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既得権? そんな物は知りません、神ですから。

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「おお、そうだった。」
ぽんと、拳を叩く。
「ツンツン城を買いに来たのだった。」
俺はお姉さんを見る。
「はい、お城を御所望でしたのですね。」
優雅に微笑む。
「うっ、眩しい。流石は、太陽神。」
「有り難う御座います、ルーン様。」
美しいお姉さんに促され俺はソファに座った。マックス王子とボブさんも俺を真ん中にソファに座る。
マックス王子は口元を押さえて、目を反らしている。
(ふふふ、どうやらマックス王子は清楚系で優雅で凜々しいお姉さんに弱いようですね。ふふふ、同志よ。)

「番茶ですが。」
目の前に湯飲み茶碗のお茶が置かれた。
「これでいいか、天照。」
「そういう時は『粗茶ですが』と、言うのです。」
でましたね、イケメン。バンバラ黒髪、茶目の濃い顔の雄々しいイケメンですよ。

(お姉さんを名前で呼んでますが、彼氏ですか? 殴っていいですか? )
俺がガン見していると、
「ほら、須佐之男も挨拶をしなさい。」
「須佐之男命だ、宜しく。」
お姉さんに怒られて、素っ気なく挨拶をするイケメン。スーツ姿が似合ってます。
(須佐之男て、)
「済みません、弟が。」

「弟ですか。」
ほっと、したようにマックス王子が声を上げた。
(ふふ、惚れたな。)
ボブさんも、ニヤニヤしている。マックス王子はお茶を飲んで、目を反らした。
ん、ちょっと待て。マックス王子が惚れたとなると、俺とライバルになるのか。
(それは不味い相手は背の高い美形、非常に不味い。)

「粗菓子ですが。」
テーブルの反対側からお菓子が出て来る。メイド姿のお姉さんによく似た女性が煎餅を差し出した。
「そこは『つまらない物ですが』と、出すのです。」
「つまらない物ですが。」
言い直すメイドさん。
「月読みも挨拶を。」
「月読みです。」
ペコリと、頭を下げる。
(月読みって、)
「済みません、弟が。」
恥ずかしそうにお姉さんが頬を染めた。

「頂きました。」
俺が声を上げると、お姉さんは
「どうぞ。」
と、お姉さんが微笑む。
意味は違いますが、その笑顔も頂きます。三神の真ん中は『男の娘』と、決まってるのか。うちのツクヨと言い。
(大丈夫、俺は『僕っ娘』も『男の娘』も好きですよ。綺麗なお姉さんも美形なお兄さんも、好きです。リヤ充イケメンは、殴ってもいいですか。)
お盆を持って、後の方で船を漕いでます。イケメン弟が支えてます。夜型ですか、月読みだから。

(あれ、俺何しに来たんだっけ? )
煎餅をばりっと食べた。
両脇からバリバリ食べる音がする。

「美味しいです。」
「この歯ごたえ、たまらない。」
流石は、食欲魔神遠慮がない。

「どの様なお城を御所望なのですか? 」
(おお、そうだった。俺は城を買いに来たのだった。)
「ツンツンした城を、お願いします。」
「ツンツン? 」
お姉さんが小首を傾げてます。
(くっ、可愛い。)
「こう言う塔がツンツンした城を。」
外国の絵本でに描いてある、あの岩山にそそり立つツンツンした城です。

「シンデレラ城の様な、ですか? 」
「それです。」
流石はお姉さん、解りやすいです。
「外側はそれで、内装はフル電で。」
俺はカードを取り出す。ブラックカードだ。
「お代は、これで。」
(足りるよね? 国家レベルの金額だし。)
「はい。受け貯まりました。」
お姉さんの笑顔。
(良かった、恥かかなくて。)

「いちからシンデレラ城を作りましょう。」
「え、それは既得権は大丈夫なのですか? 」
俺の心配にお姉さんは、クスクスと笑った。
「私達は人間ではありませんから。」
(あ、俺達『神』でした。)

「ですが、作る者が不安に成るのは得策ではありませんね。」
ぶわっと、目の前に立体的なシンデレラ城が浮かび上がる。
「「「おおっ!! 」」」
俺とマックス王子とボブさんが、それを見て声を上げた。
「そして、失礼。」
お姉さんはマックス王子の額に人差し指と中指をあてた。
ぶわっと、崩れた城が立体的に浮かび上がる。
「これは、」
「私達の城。」
ボブさんとマックス王子が言った。
(へー。こうなっていたのか。)
小屋と厨房への移動で外に出てただけだったので全体像が始めて解りました。下の城壁の上に崩れた城? 殆ど崩れている。小屋から見ると割とツンツンが残っているけど反対側は崩れてありません。所々、大きなヒビも入っているしこりゃ危ない。早く直さなくては。
「この城壁にシンデレラ城を乗せて、作りましょう。」
立体映像が重なる。
「投影の魔術ですか。」
「此処まではっきりしたのは、初めて見る。」
マックス王子とボブさんが感心している。しかしお姉さんは崩れた城を見たことがないはずだが。
「私の記憶を見たのですか? 」
恥ずかしそうにマックス王子がお姉さんに聞いている。
「ええ、でもお城の事だけですから安心して下さい。」

(何ですと!? 記憶を見る? 神、神ですか!! あ、神でした。)
ついつい神であることを忘れてしまう。だって普通の人のように接してくれるんだもの。後では弟さんのひとりが立ったまま爆睡してるし、もうひとりは手持ち無沙汰で『プチプチ』潰してるし。ほら、あれ荷物が壊れないように入れてるあの『プチプチ』を。

「このシンデレラ城の時計の塔を無くせば、シンデレラ城ではなくなります。」
(確かに、時計の塔がなくなればシンデレラ城ではありませんね。シンデレラと言えば、ガラスの靴に時計の塔。その塔がなくなればシンデレラ城では無い。これで、文句は言われない。)
「流石です、お姉さん。」
「有り難う御座います、ルーン様。」
お姉さんはとびきりの笑顔で、応えてくれた。


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