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鐘の音。
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食事を終えたリンネは立ち上がり伸びをした。近くで寝そべっているリンネル(闇猫)に微笑む。
「お腹もいっぱいになった事だし、封印を解こうかな。」
リンネは食後の祈りのように軽く言う。リンネルは赤い目を向ける。
『そうか。』
「……で。」
リンネは見詰め返す。
『で、問は? 』
リンネルは首を傾げた。
「どうやったら封印は解けるの? 」
今まで魔力の総てを国に捧げてきたので、魔法の使い方をリンネは知るよしも無かった。
リンネはリンネルと同じように首を傾げた。
『鐘を鳴らせ。』
リンネルは軽く言うが、放置されている鐘をどう鳴らせばいいのか分からない。リンネは首を傾げた。
呪いで黒くなっていた鐘はリンネの働きで銀色の鐘に戻っているだが、床に放置されたままだ。まずは上に鐘を吊して、内部にある舌を揺らさなければ鐘は鳴らない。
リンネは上を見る、吊せるような金具が見あたらない。見つけたとしてもリンネには鐘をつり上げられるほどの腕力はない。
『祈りを捧げろ。』
「祈り? 」
『そうだ、お前はただ祈ればいい。思い、祈れ。』
「祈るの? 祈れば鐘が鳴るの? 」
リンネは何時ものように鐘に向かって祈りを捧げる。膝をつき手を組み合わせ、静に目を閉じた。
祈る。祈りを捧げる。
リンネの体が銀色に微かに光り出す。その光りが鐘に吸い込まれていく。鐘は重さを感じされず、ふわりと浮かび上がった。
『そうだ、魔力を注ぎ込め。』
(俺をこの場から解き放て。)
リンネルの赤い目が細められていく。口元から牙か除く。
リンネは祈りを捧げる。
『鐘を鳴らせ、封印を解け。』
リーーンゴーーン!!
鐘が鳴る。
『そうだ、鐘を鳴らせ。』
(聖女を殺した人間を、俺を此処に封印した人間を呪ってやる。)
リーーンゴーーン!!
鐘が鳴る。
『そうだ、封印を解け。』
(お前を此処に送った総ての人間を、お前を殺そうとした人間の総てを殺してやろう。)
リンネルは鐘の音を聞きながらあの日聖女を殺した人間を、リンネを不当に扱った人間を呪った。
『鐘の音を響き渡らせろ、俺が総てを終わらしてやろう。』
リーーンゴーーン!!
鐘が鳴る。
「うっ!! 」
「父上!? 」
フレイヤ家当主が息を詰まらせた。アベルが声を掛ける。
「ああ、」
「お母様!? 」
ウィンディ家当主が胸を押さえた。
セラミドが母親に駆け寄る。
「くっ!! 」
「オヤジ!? 」
ガイヤ家当主も、胸を詰まらせる。ガウディが、驚く。
「はぁ、」
「お母さま!! 」
シルフィ家当主も同じく、息を詰まらせた。オフィリアが心配そうに抱き付いた。
リーーンゴーーン!!
鐘が鳴る。
「これは、鐘の音? 」
地下にいる八人の元にも鐘の音が聞こえる。
リーーンゴーーン!!
鐘が鳴る。
その音と共に四公の当主達は、苦しみ出す。
「アンジェラスの音!? 」
「リンネル様!? 」
「リンネル様が鳴らしているのか!? 」
「ご無事なのですね。」
親達を心配しつつ、リンネルの無事を喜ぶ四人であった。
リーーンゴーーン!!
鐘の音と共に魔力波が空気を揺らす。旧アンゼラスの東西南北の塔に設置されている魔石が魔力波に寄ってヒビが入る。封印の石である魔石が壊れようとしていた。
リーーンゴーーン!!
魔石にヒビが入ると同時に、魔石の色と同じ魔力を持つ四公当主達が苦しみ出す。
「これは……まさか。」
「封印が解かれようとしています。」
「リンネル様、が? 」
「おやめください、リンネル様。」
四公達は、苦しみながらリンネルに願う。
「「「「このままでは、邪神を野に放つてしまいます。」」」」
親達の言葉に、四人は驚愕する。
「そんな馬鹿な、」
「リンネル様が? 」
「あり得ません。」
「リンネル様に限って、」
怨みとか憎しみとかを抱くようなリンネルでは無いことを、彼等は知っている。だが、この鐘の音が放つ魔力はリンネルの魔力。そして、当主達の言葉。
「リンネル様は邪神に寄って謀れたに違いない。」
「あり得ます。」
「リンネル様。」
「おのれ、邪神め。」
苦しむ親を労りつつ四人は邪神に、なにも出来ない自分に憤りを感じていた。
リーーンゴーーン!!
鐘が鳴る。
『お前は、リンネは俺が護ってやる。』
「お腹もいっぱいになった事だし、封印を解こうかな。」
リンネは食後の祈りのように軽く言う。リンネルは赤い目を向ける。
『そうか。』
「……で。」
リンネは見詰め返す。
『で、問は? 』
リンネルは首を傾げた。
「どうやったら封印は解けるの? 」
今まで魔力の総てを国に捧げてきたので、魔法の使い方をリンネは知るよしも無かった。
リンネはリンネルと同じように首を傾げた。
『鐘を鳴らせ。』
リンネルは軽く言うが、放置されている鐘をどう鳴らせばいいのか分からない。リンネは首を傾げた。
呪いで黒くなっていた鐘はリンネの働きで銀色の鐘に戻っているだが、床に放置されたままだ。まずは上に鐘を吊して、内部にある舌を揺らさなければ鐘は鳴らない。
リンネは上を見る、吊せるような金具が見あたらない。見つけたとしてもリンネには鐘をつり上げられるほどの腕力はない。
『祈りを捧げろ。』
「祈り? 」
『そうだ、お前はただ祈ればいい。思い、祈れ。』
「祈るの? 祈れば鐘が鳴るの? 」
リンネは何時ものように鐘に向かって祈りを捧げる。膝をつき手を組み合わせ、静に目を閉じた。
祈る。祈りを捧げる。
リンネの体が銀色に微かに光り出す。その光りが鐘に吸い込まれていく。鐘は重さを感じされず、ふわりと浮かび上がった。
『そうだ、魔力を注ぎ込め。』
(俺をこの場から解き放て。)
リンネルの赤い目が細められていく。口元から牙か除く。
リンネは祈りを捧げる。
『鐘を鳴らせ、封印を解け。』
リーーンゴーーン!!
鐘が鳴る。
『そうだ、鐘を鳴らせ。』
(聖女を殺した人間を、俺を此処に封印した人間を呪ってやる。)
リーーンゴーーン!!
鐘が鳴る。
『そうだ、封印を解け。』
(お前を此処に送った総ての人間を、お前を殺そうとした人間の総てを殺してやろう。)
リンネルは鐘の音を聞きながらあの日聖女を殺した人間を、リンネを不当に扱った人間を呪った。
『鐘の音を響き渡らせろ、俺が総てを終わらしてやろう。』
リーーンゴーーン!!
鐘が鳴る。
「うっ!! 」
「父上!? 」
フレイヤ家当主が息を詰まらせた。アベルが声を掛ける。
「ああ、」
「お母様!? 」
ウィンディ家当主が胸を押さえた。
セラミドが母親に駆け寄る。
「くっ!! 」
「オヤジ!? 」
ガイヤ家当主も、胸を詰まらせる。ガウディが、驚く。
「はぁ、」
「お母さま!! 」
シルフィ家当主も同じく、息を詰まらせた。オフィリアが心配そうに抱き付いた。
リーーンゴーーン!!
鐘が鳴る。
「これは、鐘の音? 」
地下にいる八人の元にも鐘の音が聞こえる。
リーーンゴーーン!!
鐘が鳴る。
その音と共に四公の当主達は、苦しみ出す。
「アンジェラスの音!? 」
「リンネル様!? 」
「リンネル様が鳴らしているのか!? 」
「ご無事なのですね。」
親達を心配しつつ、リンネルの無事を喜ぶ四人であった。
リーーンゴーーン!!
鐘の音と共に魔力波が空気を揺らす。旧アンゼラスの東西南北の塔に設置されている魔石が魔力波に寄ってヒビが入る。封印の石である魔石が壊れようとしていた。
リーーンゴーーン!!
魔石にヒビが入ると同時に、魔石の色と同じ魔力を持つ四公当主達が苦しみ出す。
「これは……まさか。」
「封印が解かれようとしています。」
「リンネル様、が? 」
「おやめください、リンネル様。」
四公達は、苦しみながらリンネルに願う。
「「「「このままでは、邪神を野に放つてしまいます。」」」」
親達の言葉に、四人は驚愕する。
「そんな馬鹿な、」
「リンネル様が? 」
「あり得ません。」
「リンネル様に限って、」
怨みとか憎しみとかを抱くようなリンネルでは無いことを、彼等は知っている。だが、この鐘の音が放つ魔力はリンネルの魔力。そして、当主達の言葉。
「リンネル様は邪神に寄って謀れたに違いない。」
「あり得ます。」
「リンネル様。」
「おのれ、邪神め。」
苦しむ親を労りつつ四人は邪神に、なにも出来ない自分に憤りを感じていた。
リーーンゴーーン!!
鐘が鳴る。
『お前は、リンネは俺が護ってやる。』
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