ループを繰り返す悪役令嬢。

❄️冬は つとめて

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許されない世界。

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「其れでもわたくしは、二度ほど王都を逃げ出そうとしましたわ。あの死は偶然ではないかと。でも…… 」

『僕の名はネピア。エリエール、エリスと呼んでもいいかい? 』

「同じでした。」

背を向け潮風か、虚しさに震えるエリエールの肩にそっと上着がかけられる。

「三度ほど、自ら死を選んだこともあります。」  

エリエールは上着ごと体を抱きしめた。

「結果は…… 」

『僕の名はネピア。エリエール、エリスと呼んでもいいかい? 』

三度の逃亡も、三度の自死もエリエールはネピア殿下との出会いの10歳に戻ってしまう。

エリエールは八回の死を体験し、巻き戻っていた。そして最後に思い出すのは悲しそうなネピア殿下の声。

「きっと、神はエルモア譲を虐めたわたくしをお許しになっていないのです。」

エリエールは諦めたように目を閉じた。

「エルモア譲に許しを得るまで、死を受け入れてはくださらないのです。」


『僕の名はネピア。エリエール、エリスと呼んでもいいかい? 』
『俺もエリスと、呼んでいいな。俺はカルタスだ、エリス。』
『駄目だ!! エリスと呼んでいいのは僕だけだ!! 』
『はいはい、分かったよ。ガキのクセに、いっちょうまいに嫉妬か? 』
『一つしか、違わないだろ!! 』


優しく微笑む10歳のネピアとカルタス。エリエールは九度目の人生を受け入れた。


学園に入るまでは二人は限りなくエリエールに優しい。学園に入ると、エリエールに向けられた瞳はあのエルモア男爵令嬢にそそがれる。

(一度目、二度目の人生のように二人はきっと変わってしまう。)  

一度目のネピアはエルモアに興味をしめし、二度目のカルタスはエルモアに愛情を示した。

(いえ、違う。変わってしまうのは、わたくしも……… )

何故かエリエールは、学園でエルモアを見ると嫉妬に駆られて虐めてしまう。一度目の王妃教育の為に学園を出ると、憑き物が取れるように嫉妬の心は収まる。それは、ネピアとカルタスも同じであった。

学園内の三人は、まるで操られるように一人の令嬢へ心が向かってしまう。

それは興味、愛情、憎悪。

学園外では、不思議なほどにエルモア令嬢への心が動かない。

興味も、愛情も、憎悪も。

まるで恐ろしいほど三人はエルモアに関心が持てないでいた。まるで絵空事のように感じてしまう。


学園内での絵空事は何時しか学園外でも真実となり、三人を苦しめた。

ネピアはエリエールとの婚約破棄に。

カルタスはエルモアとの婚約に。

エリエールは、悪役令嬢として斬首刑に。

(きっと今回もそうなるのね。)

エリエールは諦めていた。

(今は何回目かしら? )

エリエールは首を傾げて、無機質に笑う。三、四、五の人生は運命から逃れようと10歳で衰弱死をした。

六、七、八の人生は子供ながら自死をした。三度、屋敷の四階のテラスから飛び降り、安らかな死を願った。

其の願いは神には届かなかった。

『僕の名はネピア。エリエール、エリスと呼んでもいいかい? 』 

ネピア殿下の天使のような、笑顔。

(神はわたくしを許してはくださらない。エルモア譲に許しを請うて、許しを得るまで? )

しかし其れは無理だとエリエールは確信していた。学園に入ると、エルモアを目にすると、体が、心が、勝手に動く。

「そう、九度目の人生。学園で、わたくしはエルモア譲を虐めてしまった。」

エリエールは静かに話し相手に目を向けて九度目の人生を放し始めた。

「九度目、九度目は…… 」

その目は虚ろで、目の前の人物を映してはいなかった。










    
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