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幸せのリンネ。
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「そっか、私の祈りは皆の役に立っていたんだね。」
リンネは嬉しそうに笑う。
『役立たず』や『色(魔力)無し』と言われ続けていた自分が影ながらでも皆の役に立っていたと喜んだ。
ついでに綺麗になった鐘に映る自分の瞳を見て喜んだ。
「猫のきゅるるんとした目みたいだ。見て見て。」
黒いきゅるるんとした瞳をリンネル(闇猫)に見せる。
「毛(髪)の色もお揃い。」
もふもふしながら、抱き締める。
(そう言えばアベルが言っていたな、私は母にそっくりだと。)
自分の何処が王妃にそっくりなのかと頭を悩ませた時もあった。醜い自分の何処が王妃とにているのか。
(あの時は、私を慰める為に言ってくれたのだと思ったが。)
リンネはもう一度自分が映る鐘を見る。そこに映っている可愛らしい容姿の自分を見詰める。
「母様は、可愛らしい人だったのだな。」
リンネは嬉しそうに笑う。
余命僅かで、城の外に出られ友達も出来、挙げ句に可愛らしい母にそっくりだと言う姿を見られ。体も軽いし、心も軽かった。
嬉しそうに笑うリンネに、リンネルは苛立った。
『お前は、頭にこないのか? 』
「頭? 」
リンネは首を傾げた。
『腹は立たないのか? こんな所に送られたことに。』
何も無い忘れ去られた旧アンゼラスに送られたことをリンネルは言っていた。ゆらゆらと尻尾が怒りで揺れる。
「腹は、すいたかな? 」
リンネはお腹を押さえた。大きな鐘を拭くという大仕事を終えてお腹を空かしていた。階段を登り鐘まで拭くという大仕事、リンネは此所まで体を動かしたことは無かった。
清々しいお腹の空きぐわいだ。
リンネは鞄をあさり、パンとワインボトルを取り出す。茫然と見ているリンネルにパンを差し出した。
「食べる? 」
『いらん。』
「飲む? 」
リンネはワインボトルを差しだした。
『話を反らすな。』
リンネルは苛つきながら言った。
「えっ? お腹が空いた話だったよね。」
『違う。此所に送り込んだ者達に怒りを覚えないかと聞いたのだ。』
「何故? 」
リンネは分からないと首を傾げた。
「此所に送られたからリンネルに遭えたし、城の外にも出られたし。」
それで何故怒りを覚えるのか、リンネには分からない。
『お前を殺そうとしたのだぞ。』
「でも、人はいつか死ぬし。」
それが寿命であれ、事故であれ亡くなる時は亡くなる。怨みで殺されるのは少し哀しいが、まあそれも致し方ない。これが運命だったのだとリンネは達観する。
「でも、ほら。リンネルに遭えて、私は嬉しい。」
居場所の無かった城の中より、自由の此所の方がリンネには嬉しかった。友達も出来たし、体も軽い。
リンネはリンネルに抱き付いた。
「私の為に怒ってくれるリンネルが大好きだ。」
『………。』
抱き付いてくるリンネに、リンネルは照れ隠しの様に尻尾でぱしぱしと背中を叩いた。
「だから今度は私が、リンネルを自由にしてあげる。」
(此所に閉じ込められているリンネルを自由に。)
「封印でも何でも解いてあげる。」
任せなさいと、リンネは胸を叩いて笑った。リンネルが封印を解けると言うのなら、きっと自分は封印が解くことが出来ると信じる。
(そうしたら私が死んでも、リンネルは独り切りにはならないよね。)
優しくリンネルに微笑んだ。
「でも、その前にお腹が空いたからご飯を食べるね。」
そう言うとぱくんとパンに齧りついた。ワインボトルを開けようとオープナー(ワインのコルクを抜く物)を探すが見つからない。
『ボトルを此方に向けろ。』
溜息交じりにリンネルがリンネに、声をかけた。
「飲むの? でも、開ける物が。」
リンネはボトルを刺しだした。
リンネルは手を差しだして、器用に一本だけ爪を出しコルクに刺して抜いた。
「おおっ!! 」
リンネの目がキラキラと輝く。
「でも、私はあんましワインは好きではないんだがね。渋いから。」
リンネはワインの味が分からない子供舌の持ち主であった。
リンネルは、ぱしっと軽くリンネに猫パンチを食らわせた。
リンネは嬉しそうに笑う。
『役立たず』や『色(魔力)無し』と言われ続けていた自分が影ながらでも皆の役に立っていたと喜んだ。
ついでに綺麗になった鐘に映る自分の瞳を見て喜んだ。
「猫のきゅるるんとした目みたいだ。見て見て。」
黒いきゅるるんとした瞳をリンネル(闇猫)に見せる。
「毛(髪)の色もお揃い。」
もふもふしながら、抱き締める。
(そう言えばアベルが言っていたな、私は母にそっくりだと。)
自分の何処が王妃にそっくりなのかと頭を悩ませた時もあった。醜い自分の何処が王妃とにているのか。
(あの時は、私を慰める為に言ってくれたのだと思ったが。)
リンネはもう一度自分が映る鐘を見る。そこに映っている可愛らしい容姿の自分を見詰める。
「母様は、可愛らしい人だったのだな。」
リンネは嬉しそうに笑う。
余命僅かで、城の外に出られ友達も出来、挙げ句に可愛らしい母にそっくりだと言う姿を見られ。体も軽いし、心も軽かった。
嬉しそうに笑うリンネに、リンネルは苛立った。
『お前は、頭にこないのか? 』
「頭? 」
リンネは首を傾げた。
『腹は立たないのか? こんな所に送られたことに。』
何も無い忘れ去られた旧アンゼラスに送られたことをリンネルは言っていた。ゆらゆらと尻尾が怒りで揺れる。
「腹は、すいたかな? 」
リンネはお腹を押さえた。大きな鐘を拭くという大仕事を終えてお腹を空かしていた。階段を登り鐘まで拭くという大仕事、リンネは此所まで体を動かしたことは無かった。
清々しいお腹の空きぐわいだ。
リンネは鞄をあさり、パンとワインボトルを取り出す。茫然と見ているリンネルにパンを差し出した。
「食べる? 」
『いらん。』
「飲む? 」
リンネはワインボトルを差しだした。
『話を反らすな。』
リンネルは苛つきながら言った。
「えっ? お腹が空いた話だったよね。」
『違う。此所に送り込んだ者達に怒りを覚えないかと聞いたのだ。』
「何故? 」
リンネは分からないと首を傾げた。
「此所に送られたからリンネルに遭えたし、城の外にも出られたし。」
それで何故怒りを覚えるのか、リンネには分からない。
『お前を殺そうとしたのだぞ。』
「でも、人はいつか死ぬし。」
それが寿命であれ、事故であれ亡くなる時は亡くなる。怨みで殺されるのは少し哀しいが、まあそれも致し方ない。これが運命だったのだとリンネは達観する。
「でも、ほら。リンネルに遭えて、私は嬉しい。」
居場所の無かった城の中より、自由の此所の方がリンネには嬉しかった。友達も出来たし、体も軽い。
リンネはリンネルに抱き付いた。
「私の為に怒ってくれるリンネルが大好きだ。」
『………。』
抱き付いてくるリンネに、リンネルは照れ隠しの様に尻尾でぱしぱしと背中を叩いた。
「だから今度は私が、リンネルを自由にしてあげる。」
(此所に閉じ込められているリンネルを自由に。)
「封印でも何でも解いてあげる。」
任せなさいと、リンネは胸を叩いて笑った。リンネルが封印を解けると言うのなら、きっと自分は封印が解くことが出来ると信じる。
(そうしたら私が死んでも、リンネルは独り切りにはならないよね。)
優しくリンネルに微笑んだ。
「でも、その前にお腹が空いたからご飯を食べるね。」
そう言うとぱくんとパンに齧りついた。ワインボトルを開けようとオープナー(ワインのコルクを抜く物)を探すが見つからない。
『ボトルを此方に向けろ。』
溜息交じりにリンネルがリンネに、声をかけた。
「飲むの? でも、開ける物が。」
リンネはボトルを刺しだした。
リンネルは手を差しだして、器用に一本だけ爪を出しコルクに刺して抜いた。
「おおっ!! 」
リンネの目がキラキラと輝く。
「でも、私はあんましワインは好きではないんだがね。渋いから。」
リンネはワインの味が分からない子供舌の持ち主であった。
リンネルは、ぱしっと軽くリンネに猫パンチを食らわせた。
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