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婚約者は、妹を選ぶ。(本編)
エリシアとシエリア。
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ぱたぱたとピンクのドレスを持ち上げて駆け足で走る令嬢。ふわりとした金の髪がふわふわと揺れている。
「エドワードさま~ 」
猫なで声を出して、エドワード彼の腕にしがみつく令嬢。
「ああ、エリー。」
彼エドワードはしがみついて来た令嬢に微笑み、挨拶をする。しがみつかれた腕を振り解こうともせずに。
「シア…… こんにちは。」
エドワードは困ったような笑顔をもう一人、扉から入って来た令嬢に向ける。
彼女はエリシア・シュガレス。目の前で仲睦まじくしているのは令嬢は双子の妹シエリアと、彼女エリシアの婚約者と成るべく縁談中の男性だ。
エリシアとシエリアは双子でよく似ているが、ふわりとした髪のシエリアとストレートのエリシア。シエリアは子供っぽい顔でエリシアは大人っぽい顔をしているので、双子と言うより年離れた姉妹によく見られていた。
「殿方は、やっぱり可愛い女性が好きなのね。」
お茶の席で目の前でイチャつく二人をエリシアは悲しそうに見ていた。
1か月前、婚約者の顔見せとして現れたエドワードにエリシアはひと目で恋に落ちた。
「エドワード・フォン・ソルトミルです。」
エドワードは爽やかにエリシアに微笑んだ。さらりとした茶髪が流れに茶色の瞳が煌く。
父親から進められた縁談であった。夫妻共に他の家へのお誘いの為立ち会えなかったが、成人同士だから問題ないだろうとこの日に決まったのだ。
爽やかな日の日曜日。
「わ、私は、 」
エリシア頬を染めて挨拶をしようとクリーム色のスカートを持ち上げた。その時、扉が開きシエリアが入って来た。
「エドワードさま~、わたしはエリー。よろしくね。」
シエリアは甘えるようにエリシアの婚約者になる筈のエドワードの腕にしがみついた。空色のドレスがふわりと揺れた。
エドワードは驚いたように目を開き、エリシアの方を見てがっかりしたように微笑んだ。
「シア、ひど~い。一緒に挨拶しようって、約束したのに~ ひとりで行くなんて~ 」
片腕をエドワードに絡ませながら、可愛らしくぷんぷんと怒るシエリアにエリシアは俯いた。
可愛らしい仕草は子供っぽいシエリアには似合っていて、男性は庇護欲をそそる彼女に好意を持つのだ。大人っぽいエリシアよりも。
「婚約話が来た時からずっと会いたかったの~ わたしはエリーと呼んでね、エドワードさま~ 」
「エリー…… 」
「きゃ、うれし~~ 」
顔とは別に豊満な胸をエドワードの腕に押し付ける。
可愛らしい顔と豊満な胸に大抵の男はシエリアにころっと落とされるのである。
エリシアは寂しい自分の胸を祈るような仕草で隠した。
がっかりして困ったようにエリシアを見るエドワード。
「私は…… 」
エリシアは目を逸らすように俯いた。
「彼女はシアよ。シアて、呼んであげて。」
「シア…… 」
押し黙るエリシアに代わってシエリアが紹介をする。
エドワードの声に顔をあげると、彼は困ったようにエリシアに微笑んだ。
「エドワードさま~ お茶にしましょ~ 」
エリシアはぐいぐいとエドワードを引っ張ってお茶の席へと連れて行ってしまう。
後に残されたエリシアはその姿を哀しそうに見つめていた。
その後の一週間に一度の語らいのお茶の席には必ずシエリアが同行してエドワードにすがりより、そして彼も窘める事なくそのままにしていた。
時々見せるエドワードの困ったような笑顔に、エリシアは何も言えずに俯くだけだった。
そしてエリシアは思うのだ、
「きっと、エドワード様はシエリアを選ぶわ。」
婚約者の交代を。
「エドワードさま~ 」
猫なで声を出して、エドワード彼の腕にしがみつく令嬢。
「ああ、エリー。」
彼エドワードはしがみついて来た令嬢に微笑み、挨拶をする。しがみつかれた腕を振り解こうともせずに。
「シア…… こんにちは。」
エドワードは困ったような笑顔をもう一人、扉から入って来た令嬢に向ける。
彼女はエリシア・シュガレス。目の前で仲睦まじくしているのは令嬢は双子の妹シエリアと、彼女エリシアの婚約者と成るべく縁談中の男性だ。
エリシアとシエリアは双子でよく似ているが、ふわりとした髪のシエリアとストレートのエリシア。シエリアは子供っぽい顔でエリシアは大人っぽい顔をしているので、双子と言うより年離れた姉妹によく見られていた。
「殿方は、やっぱり可愛い女性が好きなのね。」
お茶の席で目の前でイチャつく二人をエリシアは悲しそうに見ていた。
1か月前、婚約者の顔見せとして現れたエドワードにエリシアはひと目で恋に落ちた。
「エドワード・フォン・ソルトミルです。」
エドワードは爽やかにエリシアに微笑んだ。さらりとした茶髪が流れに茶色の瞳が煌く。
父親から進められた縁談であった。夫妻共に他の家へのお誘いの為立ち会えなかったが、成人同士だから問題ないだろうとこの日に決まったのだ。
爽やかな日の日曜日。
「わ、私は、 」
エリシア頬を染めて挨拶をしようとクリーム色のスカートを持ち上げた。その時、扉が開きシエリアが入って来た。
「エドワードさま~、わたしはエリー。よろしくね。」
シエリアは甘えるようにエリシアの婚約者になる筈のエドワードの腕にしがみついた。空色のドレスがふわりと揺れた。
エドワードは驚いたように目を開き、エリシアの方を見てがっかりしたように微笑んだ。
「シア、ひど~い。一緒に挨拶しようって、約束したのに~ ひとりで行くなんて~ 」
片腕をエドワードに絡ませながら、可愛らしくぷんぷんと怒るシエリアにエリシアは俯いた。
可愛らしい仕草は子供っぽいシエリアには似合っていて、男性は庇護欲をそそる彼女に好意を持つのだ。大人っぽいエリシアよりも。
「婚約話が来た時からずっと会いたかったの~ わたしはエリーと呼んでね、エドワードさま~ 」
「エリー…… 」
「きゃ、うれし~~ 」
顔とは別に豊満な胸をエドワードの腕に押し付ける。
可愛らしい顔と豊満な胸に大抵の男はシエリアにころっと落とされるのである。
エリシアは寂しい自分の胸を祈るような仕草で隠した。
がっかりして困ったようにエリシアを見るエドワード。
「私は…… 」
エリシアは目を逸らすように俯いた。
「彼女はシアよ。シアて、呼んであげて。」
「シア…… 」
押し黙るエリシアに代わってシエリアが紹介をする。
エドワードの声に顔をあげると、彼は困ったようにエリシアに微笑んだ。
「エドワードさま~ お茶にしましょ~ 」
エリシアはぐいぐいとエドワードを引っ張ってお茶の席へと連れて行ってしまう。
後に残されたエリシアはその姿を哀しそうに見つめていた。
その後の一週間に一度の語らいのお茶の席には必ずシエリアが同行してエドワードにすがりより、そして彼も窘める事なくそのままにしていた。
時々見せるエドワードの困ったような笑顔に、エリシアは何も言えずに俯くだけだった。
そしてエリシアは思うのだ、
「きっと、エドワード様はシエリアを選ぶわ。」
婚約者の交代を。
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