【完結】健全な精神は健全な肉体に宿る。

❄️冬は つとめて

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旅の終わりは、

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修行の旅は終わった。

マテック伯爵家の玄関前に馬車が静かに止まった。愛しい娘を待つ母は不安で胸が一杯であった。

「ああ……クロウディア。お願い、クロウディア。」
(お願い、メロディちゃん。)
祈るように母は胸の辺りで手を組んで目を閉じた。クロウディアの初めての女の子との旅行、少しは開花されて女の子らしくなっていて貰いたいと祈っていた。

「ただいま戻りました。お母様。」

「まあ…… 」
なんと言うことでしょう。

そこには素敵な、レディの姿が。

ビフォー
赤い髪をポニーテールにし、母の用意した爽やかなサマードレス着ただけ。

アフター
  赤い髪の両端を上げ緑のリボンで飾り、髪は少しウエーブを施していた。ドレスは母の用意したあのサマードレスであるが、顔は薄化粧が施されている。日除けのようなつばの広い帽子を左手に持ち、馬車から直に飛び降りず使用人の差し出す手をかりてしずしずと降りてくる。

「お母様。」
伯爵夫人は滝のような涙を流した。後ろで控えている侍女達も涙を拭っている。

「お母様。ただいま戻りました。」
使用人の手を離し、右手でスカートを持ち柔らかく淑女の礼をとるクロウディア。

「完璧。完璧よ、クロウディア!! 」
伯爵夫人は嬉しさのあまり娘の手をとった。

「お母様、今までご心配をかけてすみません。」
「いいのよ、いいのよ。こうして、女の子に目覚めてくれたのだから。」
伯爵夫人は娘を抱き締めた。

「「「宜しゅう御座いました。奥様。」」」
と、後ろに控える侍女達も感涙する。

「お母様、私は目覚めたのです。女性は男性とは違う強さがあると。」
「………えっ? 」
母は、顔を上げた。

「女性も体力……いえ、日々精神力を鍛える修行をしていることに。」
「………えっ? 」
母は、首を傾げた。後ろの侍女達も同。

「日々の精神修行、買い物にエステ。ドレスは鎧、礼儀作法は盾、言葉は剣。そして、社交界は戦場。私は無知でした。」
「………えっ? 」
(この子は何を言ってるの? 確かに社交界は女性にとって戦場ですけど。)
母は、首を傾げた。後ろの侍女達も同。

「私は言葉で相手を斬れるお母様のようになりたい。ですが、父上のような強い騎士にもなりたいのです。」
「………えっ? 」
母は、後ろに控える侍女達を見た。侍女達も婦人を見る。

(……… )
(((……… )))
クロウディアに振り返る。

「買い物には、付き合ってくれるの? 」
「精神修行、お付き合い致しますお母様。」
夫人は、後ろに控える侍女達を見た。侍女達も婦人を見る。
(……… )
(((……… )))

クロウディアに振り返る。眼の前には、淑女として微笑むクロウディアの姿が。見た目は変わったが、中身はあまり変わってはいなかった。

(まあ………見た目はレディですもの、これで殿方も騙せるわ。後は、追々と…… )
(((奥様、ファイト!! )))
婚約者のいないクロウディアの見た目に騙される男性を思って、今は良しとしようと母と侍女達は頷く。

「これもメロディ様のおかげです、お母様。」
「ええ、そうね。」
(見た目だけでも女の子にしてくれたメロディちゃんには感謝しかないわ。流石はメロディちゃん、素晴らしい図々しさだわ。)
夫人はきょろきょろとメロディを探す。カタンと馬車の方から音がした。

「おばさま。」
使用人が手を差し出す。メロディはゆっくりと手を置いて馬車から降りてくる。

「メ、メロディちゃん? 」
「はい、おばさま。」
ストローベリーブロンドの髪を靡かせ、
可愛らしい笑顔で伯爵夫人に返事をする。馬車から降りてくるメロディに目を見張る。後ろに控える侍女達も、メロディを見て目を見張った。

なんと言うことでしょう。

メロディの着ている可愛らしいピンクのサマードレスは、パンパンに伸びていた。



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