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旧アンゼラスの滅亡。
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俺がなにをした?
俺は願いを叶えただけだ。
人間の願いを。
勝つために相手の死を願う者の思いを。その思いが俺を生み出した。
殺される者は俺を邪心、邪神と呼んだ。何が悪いのだ? 望んだのは人間。俺ではない。
だがあいつが現れた。
あいつの思いが、あの聖心、聖神を生み出した。たった一人で、俺と同等のものを。
人間は俺を悪と言った。何が悪なのか分からない。俺は人間の望みを叶えるだけの存在だ。
それ以外の意味はない。
多くの人間が、あいつに感化された。俺の力が弱くなっているのは分かっていた。
俺に願う人間は、他の人間より思いが強くなって行った。
そいつらはあいつに憎悪と苦しみと哀しみを向ける。俺は、その思いに力をかすだけだ。それが俺の存在理由だから。
だがあいつ方の、聖神? の思いが強かっただけだ。多くの人間があいつを、聖神を指示した。
聖神は四人に力を与えた、俺より上にいるものに近くなっていたからだ。存在ではなく、個になりつつあった。俺がかなうはずはない。俺に望みをかける人間もいなくなった。つまり、死んだ。
俺は弱った、だが傷付かない。個ではないからだ、傷付くことはない。ただ分からない、俺が悪だと言うことが。俺を封じ込めようとする人間の顔は、俺に願う人間と同じ顔をしていたからだ。
だがあいつは違った、あいつは皆に向けるように聖神に向けるように俺を見た。俺を邪悪のものとはせず、皆と同じ目で見ていた。
暗い暗い闇の中、思い出すのは醜悪な人間の顔とあいつの顔。
なぜ人間は、俺にあんな顔をするのか? 誰も彼もが醜悪な顔で俺を見る。俺を生み出したのに。
飽きてきた、真っ暗な世界。何もない世界、俺はなぜ此処にいるのか? 何故、俺は封印されたのか? 願いを叶えなというのに。聖神と何が違うのか? 聖神も俺と同じように願いを叶えただけなのに。何故、俺だけ?
何故、俺だけ? 何故、俺だけ?
何故? 何故? 何故? 何故?
暗い空間はますます黒く渦巻く。
『お前たちも、俺と同じになればいい。これが憎悪? 』
邪神の意思が、呪いとなった。
鐘の音が聞こえる。
聖神を称える鐘の音だ。うるさい、うるさい、うるさい。
俺は、何故此処にいる? 何故此処から出られない? 何故封印された? 何故? 何故? 何故?
封印された空間はますます黒く染まっていく。
『鐘の音など聞きたくない。やめろ、やめろ、苦しい……。』
暗い、うるさい。此処から出せ。俺を何故閉じ込める? 俺が何をした? 願いを叶えただけだ、お前たちの願いだ。何故俺を憎悪する? 何故俺を苦しめる? 何故誰も俺を、思おうとしない?
『ああ……哀しい……。哀しい。』
邪神は呪いを膨れ上がらせる。そして邪神は、呪いの神となる。
『ああ…憎い、憎い、憎い。うるさい、苦しい、苦しい。誰か、誰か、ああ……哀しい……。』
邪神は暗い空間の中で彷徨う。
「おはよう、です。」
鐘の音と共に声がする。
「これおいしい、です。」
誰かが、話しかけてくる?
「ここにいますの、です。」
子供?
それから毎日聞こえる。
「おはよう、です。」
「おいしい、です」
「いますの、です。」
何気ない挨拶、ご飯が美味しいと、俺の確認? 朝、昼、晩と。
それが祈りに代わり、そして消えた。しばらくすると、現れ俺に話しかける。また、消える。何度も何度も、繰り返す。
『ああ……、時が流れている。』
白い光が集結し、あいつが産まれるんだ。そうだ、あいつだ。
ただ一人、俺を見てくれたあいつだ。あいつが生まれ変わり、俺に話しかけてくる。
『ああ、ありがたい。なんて、嬉しい。なんと、愛しい。』
ただ一人、俺を思ってくれる。何度も生まれ変わり、俺に触れてくれる。
『……満たされる。』
白い光が集結する、あいつが産まれてくる。あいつが俺に会いにくる。
『消えた? 光が? 何故? 』
来ない、来ない来ない? 何故? 何故? 何故? 何故だ!!
『殺したのか? あいつを産む聖女を!! 』
邪神の呪いが封印を、アンゼラスを破壊す。
人々はアンゼラスに邪神を閉じ込め、国を捨てた。そして、遠き場所に新生アンゼラスを復興させた。
俺は願いを叶えただけだ。
人間の願いを。
勝つために相手の死を願う者の思いを。その思いが俺を生み出した。
殺される者は俺を邪心、邪神と呼んだ。何が悪いのだ? 望んだのは人間。俺ではない。
だがあいつが現れた。
あいつの思いが、あの聖心、聖神を生み出した。たった一人で、俺と同等のものを。
人間は俺を悪と言った。何が悪なのか分からない。俺は人間の望みを叶えるだけの存在だ。
それ以外の意味はない。
多くの人間が、あいつに感化された。俺の力が弱くなっているのは分かっていた。
俺に願う人間は、他の人間より思いが強くなって行った。
そいつらはあいつに憎悪と苦しみと哀しみを向ける。俺は、その思いに力をかすだけだ。それが俺の存在理由だから。
だがあいつ方の、聖神? の思いが強かっただけだ。多くの人間があいつを、聖神を指示した。
聖神は四人に力を与えた、俺より上にいるものに近くなっていたからだ。存在ではなく、個になりつつあった。俺がかなうはずはない。俺に望みをかける人間もいなくなった。つまり、死んだ。
俺は弱った、だが傷付かない。個ではないからだ、傷付くことはない。ただ分からない、俺が悪だと言うことが。俺を封じ込めようとする人間の顔は、俺に願う人間と同じ顔をしていたからだ。
だがあいつは違った、あいつは皆に向けるように聖神に向けるように俺を見た。俺を邪悪のものとはせず、皆と同じ目で見ていた。
暗い暗い闇の中、思い出すのは醜悪な人間の顔とあいつの顔。
なぜ人間は、俺にあんな顔をするのか? 誰も彼もが醜悪な顔で俺を見る。俺を生み出したのに。
飽きてきた、真っ暗な世界。何もない世界、俺はなぜ此処にいるのか? 何故、俺は封印されたのか? 願いを叶えなというのに。聖神と何が違うのか? 聖神も俺と同じように願いを叶えただけなのに。何故、俺だけ?
何故、俺だけ? 何故、俺だけ?
何故? 何故? 何故? 何故?
暗い空間はますます黒く渦巻く。
『お前たちも、俺と同じになればいい。これが憎悪? 』
邪神の意思が、呪いとなった。
鐘の音が聞こえる。
聖神を称える鐘の音だ。うるさい、うるさい、うるさい。
俺は、何故此処にいる? 何故此処から出られない? 何故封印された? 何故? 何故? 何故?
封印された空間はますます黒く染まっていく。
『鐘の音など聞きたくない。やめろ、やめろ、苦しい……。』
暗い、うるさい。此処から出せ。俺を何故閉じ込める? 俺が何をした? 願いを叶えただけだ、お前たちの願いだ。何故俺を憎悪する? 何故俺を苦しめる? 何故誰も俺を、思おうとしない?
『ああ……哀しい……。哀しい。』
邪神は呪いを膨れ上がらせる。そして邪神は、呪いの神となる。
『ああ…憎い、憎い、憎い。うるさい、苦しい、苦しい。誰か、誰か、ああ……哀しい……。』
邪神は暗い空間の中で彷徨う。
「おはよう、です。」
鐘の音と共に声がする。
「これおいしい、です。」
誰かが、話しかけてくる?
「ここにいますの、です。」
子供?
それから毎日聞こえる。
「おはよう、です。」
「おいしい、です」
「いますの、です。」
何気ない挨拶、ご飯が美味しいと、俺の確認? 朝、昼、晩と。
それが祈りに代わり、そして消えた。しばらくすると、現れ俺に話しかける。また、消える。何度も何度も、繰り返す。
『ああ……、時が流れている。』
白い光が集結し、あいつが産まれるんだ。そうだ、あいつだ。
ただ一人、俺を見てくれたあいつだ。あいつが生まれ変わり、俺に話しかけてくる。
『ああ、ありがたい。なんて、嬉しい。なんと、愛しい。』
ただ一人、俺を思ってくれる。何度も生まれ変わり、俺に触れてくれる。
『……満たされる。』
白い光が集結する、あいつが産まれてくる。あいつが俺に会いにくる。
『消えた? 光が? 何故? 』
来ない、来ない来ない? 何故? 何故? 何故? 何故だ!!
『殺したのか? あいつを産む聖女を!! 』
邪神の呪いが封印を、アンゼラスを破壊す。
人々はアンゼラスに邪神を閉じ込め、国を捨てた。そして、遠き場所に新生アンゼラスを復興させた。
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