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楽しい旅行。
旅の終わりと新婚旅行。
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エリシアの同僚の説得がきき、リョウとシエリアの婚約が決まった。
喜びに盛り上がる女性陣と涙にくれる父。
娘をオオカミに取られる悲しみか、はたまた肋骨がぽっきーん痛みか。
「なんか、勢いで婚約になったような気がする。」
正気に戻ったリョウがエドワードの隣で呟く。
「まさか無かった事にするつもりはないよな。」
「あたりまえだろ、そんなことできるか。」
エドワードの言葉に直ぐに返した。
「それに…… エリちんは元気で可愛いし。」
リョウはエドワードから目を逸らしながら呟く。その言葉にエドワードは安心する。
「それに、後5年もすればエリちんもりっぱなお姉様になるはずさ! 」
「いや、無理だろう。」
夢を見るリョウにエドワードは心底から思って突っ込んだ。
「無理じゃない! 人は日々成長をしてるんだ、5年にはりっぱなお姉様に!! 」
「うほほーーい! エリちん、りっぱな淑女になる!! 」
リョウの声にシエリアが声を上げ、二人はハイタッチをする。
「そしてリョウちんは、りっぱなたっぷんたっぷんに!! 」
「ならない!! 」
5年後のたっぷんたっぷんのリョウのお腹を想像するシエリア。
「たっぷんたっぷん! 」
「ならない!! 」
「なるもん! お父さまのお腹のように、たっぷんたっぷんに!! 」
二人は言い張った。
そうシエリアはお父様のお腹のたっぷんたっぷんが、大好きであった。
「シエリア…… 」
娘の言葉に感動して父は涙を流した。
「たっぷんたっぷん! 」
「ならない! 」
「たっぷんたっぷん! 」
「いいか! たっぷんたっぷんになったら、一緒に走ったりして遊べないんだぞ!! 」
リョウは指摘しする。
「が、がーーーん!! 」
シエリアは声に出して自分の気持ちを表した。
父のたっぷんたっぷんは大好きだ、だがリョウと走り回ったり木に登ったりできなくなるのは辛い。シエリアは、葛藤するのであった。
はち切れるほどの元気の発散は、父のたっぷんたっぷんより上である。
軍配はリョウに上がった。
シエリアは静かにリョウの腕を勝利を表すように持ち上げた。
「待て、シエリア! たっぷんたっぷんの父も動け、ウッ!! 」
動こうとした父は胸を押さえて、その場に膝から崩れ落ちた。
ポタポタと垂れる血。
「きゃーー!! お父様!! 」
「あなた!! 」
「お父さま~~!! 」
そのまま父は馬車に乗って、病院へ再入院した。
「あれ、シガレッス父の演技じゃなかったんだな…… 」
「……… 」
リョウは時々シガレッス父の胸を押さえてエドワード達の邪魔する仕草を演技だと思っていた。
だが手術、再入院をするほどの騒ぎになった。
「無理してたんだな。」
「……… 」
(ぽーっきーんが、何処かにグサッと刺さったんだな。)
有り難いことに、骨はグサッと内蔵ではなく皮膚をさいて飛び出していた。
楽しい旅行はエドワードとエリシアの愛を確かめ、リョウとシエリアの婚約に至った。
そして、シュガレッス父と母を病院に残し旅行は終わった。
絶対安静三ヵ月の父の入院。
二組のカップルは、邪魔する者が病院に封印され大いにデートを楽しんだ。
そして一年後。
海の見える小高い丘の中腹に一組のカップルが立っていた。
潮風が女性のさらさらの金髪を撫でる。
「きれい…… 」
「君の方がずっと…… 」
傍らに寄り添う男性は女性を見つめながら呟いた。優しい瞳が女性を見詰める。
二人の手には結婚指輪が光る。
エリシアとエドワードは結婚して、初めて旅行に行った思い出の場所に降り立った。
新婚旅行である。
あの時と同じように、楽しそうに無邪気に丘滑りをして遊んでいる子供達が眼の前を通り過ぎる。
「きゃ~、たのし~~!! 」
柔らかな金髪をしたシエリアも。
「いけ、マッハGOGO!!」
黒髪のリョウも滑り降りている。
「「……… 」」
二人は子供達に混じり、無邪気に丘滑りをしているシエリアとリョウを見た。
「……ごめんなさい、シエリアが。」
「いや、なんとなくこうなるのではと…… 」
二人は困ったように微笑みあった。
別に二人は付いてきたのではない。彼らにとっても、思い出の場所である。
二組のカップルは同時に結婚式をあげ、同時に新婚旅行へと旅だった。それが、思い出の場所だっただけである。
無邪気に子供達と遊ぶ童顔のカップル。あの時と変わらない景色。
いや、ただ一つ変わっている物、丘の下に等身大の女神像が立っていた。
美しい女神像が、ドレスの隙間から美しい御御足を出し丸い物を踏んでいる姿。ハイヒールを履いた女神像の踵が、丸い物に刺さっている。
熱心に女神像へ祈りを捧げている女性達。手にはハイヒールの踵が丸い物に突き刺さっているキーホルダーを持っている。
それは女神像の御守であった。
霊験あらたかな女神は、この地にいた酷い男に天罰を与え再起不能にしたと言う。
御守を持つ女性達、彼女等は女神像に祈る。別れたい男や酷い男の天罰を祈って。
「エリシア、行こう。」
エドワードは手を差し出した。
「ええ、エドワード。」
エリシアは手を取る。
二人は微笑みながら手を繋ぎ、星降る丘へと歩いて行くのであった。
【完】
「ねえ、ねえ、リョウちん。この女神さま、シアに似てない? 」
シエリアは等身大の女神像を見ながらリョウに話しかける。
「………ああ、そうだな。」
エリシアに似た女神像が、丸い玉をハイヒールで突き刺している。
リョウは悟ったように微笑んだ。
柔らかい海風が、リョウとシエリアの間を吹き抜けた。
喜びに盛り上がる女性陣と涙にくれる父。
娘をオオカミに取られる悲しみか、はたまた肋骨がぽっきーん痛みか。
「なんか、勢いで婚約になったような気がする。」
正気に戻ったリョウがエドワードの隣で呟く。
「まさか無かった事にするつもりはないよな。」
「あたりまえだろ、そんなことできるか。」
エドワードの言葉に直ぐに返した。
「それに…… エリちんは元気で可愛いし。」
リョウはエドワードから目を逸らしながら呟く。その言葉にエドワードは安心する。
「それに、後5年もすればエリちんもりっぱなお姉様になるはずさ! 」
「いや、無理だろう。」
夢を見るリョウにエドワードは心底から思って突っ込んだ。
「無理じゃない! 人は日々成長をしてるんだ、5年にはりっぱなお姉様に!! 」
「うほほーーい! エリちん、りっぱな淑女になる!! 」
リョウの声にシエリアが声を上げ、二人はハイタッチをする。
「そしてリョウちんは、りっぱなたっぷんたっぷんに!! 」
「ならない!! 」
5年後のたっぷんたっぷんのリョウのお腹を想像するシエリア。
「たっぷんたっぷん! 」
「ならない!! 」
「なるもん! お父さまのお腹のように、たっぷんたっぷんに!! 」
二人は言い張った。
そうシエリアはお父様のお腹のたっぷんたっぷんが、大好きであった。
「シエリア…… 」
娘の言葉に感動して父は涙を流した。
「たっぷんたっぷん! 」
「ならない! 」
「たっぷんたっぷん! 」
「いいか! たっぷんたっぷんになったら、一緒に走ったりして遊べないんだぞ!! 」
リョウは指摘しする。
「が、がーーーん!! 」
シエリアは声に出して自分の気持ちを表した。
父のたっぷんたっぷんは大好きだ、だがリョウと走り回ったり木に登ったりできなくなるのは辛い。シエリアは、葛藤するのであった。
はち切れるほどの元気の発散は、父のたっぷんたっぷんより上である。
軍配はリョウに上がった。
シエリアは静かにリョウの腕を勝利を表すように持ち上げた。
「待て、シエリア! たっぷんたっぷんの父も動け、ウッ!! 」
動こうとした父は胸を押さえて、その場に膝から崩れ落ちた。
ポタポタと垂れる血。
「きゃーー!! お父様!! 」
「あなた!! 」
「お父さま~~!! 」
そのまま父は馬車に乗って、病院へ再入院した。
「あれ、シガレッス父の演技じゃなかったんだな…… 」
「……… 」
リョウは時々シガレッス父の胸を押さえてエドワード達の邪魔する仕草を演技だと思っていた。
だが手術、再入院をするほどの騒ぎになった。
「無理してたんだな。」
「……… 」
(ぽーっきーんが、何処かにグサッと刺さったんだな。)
有り難いことに、骨はグサッと内蔵ではなく皮膚をさいて飛び出していた。
楽しい旅行はエドワードとエリシアの愛を確かめ、リョウとシエリアの婚約に至った。
そして、シュガレッス父と母を病院に残し旅行は終わった。
絶対安静三ヵ月の父の入院。
二組のカップルは、邪魔する者が病院に封印され大いにデートを楽しんだ。
そして一年後。
海の見える小高い丘の中腹に一組のカップルが立っていた。
潮風が女性のさらさらの金髪を撫でる。
「きれい…… 」
「君の方がずっと…… 」
傍らに寄り添う男性は女性を見つめながら呟いた。優しい瞳が女性を見詰める。
二人の手には結婚指輪が光る。
エリシアとエドワードは結婚して、初めて旅行に行った思い出の場所に降り立った。
新婚旅行である。
あの時と同じように、楽しそうに無邪気に丘滑りをして遊んでいる子供達が眼の前を通り過ぎる。
「きゃ~、たのし~~!! 」
柔らかな金髪をしたシエリアも。
「いけ、マッハGOGO!!」
黒髪のリョウも滑り降りている。
「「……… 」」
二人は子供達に混じり、無邪気に丘滑りをしているシエリアとリョウを見た。
「……ごめんなさい、シエリアが。」
「いや、なんとなくこうなるのではと…… 」
二人は困ったように微笑みあった。
別に二人は付いてきたのではない。彼らにとっても、思い出の場所である。
二組のカップルは同時に結婚式をあげ、同時に新婚旅行へと旅だった。それが、思い出の場所だっただけである。
無邪気に子供達と遊ぶ童顔のカップル。あの時と変わらない景色。
いや、ただ一つ変わっている物、丘の下に等身大の女神像が立っていた。
美しい女神像が、ドレスの隙間から美しい御御足を出し丸い物を踏んでいる姿。ハイヒールを履いた女神像の踵が、丸い物に刺さっている。
熱心に女神像へ祈りを捧げている女性達。手にはハイヒールの踵が丸い物に突き刺さっているキーホルダーを持っている。
それは女神像の御守であった。
霊験あらたかな女神は、この地にいた酷い男に天罰を与え再起不能にしたと言う。
御守を持つ女性達、彼女等は女神像に祈る。別れたい男や酷い男の天罰を祈って。
「エリシア、行こう。」
エドワードは手を差し出した。
「ええ、エドワード。」
エリシアは手を取る。
二人は微笑みながら手を繋ぎ、星降る丘へと歩いて行くのであった。
【完】
「ねえ、ねえ、リョウちん。この女神さま、シアに似てない? 」
シエリアは等身大の女神像を見ながらリョウに話しかける。
「………ああ、そうだな。」
エリシアに似た女神像が、丸い玉をハイヒールで突き刺している。
リョウは悟ったように微笑んだ。
柔らかい海風が、リョウとシエリアの間を吹き抜けた。
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