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鎮魂祭が終わったら。
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深い闇の中で彼等は目覚めた。
「此処は……? 」
「炎よ。」
一人の者の目の平に炎が灯った。炎が辺りを照らす。
「此処が、旧アンゼラスなのか? 」
「その様ですね、下に魔方陣があります。」
「転移魔方陣か。」
「お母様、魔法灯があります。今点けますわ。」
魔法灯の灯りが点くと部屋中が明るくなった。
「やはり転移魔方陣だな。」
「父上、魔石が壊されています。」
魔方陣の周りに配置されている魔石が壊れている。
「此方からは移転出来ないようにですわね。」
「そうだな。仕方あるまい、此処には邪神が封印されているのだから。」
「それよりもリンネル様だ。」
「ええ、早く探しましょう。」
四人の男性と四人の女性が立ち上がった。
四人の女性は着ていたドレスを脱ぎ捨て始める。
「な、何をしているんだ? 」
下着姿になる女性達に慌てるアベル。
「動きやすくしてるのよ。」
セラミドが応える。
「あまりこっちを見ないで。」
恥ずかしそうに頬を染めるオフィリアに、
「す、すまない。」
ガウディが顔を赤らめ反らした。若い二人とは違って父親達はさりげなく、彼女等の母親に上着を掛けてあげていた。
「おじ様達のようにさり気な上着を掛けれるような紳士になりなさいよアベル。」
「はあ? ならセラは恥じらいを持つ淑女になれよな。」
「なんですって!! 」
「相変わらず仲が良いですわ。」
「ああ、そうだな。」
暖かい目で見守るオフィリアにガウディはそっと上着を掛ける。
「ありがとう。」
「いや。」
二人は微笑みあった。どんなに仲がよくても、どんなに思い合っていても一緒になれないのが公爵家の血筋であった。
「何をしている、行くぞ。」
「はい。」
親達にせかされて、返事を返す。
「さっさと、上着を寄越しなさいよ!! 」
「うるさい、ほら。」
投げつけられると思ったが、アベルは優しくセラミドの肩に上着を掛けた。
「あ、ありがとう。」
「お、おう。」
二人はもじもじと頬を染めて俯いた。
「アベル、戯れてないで行くぞ。」
「「じゃ、戯れてなんかない!! 」」
真っ赤になって二人はガウディに叫んだ。ガウディ達は無視をして廊下に出て行った。
「戯れてなんか…、」
「ないんだから……。」
二人は呟きながら後を追った。
暗い廊下に灯りが灯る。
「リンネル様はこの暗い中を歩いて行かれたのか。」
「それはないでしょう。」
「今は鎮魂祭、リンネル様の体の中には魔力が飽和状態。いえ、溢れ出ている状態でしょう。」
「何もしなくてもこの位の灯りを点けることは出来る。」
鎮魂祭以外の日のリンネ(元リンネル)は、祈りによって総ての魔力をアンジェラス(祈りの鐘)に注ぎ込んでいる。その為体の魔力の元の色が抜け落ち髪も目も白くなっていた。だが、今は鎮魂祭、総ての者が神に祈りを捧げている事でリンネは祈らなくても国は回っている。
鎮魂祭が終わった後、人々は日常に戻る。その時、国を動かし回す魔力を鐘に注ぎ込むリンネはいない。魔力で動いている物が総て停止するか、自らの魔力で動かさなくてはならなくなる。魔道具はかなりの魔力を使う、魔道具に魔力を注ぎ込むと日常を送ることは出来なくなる。
最近まで王家の者と四公、聖職者達は鐘に魔力を注ぎ込、教会介し国全体に魔力の鐘を響き渡らせていた。何十人もの者が日替わりで魔力を鐘に注ぎ込んで国を、国で使う魔道具を動かしていた。民衆はただ、スイッチを入れる魔力を使うだけ。
リンネが生まれた時、それは代わった。リンネの鳴き声に鐘が共鳴し鳴り響いた。赤子のリンネただ一人で、国の魔力を補ってしまった。黒髪だったリンネは魔力を鐘に注ぎ込み、白い髪になってしまった。先王が生きていた時は、リンネに負担を掛けぬよう制御していたが。先王が亡くなった後は、リンネのあり溢れる魔力の為に現王は国を広げ過ぎた。それは魔力が低い民衆達は知らない。
鎮魂祭が終わった時、国は総てを停止することを。
「此処は……? 」
「炎よ。」
一人の者の目の平に炎が灯った。炎が辺りを照らす。
「此処が、旧アンゼラスなのか? 」
「その様ですね、下に魔方陣があります。」
「転移魔方陣か。」
「お母様、魔法灯があります。今点けますわ。」
魔法灯の灯りが点くと部屋中が明るくなった。
「やはり転移魔方陣だな。」
「父上、魔石が壊されています。」
魔方陣の周りに配置されている魔石が壊れている。
「此方からは移転出来ないようにですわね。」
「そうだな。仕方あるまい、此処には邪神が封印されているのだから。」
「それよりもリンネル様だ。」
「ええ、早く探しましょう。」
四人の男性と四人の女性が立ち上がった。
四人の女性は着ていたドレスを脱ぎ捨て始める。
「な、何をしているんだ? 」
下着姿になる女性達に慌てるアベル。
「動きやすくしてるのよ。」
セラミドが応える。
「あまりこっちを見ないで。」
恥ずかしそうに頬を染めるオフィリアに、
「す、すまない。」
ガウディが顔を赤らめ反らした。若い二人とは違って父親達はさりげなく、彼女等の母親に上着を掛けてあげていた。
「おじ様達のようにさり気な上着を掛けれるような紳士になりなさいよアベル。」
「はあ? ならセラは恥じらいを持つ淑女になれよな。」
「なんですって!! 」
「相変わらず仲が良いですわ。」
「ああ、そうだな。」
暖かい目で見守るオフィリアにガウディはそっと上着を掛ける。
「ありがとう。」
「いや。」
二人は微笑みあった。どんなに仲がよくても、どんなに思い合っていても一緒になれないのが公爵家の血筋であった。
「何をしている、行くぞ。」
「はい。」
親達にせかされて、返事を返す。
「さっさと、上着を寄越しなさいよ!! 」
「うるさい、ほら。」
投げつけられると思ったが、アベルは優しくセラミドの肩に上着を掛けた。
「あ、ありがとう。」
「お、おう。」
二人はもじもじと頬を染めて俯いた。
「アベル、戯れてないで行くぞ。」
「「じゃ、戯れてなんかない!! 」」
真っ赤になって二人はガウディに叫んだ。ガウディ達は無視をして廊下に出て行った。
「戯れてなんか…、」
「ないんだから……。」
二人は呟きながら後を追った。
暗い廊下に灯りが灯る。
「リンネル様はこの暗い中を歩いて行かれたのか。」
「それはないでしょう。」
「今は鎮魂祭、リンネル様の体の中には魔力が飽和状態。いえ、溢れ出ている状態でしょう。」
「何もしなくてもこの位の灯りを点けることは出来る。」
鎮魂祭以外の日のリンネ(元リンネル)は、祈りによって総ての魔力をアンジェラス(祈りの鐘)に注ぎ込んでいる。その為体の魔力の元の色が抜け落ち髪も目も白くなっていた。だが、今は鎮魂祭、総ての者が神に祈りを捧げている事でリンネは祈らなくても国は回っている。
鎮魂祭が終わった後、人々は日常に戻る。その時、国を動かし回す魔力を鐘に注ぎ込むリンネはいない。魔力で動いている物が総て停止するか、自らの魔力で動かさなくてはならなくなる。魔道具はかなりの魔力を使う、魔道具に魔力を注ぎ込むと日常を送ることは出来なくなる。
最近まで王家の者と四公、聖職者達は鐘に魔力を注ぎ込、教会介し国全体に魔力の鐘を響き渡らせていた。何十人もの者が日替わりで魔力を鐘に注ぎ込んで国を、国で使う魔道具を動かしていた。民衆はただ、スイッチを入れる魔力を使うだけ。
リンネが生まれた時、それは代わった。リンネの鳴き声に鐘が共鳴し鳴り響いた。赤子のリンネただ一人で、国の魔力を補ってしまった。黒髪だったリンネは魔力を鐘に注ぎ込み、白い髪になってしまった。先王が生きていた時は、リンネに負担を掛けぬよう制御していたが。先王が亡くなった後は、リンネのあり溢れる魔力の為に現王は国を広げ過ぎた。それは魔力が低い民衆達は知らない。
鎮魂祭が終わった時、国は総てを停止することを。
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