくださらない。エルモア譲に許しを請うて、許しを得るまで? )
しかし其れは無理だとエリエールは確信していた。学園に入ると、エルモアを目にすると、体が、心が、勝手に動く。
「そう、九度目の人生。学園で、わたくしはエルモア譲を虐めてしまった。」
エリエールは静かに話し相手に目を向けて九度目の人生を放し始めた。
「九度目、九度目は…… 」
その目は虚ろで、目の前の人物を映してはいなかった。
『僕の名はネピア。エリエール、エリスと呼んでもいいかい? 』
「同じでした。」
背を向け潮風か、虚しさに震えるエリエールの肩にそっと上着がかけられる。
「三度ほど、自ら死を選んだこともあります。」
エリエールは上着ごと体を抱きしめた。
「結果は…… 」
『僕の名はネピア。エリエール、エリスと呼んでもいいかい? 』
三度の逃亡も、三度の自死もエリエールはネピア殿下との出会いの10歳に戻ってしまう。
エリエールは八回の死を体験し、巻き戻っていた。そして最後に思い出すのは悲しそうなネピア殿下の声。
「きっと、神はエルモア譲を虐めたわたくしをお許しになっていないのです。」
エリエールは諦めたように目を閉じた。
「エルモア譲に許しを得るまで、死を受け入れてはくださらないのです。」
『僕の名はネピア。エリエール、エリスと呼んでもいいかい? 』
『俺もエリスと、呼んでいいな。俺はカルタスだ、エリス。』
『駄目だ!! エリスと呼んでいいのは僕だけだ!! 』
『はいはい、分かったよ。ガキのクセに、いっちょうまいに嫉妬か? 』
『一つしか、違わないだろ!! 』
優しく微笑む10歳のネピアとカルタス。エリエールは九度目の人生を受け入れた。
学園に入るまでは二人は限りなくエリエールに優しい。学園に入ると、エリエールに向けられた瞳はあのエルモア男爵令嬢にそそがれる。
(一度目、二度目の人生のように二人はきっと変わってしまう。)
一度目のネピアはエルモアに興味をしめし、二度目のカルタスはエルモアに愛情を示した。
(いえ、違う。変わってしまうのは、わたくしも……… )
何故かエリエールは、学園でエルモアを見ると嫉妬に駆られて虐めてしまう。一度目の王妃教育の為に学園を出ると、憑き物が取れるように嫉妬の心は収まる。それは、ネピアとカルタスも同じであった。
学園内の三人は、まるで操られるように一人の令嬢へ心が向かってしまう。
それは興味、愛情、憎悪。
学園外では、不思議なほどにエルモア令嬢への心が動かない。
興味も、愛情も、憎悪も。
まるで恐ろしいほど三人はエルモアに関心が持てないでいた。まるで絵空事のように感じてしまう。
学園内での絵空事は何時しか学園外でも真実となり、三人を苦しめた。
ネピアはエリエールとの婚約破棄に。
カルタスはエルモアとの婚約に。
エリエールは、悪役令嬢として斬首刑に。
(きっと今回もそうなるのね。)
エリエールは諦めていた。
(今は何回目かしら? )
エリエールは首を傾げて、無機質に笑う。三、四、五の人生は運命から逃れようと10歳で衰弱死をした。
六、七、八の人生は子供ながら自死をした。三度、屋敷の四階のテラスから飛び降り、安らかな死を願った。
其の願いは神には届かなかった。
『僕の名はネピア。エリエール、エリスと呼んでもいいかい? 』
ネピア殿下の天使のような、笑顔。
(神はわたくしを許してはくださらない。エルモア譲に許しを請うて、許しを得るまで? )
しかし其れは無理だとエリエールは確信していた。学園に入ると、エルモアを目にすると、体が、心が、勝手に動く。
「そう、九度目の人生。学園で、わたくしはエルモア譲を虐めてしまった。」
エリエールは静かに話し相手に目を向けて九度目の人生を放し始めた。
「九度目、九度目は…… 」
その目は虚ろで、目の前の人物を映してはいなかった。
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