【完結】アンジェラス ー祈りの鐘ー

❄️冬は つとめて

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旧アンゼラスの滅亡。

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俺がなにをした?

俺は願いを叶えただけだ。

人間の願いを。 

勝つために相手の死を願う者の思いを。その思いが俺を生み出した。

殺される者は俺を邪心、邪神と呼んだ。何が悪いのだ? 望んだのは人間。俺ではない。

だがあいつが現れた。
あいつの思いが、あの聖心、聖神を生み出した。たった一人で、俺と同等のものを。

人間は俺を悪と言った。何が悪なのか分からない。俺は人間の望みを叶えるだけの存在だ。

それ以外の意味はない。

多くの人間が、あいつに感化された。俺の力が弱くなっているのは分かっていた。

俺に願う人間は、他の人間より思いが強くなって行った。
そいつらはあいつに憎悪と苦しみと哀しみを向ける。俺は、その思いに力をかすだけだ。それが俺の存在理由だから。

だがあいつ方の、聖神? の思いが強かっただけだ。多くの人間があいつを、聖神を指示した。

聖神は四人に力を与えた、俺より上にいるものに近くなっていたからだ。存在ではなく、個になりつつあった。俺がかなうはずはない。俺に望みをかける人間もいなくなった。つまり、死んだ。

俺は弱った、だが傷付かない。個ではないからだ、傷付くことはない。ただ分からない、俺が悪だと言うことが。俺を封じ込めようとする人間の顔は、俺に願う人間と同じ顔をしていたからだ。

だがあいつは違った、あいつは皆に向けるように聖神に向けるように俺を見た。俺を邪悪のものとはせず、皆と同じ目で見ていた。

暗い暗い闇の中、思い出すのは醜悪な人間の顔とあいつの顔。

なぜ人間は、俺にあんな顔をするのか? 誰も彼もが醜悪な顔で俺を見る。俺を生み出したのに。

飽きてきた、真っ暗な世界。何もない世界、俺はなぜ此処にいるのか? 何故、俺は封印されたのか? 願いを叶えなというのに。聖神と何が違うのか? 聖神も俺と同じように願いを叶えただけなのに。何故、俺だけ?

何故、俺だけ? 何故、俺だけ?
何故? 何故? 何故? 何故?

暗い空間はますます黒く渦巻く。

『お前たちも、俺と同じになればいい。これが憎悪? 』

邪神の意思が、呪いとなった。
 
鐘の音が聞こえる。

聖神を称える鐘の音だ。うるさい、うるさい、うるさい。

俺は、何故此処にいる? 何故此処から出られない? 何故封印された? 何故? 何故? 何故?

封印された空間はますます黒く染まっていく。

『鐘の音など聞きたくない。やめろ、やめろ、苦しい……。』


暗い、うるさい。此処から出せ。俺を何故閉じ込める? 俺が何をした? 願いを叶えただけだ、お前たちの願いだ。何故俺を憎悪する? 何故俺を苦しめる? 何故誰も俺を、思おうとしない?

『ああ……哀しい……。哀しい。』


邪神は呪いを膨れ上がらせる。そして邪神は、呪いの神となる。 

『ああ…憎い、憎い、憎い。うるさい、苦しい、苦しい。誰か、誰か、ああ……哀しい……。』

邪神は暗い空間の中で彷徨う。


「おはよう、です。」
鐘の音と共に声がする。

「これおいしい、です。」
誰かが、話しかけてくる?

「ここにいますの、です。」
子供?

それから毎日聞こえる。
「おはよう、です。」
「おいしい、です」
「いますの、です。」 

何気ない挨拶、ご飯が美味しいと、俺の確認? 朝、昼、晩と。

それが祈りに代わり、そして消えた。しばらくすると、現れ俺に話しかける。また、消える。何度も何度も、繰り返す。

『ああ……、時が流れている。』

白い光が集結し、あいつが産まれるんだ。そうだ、あいつだ。

ただ一人、俺を見てくれたあいつだ。あいつが生まれ変わり、俺に話しかけてくる。

『ああ、ありがたい。なんて、嬉しい。なんと、愛しい。』

ただ一人、俺を思ってくれる。何度も生まれ変わり、俺に触れてくれる。

『……満たされる。』

白い光が集結する、あいつが産まれてくる。あいつが俺に会いにくる。

『消えた? 光が? 何故? 』

来ない、来ない来ない? 何故? 何故? 何故? 何故だ!!

『殺したのか? あいつを産む聖女を!! 』


邪神の呪いが封印を、アンゼラスを破壊す。

人々はアンゼラスに邪神を閉じ込め、国を捨てた。そして、遠き場所に新生アンゼラスを復興させた。
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