【完結】アンジェラス ー祈りの鐘ー

❄️冬は つとめて

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鎮魂祭のアンゼラス。

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城の大広間では舞踏会が繰り返されていた。鎮魂祭の七日間の間、毎日夜会は繰り広げられる。

「昨日の鎮魂祭の前夜祭で、王太子リンネルとフレイヤ公爵家のアイリスとの婚約解消は知っておろう。」

鎮魂祭の祈りを終えた司祭や国王、貴族達は続いての夜会を楽しみ始めていた。国王が貴族達に話し出す。
 
「知っての通り、リンネルは魔力を持たない無能者。我が父先王がリンネルを憐れに思い王太子としておったが、それでは国の為にならぬと儂は思いリンネルを王太子から排斥し、弟のヘンリーに国を継がせるため王太子とすることを此処に宣言する。」

「「おおっ!! 」」
会場がざわめき、拍手が鳴り響く。

「フレイヤ公爵家の令嬢アイリスは、ヘンリーと婚約することになりましたわ。二人が思い合っているのは周知の事実、祝ってあげてくださいね。」
王妃が、ヘンリーの立太子の確定の次に婚姻の話のをする。

「我ら二人は、この国の繁栄を此処に約束しょう。」
「ええ、約束しますわ。」
ヘンリーがアイリスの肩を抱き誓いを立てる、彼女も後に続いた。

会場内は祝福に包まれた。

「リンネル様はどうなさるのでしょう? 」
誰かが、元王太子のリンネルの事を囁いた。四人の公爵家の当主はリンネルを推しているからだ。このままでは、争いになりかねない。

「リンネルは、あれでも王家の血を引くもの。アンゼラスの領土を国分して、立国することにした。」
「「「なっ、分国ですと!! 」」」
貴族達はざわめいた、国を分けるなど聞いたことがなかった。リンネルの領土に入ることは、国の権利を無くすことになる。

「聖女の血を引くに相応しい、旧アンゼラスを与えることにした。既に、今朝方その国へ送還した。」
「「「旧、アンゼラス!! 」」」
其れは流刑の地、呪われし大地、死を意味する言葉。貴族達は震えあがった。

「安心しろ一人ではない、四公当主と嫡子の四人も一緒だ。彼等なら、リンネルを支え旧アンゼラスを復興させてくれることだろう。」
国王は貴族達を見下ろす。自分に逆らうことは死を意味することだと遠回りに誇示する。

「公爵家は此処にいる者たちが継ぐことになった。」
国王の紹介でカイン達四人が前に出る。誇り高き顔を貴族達に向ける。

「「「「我ら四公、王家の為に力を尽くすことを誓います。」」」」
貴族達は再度ざわめいた。

「今日は、アンゼラスの未来と、旧アンゼラスの門出を祝おうではないか。」
「「「「称えあれ、ヘンリック国王陛下!! 」」」」
「「「「称えあれ、アンゼラス!! 」」」」
公爵家の当主となった若い四人は誉れ高く声を上げた。そして夜会は、始まった。ヘンリーを推していた貴族達は祝福に包まれ、リンネルを先の公爵家の当主達を推していた貴族達は不安に苛まれた。儀式の祭壇の傍にいる司祭達に目を向けると、居場所悪く俯いている。無理もない、聖人の生まれ変わりとして生まれたリンネルは何の魔力も持たない無能者。聖女伝説も地に落ち、教会は力を無くしていた。今はただ女神アンジェラスに祈りを捧げ、儀式を運行する者に過ぎなかった。

次の日、アンゼラスの全国民にリンネルの排斥と立国。ヘンリーの立太子とフレイヤ家のアイリスとの婚約は伝えられた。何も知らない国民達は、ヘンリーの立太子の知らせに祭りの雰囲気も相まって祝福に盛り上がった。

  
「カイン様、旦那様がリンネル様について行かれたとは本当でございますか? 」
「ああそうだ、兄上も一緒だ。」 
「今日からカインがこのフレイヤ公爵家の当主となるのよ、貴方達はしっかりとカインを支えなさい。」
カインとアイリスの言葉に執事は首を振った。
「私はもう老いさらばえた者、新たに主を持つことはできかねます。前当主様の後を追い、旧アンゼラスに行こうと思います。」
執事は二人に頭を下げた。

「何を言っている!? 」
「旧アンゼラスがどのような場所だと解って言っているの? 」
二人が執事に問いただせば、
「はい。」
と、執事は頭を下げた。

「ならば父上、私も共に参ります。」
執事の息子も旧アンゼラスに行くと言い出した。
「私はアベル様に、忠誠を尽くした身。主を変えることはできかねます。父上と共に出向き、アベル様に尽くしたいと思います。」
そう言うと、カイン達に頭を下げた。

「今まで公爵家を支えてくれた者として優遇してやれば図に乗りやがって!! いいだろう、お前達も父上達と同じ場所に送ってやろう!! 」
 
そうして、前の公爵につい追いする者やスラム街に住むもの達も鎮魂祭の最終日に教会の前にはられた魔法陣によって旧アンゼラスに送られる事となった。無理やり送られる者や志願するもの、乞うて国に残る者とに別れた。








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