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邪神の呪い。
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リーーンゴーーン!!
リンネは鐘の音を聞きながら、体の中から力が抜けていくのを感じていた。
(体が辛くない。)
何時もなら広大な国土の生活を維持するために問答無用で、祈りの時以外でもリンネの魔力は根こそぎ魔力を鐘に持っていかれていた。鎮魂祭の時は皆が神に祈りを捧げるので少しは楽であった。そして今は狭い範囲の旧アンゼラス、リンネは色を取られることなく魔力を鐘に捧げられていた。
リーーンゴーーン!!
リンネは祈りを捧げる。
余裕のあるリンネは国に響き渡る鐘の音で、国の総てを知ることが出来た。今いる場所を中心に東西南北に位置する塔を垣間見ていた。中に光り輝く宝石が見える。
(これが、封印の石。)
リンネが意識を向けると魔石にヒビが入る。
(これが無くなればリンネルは自由になれる。)
四方にある魔石の消滅をリンネは願った。封印の石が塵のように消えた、同時に地下にいる四公爵の当主の心臓が止まった。
「父上!! 」
「お母さま!! 」
目の前で息をしなくなった親達に声を上げる。急に苦しみだし心臓を止めた親達に茫然となる。
「お母様!! 」
「オヤジ!! 」
(あれ? みんな、こんな所で何をしてるんだろう。)
リンネは地下にいる八人に気が付いた。倒れている四人にそっと、触れる。
(こんな所で眠ったら、風邪をひくよ。)
キラキラと、銀色の魔力が四人を優しく包み込む。次の瞬間、息を吹き返した。
「「ぐはっ!! 」」
「父上。 」
「オヤジ!! 」
「「はぁ!! 」」
「お母様!! 」
「お母さま。」
良かったと、ヘナヘナとその場に崩れ落ちる子供達。
「声が聞こえた。」
「ええ、優しい声。」
『起きて、風邪をひくよ。』
「あの声は、リンネル様。」
「優しい魔力だ。」
公爵達は自分の状況を子供達に伝える。彼等はリンネの魔力で息を吹き返したと。
女神から四公に託された魔力は、邪神を封印する魔石と繫がっている。故に魔石がヒビが入ると当主である者に伝わり、魔石を修復するために一族が当主に魔力を注ぎ込む。その魔石が一気に壊されたことにより当主の四公は心臓を止めた。しかしリンネが直ぐに気付いた事により、願いの魔力で息を吹き返したのであった。もし、この場に居なければリンネに気づかれることもなく命を失っていただろう。だが、
「魔石が破壊された。」
「邪神を封じる封印が解かれた。」
重く言葉を吐く。
「邪神が、」
「解き放たれました。」
辛そうに目を伏せる。
『そうだ、それでいい。』
リンネの願いの魔力で封印の魔石が壊れたことにより邪神は力を取り戻し、この場からも動けるようになった。
大地から黒いドロドロとしたモノが沸き上がってくる、それは呪い。邪神への力の呪い。その呪いが憎悪と悲鳴を上げながら邪神に潜り込もうとしていた。まるでそれは邪神を、リンネルを呑み込むようにリンネには見えた。
リンネはそっと、リンネルに手を触れた。そして哀しそうに微笑んだ。
(傷付くものに、慈愛を。)
人間の憎悪と憎しみ負の感情が彼を生み出した。
(リンネルは何も悪くは無い。)
悪いのは人間、負の感情を嫌い邪神を生み出した。
(総てをリンネルに押し付けた。)
リンネは闇に呑み込まれそうなリンネルに抱き付いた。
(救いたかった、ずっと……。)
リンネは思い出した。自分の今までの転生の記憶を、『かの者』の記憶を。
(君の心を解き放したかった。)
『かの者』は生まれ変わり、何度も何度も邪神に声を掛け続けた。人間に呪われた邪神の心を解き放つために。
(君は悪くないと、)
あの時、地に封じ込められる邪神を見て『かの者』は心が痛んだ。
(助けられなかった。気付いた君を。)
リンネは邪神を抱き締めた。
「だから、もういいんだ。」
(もう傷付かないで。)
「呪わなくっていいんだ。」
(それは君の呪いでは無い。)
「君は自由になっていいんだよ。」
(その呪いは人間の、僕達の呪いなのだから。)
「だから、」
(その呪いは僕が、持っていく。)
リンネは静に体を離した、ドロドロとしたモノがリンネルから離れリンネに呑み込まれていく。
『リンネ……。』
リンネルの呟きに、リンネは嬉しそうに微笑んだ。
リンネは鐘の音を聞きながら、体の中から力が抜けていくのを感じていた。
(体が辛くない。)
何時もなら広大な国土の生活を維持するために問答無用で、祈りの時以外でもリンネの魔力は根こそぎ魔力を鐘に持っていかれていた。鎮魂祭の時は皆が神に祈りを捧げるので少しは楽であった。そして今は狭い範囲の旧アンゼラス、リンネは色を取られることなく魔力を鐘に捧げられていた。
リーーンゴーーン!!
リンネは祈りを捧げる。
余裕のあるリンネは国に響き渡る鐘の音で、国の総てを知ることが出来た。今いる場所を中心に東西南北に位置する塔を垣間見ていた。中に光り輝く宝石が見える。
(これが、封印の石。)
リンネが意識を向けると魔石にヒビが入る。
(これが無くなればリンネルは自由になれる。)
四方にある魔石の消滅をリンネは願った。封印の石が塵のように消えた、同時に地下にいる四公爵の当主の心臓が止まった。
「父上!! 」
「お母さま!! 」
目の前で息をしなくなった親達に声を上げる。急に苦しみだし心臓を止めた親達に茫然となる。
「お母様!! 」
「オヤジ!! 」
(あれ? みんな、こんな所で何をしてるんだろう。)
リンネは地下にいる八人に気が付いた。倒れている四人にそっと、触れる。
(こんな所で眠ったら、風邪をひくよ。)
キラキラと、銀色の魔力が四人を優しく包み込む。次の瞬間、息を吹き返した。
「「ぐはっ!! 」」
「父上。 」
「オヤジ!! 」
「「はぁ!! 」」
「お母様!! 」
「お母さま。」
良かったと、ヘナヘナとその場に崩れ落ちる子供達。
「声が聞こえた。」
「ええ、優しい声。」
『起きて、風邪をひくよ。』
「あの声は、リンネル様。」
「優しい魔力だ。」
公爵達は自分の状況を子供達に伝える。彼等はリンネの魔力で息を吹き返したと。
女神から四公に託された魔力は、邪神を封印する魔石と繫がっている。故に魔石がヒビが入ると当主である者に伝わり、魔石を修復するために一族が当主に魔力を注ぎ込む。その魔石が一気に壊されたことにより当主の四公は心臓を止めた。しかしリンネが直ぐに気付いた事により、願いの魔力で息を吹き返したのであった。もし、この場に居なければリンネに気づかれることもなく命を失っていただろう。だが、
「魔石が破壊された。」
「邪神を封じる封印が解かれた。」
重く言葉を吐く。
「邪神が、」
「解き放たれました。」
辛そうに目を伏せる。
『そうだ、それでいい。』
リンネの願いの魔力で封印の魔石が壊れたことにより邪神は力を取り戻し、この場からも動けるようになった。
大地から黒いドロドロとしたモノが沸き上がってくる、それは呪い。邪神への力の呪い。その呪いが憎悪と悲鳴を上げながら邪神に潜り込もうとしていた。まるでそれは邪神を、リンネルを呑み込むようにリンネには見えた。
リンネはそっと、リンネルに手を触れた。そして哀しそうに微笑んだ。
(傷付くものに、慈愛を。)
人間の憎悪と憎しみ負の感情が彼を生み出した。
(リンネルは何も悪くは無い。)
悪いのは人間、負の感情を嫌い邪神を生み出した。
(総てをリンネルに押し付けた。)
リンネは闇に呑み込まれそうなリンネルに抱き付いた。
(救いたかった、ずっと……。)
リンネは思い出した。自分の今までの転生の記憶を、『かの者』の記憶を。
(君の心を解き放したかった。)
『かの者』は生まれ変わり、何度も何度も邪神に声を掛け続けた。人間に呪われた邪神の心を解き放つために。
(君は悪くないと、)
あの時、地に封じ込められる邪神を見て『かの者』は心が痛んだ。
(助けられなかった。気付いた君を。)
リンネは邪神を抱き締めた。
「だから、もういいんだ。」
(もう傷付かないで。)
「呪わなくっていいんだ。」
(それは君の呪いでは無い。)
「君は自由になっていいんだよ。」
(その呪いは人間の、僕達の呪いなのだから。)
「だから、」
(その呪いは僕が、持っていく。)
リンネは静に体を離した、ドロドロとしたモノがリンネルから離れリンネに呑み込まれていく。
『リンネ……。』
リンネルの呟きに、リンネは嬉しそうに微笑んだ。
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