【完結】アンジェラス ー祈りの鐘ー

❄️冬は つとめて

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奉仕の仕事。

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女神が帰ったのにも気づかず王達は鐘に注意がいっていた。

「誰ぞ、この鐘を引っ掛けるポールを持って来い。」
直ぐに司祭はどこぞから服をかけるハンガーラックを持ってきた。見た目はなんだが、取り敢えずの物だ。

「で、どう鳴らすのだ? 」 
ラックに掛けたが、鐘には鳴らす舌が付いていなかった。王達は女神が居るであろう場所へ振り向いた。

「帰ったのか? 」
「なんと無責任なのかしら。」
「こんな不良品を置いて行くなんて。」
「おい、魔道士。鐘の使い方は? 」
王と王妃、アイリスに最後にヘンリーが魔道士に問いかける。

「教会のことは、教会に聞いて下さい。」
「た、確かリンネル様は鐘の下で祈りを捧げてました。」
「リンネルが……。」
リンネルの名前に、見事に王族達は嫌悪感をあらわにした。

「そうだ、祈りをささげる事で鐘は鳴るはずだ。なんせ、祈りの神。」
教皇は、若かりし頃自らも皆と共に鐘に祈りを捧げていたことを思い出した、リンネが生まれる前、毎日百人ほどの司祭いが朝と昼と晩と日替わり交代で祈りを捧げていたことを。

(あの頃の鐘は子供の大きさだったか? リンネルが、聖人が生まれて鐘が巨大化したように思えたが。)
リンネが生まれてからこの場で祈りを捧げていないと思い出す。

(祈りを捧げた後はいつも怠く、一日は怠さが取れなかったな……。)   

リーーンコーーン!!
可愛らしい鐘の音が聞こえた。

昔に思いを寄せていると、祈りの場が明るくなった。こうこうと、魔道具の灯りが点ったのだ。

「いっ、いやーーああァァ!! 」
「なん…だ、身体がダルい……。」
「なに、なにが起こったの……陛下。」
「身体が、身体が、動かない……。」
王族とアイリスが床に伏せている。大理石に写った自分を見て、アイリスは悲鳴をあげた。

そこには、色を無くした瞳孔だけの瞳と髪が写されていた。それは気持悪いと馬鹿にしていたリンネのように。

「どうして? どうして? いやぁ、いやあぁ!! 」
動かない身体で床をのたうち回る。だがそれはアイリスだけではなく、王も王妃もヘンリーも瞳からも髪からも色が抜け落ちていた。

「ふむふむ、どうやら魔力を鐘に奪われたようですね。」
魔道士が女神の鐘を凝視して結論を言う。そして聖堂の上の窓に駆け寄った。聖堂の祈りの場は一番上にあったのでその窓から王都がよく見えた。王都の街は暗いままで、灯りが点いているのは城内だけのようだった。

「ふむ、四人の魔力では城内に共有するのがやっとのようですな。」
魔道士は興味深く倒れている四人を見て頷く。

「いやぁ、鐘が小さくてよかった。前の大きさだと王都の人間の総てが魔力だけではなく生命力をも奪われ、ミイラになっていたでしょう。」
「で、では、リンネル様は……。」
教皇は呟いた。

「流石は聖人ですね。前の大きな鐘に魔力を注ぎ込み平気で歩いていたのだから。」
ただ一人、毎日朝昼晩と魔力を鐘に注ぎ込んでいた。国を動かすほどの壮大な魔力、彼等はそれを手放した。

「ふむ、王様達には休んでもらい明日の朝には魔力を注いて貰わないと……。無理ぽいですね。」
虫の息のように床に這いつくばる王達を見ると、

「まあ、こんな時の為の四公であり、貴族の方々でありますから。」
魔道士は四公爵を見て貴族達を見る。

「「「「我々に魔力を提供しろと言うのか!! 」」」」
「トウゼンでしょう。裕福な生活をしているのだから、国の為に国民の為に魔力ぐらい提供してください。」
ケラケラと笑う。

「そう言えば、リンネル様が産まれる前は鐘は教会か管理していたのですよね。」
「百人だ。司祭百人で日替わりの三交替祈りを捧げていた。」
教皇は拳を握りしめながら言った。

「なるほど、あの頃とは国の広さも魔道具の量も違いますからね。」
魔道士はふむふむと考える。

「せめて王都だけでも魔道具は使えるようにしませんと。日替わりの三交替で、一回につき貴族から二百名、教会から二百名出して頂きましょう。」
「「「「なっ!! 魔法は貴様らが専門だろう!! 」」」」
貴族達が猛反発する。

「仕方ありませんよ、魔道士は少ないですから。イザというときに、待機していないと。それに不必用な魔道具の選別をしませんと。節魔力ですヨ。」
にっこりと笑う。

「そ、そうだ。リンネル様を迎えに行けばいいのだ!! 」
「「「「おお、そうだ!! 」」」」
「リンネル様に帰って来てもらおう。」
貴族達はいい案だと騒ぎたてる。

「あ、無理すょ。魔力が足りないから、魔法陣使えませんよ~。」
魔道士はケラケラと笑って見せた。


こうして、貴族達は国の為に日々魔力を奉仕し続けることとなった。人数を増やしたことで色落ちは防げたが、身体の倦怠感は抜けることはなかった。



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