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婚約者は、妹を選ぶ。(本編)
同僚とエドワード。
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「で、玄関先で帰ったと? 」
呆れた顔で同僚は聞き返した。
「仕方がないだろう!! 彼女があまりにも可愛くって、あのままいたら縁談相手に何を言い出すか分からなかったんだ!! 」
エドワードは頭を抱えて机の上に伏せた。机の上の書類が床にバサバサと落ちる。
「おい、落ちたぞ。」
同僚に指摘されて、エドワードは書類を拾うために机から離れた。
「しかしなんだな。何故、その妹さんは其処にいるんだ? 」
同僚の指摘にピタリと書類を拾う手が止まった。
「姉妹だからだろ? 」
「いや、いや、いや、縁談場所に姉妹だからて、来るか? 」
「親がいなかったから、代わりだろ。」
「いや、いや、いや、最初は分かるが? 二度目は必要ないだろう。」
(初回も必要ないだろう、二人共成人しているんだし。)
変だな、と同僚は首を傾げた。
「その妹さん、お前に気があるんじゃないのか? 」
「お、俺に、気が!! 」
エドワードの顔が一瞬にして真っ赤になり、だらしなく顔を歪ませた。
「……… 」
嬉しそうに顔を歪ませるエドワードに同僚はムカッいた。
「それか、姉妹仲が悪いか飛んだアバズレか。」
「アバズレである訳ないだろ!! 彼女は可憐で、可愛らしく!! 声も柔らかくだな、会った事もないのに彼女の何が分かるんだ!! 」
「お前だって、ニ回しか会ってないだろ。ニ回目は、直に逃げ出したくせに。それで、その妹さんの何が分かるんだ? 」
同僚の的確な反論にエドワードはその場の床に手をついた。
「仕方がないだろう…… 彼女があまりにも可愛くって、俺の理性が崩壊寸前だったんだ…… くっ!! 」
初回の顔合わせもエドワードは30分もその場に居ることはできなかった。
エドワードは体を震わせ腕で両目をおさえた。男泣きだ。
(おっ、コイツぽんこつだ。)
まさか恋愛に関してエドワードが此処までぽんこつになるとは同僚は思わなかった。
(いや、待て…… 俺もこんな感じなのか? だとしたら…… )
恋多き自分もエドワードに話を聞いてもらい、一喜一憂しているのかと思うと同僚は恥ずかしくなった。つい同情でエドワードに優しく接してしまう。
「縁談、断るんだろ。」
「ああ、仲の良い姉妹を壊すことはできない。」
エドワードは床に手を付き項垂れている。同僚も彼に寄り添い床に膝をついた。
「縁談相手もいい子なんだ。彼女に出て行けとか言わない優しい子だ。だからこそ、邪険にできない。」
「そっか…… 」
いっそ妹を罵るような縁談相手なら、エドワードもこれ程罪の意識を持たなかったかも知れない。
「会えても後、二度とほどだ…… 応えを、出さないといけない。」
縁談のお試し期間の顔合わせは、三・四度ほど。それが終れば結婚への意思表示を示さねばならない。
縁談相手より妹に心を奪われたなど言えるはずもない。其れは縁談相手を大いに傷つける事になる。
断るしかない縁談。
諦めるしかない恋。
だからこそ後二回しかない会えない事を、許して欲しいとエドワードは縁談相手に心から詫びていた。
「俺は最低な男だ。」
心で侘びながらも彼女に会える事に喜びを感じている。
「それほど自分を卑下するな。」
同僚は優しくエドワードの肩に手を置いた。そして手元に集められている書類を手に取り立ち上がる。
「まあ、仕事でもして気を紛らわせろ。」
持ち上げた書類をエドワードの机の上に戻す。ぽんぽんと書類を叩いた。
エドワードは顔をあげゆっくりと立ち上がった。
「俺は…… 」
苦しそう首を振るエドワード。
「俺は最低な、男なんだーー!! 」
叫びながらぽんこつは部屋を走りながら出て行く。
「おい待て!! エドワード!! 」
同僚は叫び、呼び止めた。後を追ってドアを出ると既に米粒の大きさだ。
「この仕事どうするんだ!! 帰ってこーーい、エドワード!! 」
虚しく廊下に同僚の声が響いた。
仕事は夜中近くまでかかったそうだ。
呆れた顔で同僚は聞き返した。
「仕方がないだろう!! 彼女があまりにも可愛くって、あのままいたら縁談相手に何を言い出すか分からなかったんだ!! 」
エドワードは頭を抱えて机の上に伏せた。机の上の書類が床にバサバサと落ちる。
「おい、落ちたぞ。」
同僚に指摘されて、エドワードは書類を拾うために机から離れた。
「しかしなんだな。何故、その妹さんは其処にいるんだ? 」
同僚の指摘にピタリと書類を拾う手が止まった。
「姉妹だからだろ? 」
「いや、いや、いや、縁談場所に姉妹だからて、来るか? 」
「親がいなかったから、代わりだろ。」
「いや、いや、いや、最初は分かるが? 二度目は必要ないだろう。」
(初回も必要ないだろう、二人共成人しているんだし。)
変だな、と同僚は首を傾げた。
「その妹さん、お前に気があるんじゃないのか? 」
「お、俺に、気が!! 」
エドワードの顔が一瞬にして真っ赤になり、だらしなく顔を歪ませた。
「……… 」
嬉しそうに顔を歪ませるエドワードに同僚はムカッいた。
「それか、姉妹仲が悪いか飛んだアバズレか。」
「アバズレである訳ないだろ!! 彼女は可憐で、可愛らしく!! 声も柔らかくだな、会った事もないのに彼女の何が分かるんだ!! 」
「お前だって、ニ回しか会ってないだろ。ニ回目は、直に逃げ出したくせに。それで、その妹さんの何が分かるんだ? 」
同僚の的確な反論にエドワードはその場の床に手をついた。
「仕方がないだろう…… 彼女があまりにも可愛くって、俺の理性が崩壊寸前だったんだ…… くっ!! 」
初回の顔合わせもエドワードは30分もその場に居ることはできなかった。
エドワードは体を震わせ腕で両目をおさえた。男泣きだ。
(おっ、コイツぽんこつだ。)
まさか恋愛に関してエドワードが此処までぽんこつになるとは同僚は思わなかった。
(いや、待て…… 俺もこんな感じなのか? だとしたら…… )
恋多き自分もエドワードに話を聞いてもらい、一喜一憂しているのかと思うと同僚は恥ずかしくなった。つい同情でエドワードに優しく接してしまう。
「縁談、断るんだろ。」
「ああ、仲の良い姉妹を壊すことはできない。」
エドワードは床に手を付き項垂れている。同僚も彼に寄り添い床に膝をついた。
「縁談相手もいい子なんだ。彼女に出て行けとか言わない優しい子だ。だからこそ、邪険にできない。」
「そっか…… 」
いっそ妹を罵るような縁談相手なら、エドワードもこれ程罪の意識を持たなかったかも知れない。
「会えても後、二度とほどだ…… 応えを、出さないといけない。」
縁談のお試し期間の顔合わせは、三・四度ほど。それが終れば結婚への意思表示を示さねばならない。
縁談相手より妹に心を奪われたなど言えるはずもない。其れは縁談相手を大いに傷つける事になる。
断るしかない縁談。
諦めるしかない恋。
だからこそ後二回しかない会えない事を、許して欲しいとエドワードは縁談相手に心から詫びていた。
「俺は最低な男だ。」
心で侘びながらも彼女に会える事に喜びを感じている。
「それほど自分を卑下するな。」
同僚は優しくエドワードの肩に手を置いた。そして手元に集められている書類を手に取り立ち上がる。
「まあ、仕事でもして気を紛らわせろ。」
持ち上げた書類をエドワードの机の上に戻す。ぽんぽんと書類を叩いた。
エドワードは顔をあげゆっくりと立ち上がった。
「俺は…… 」
苦しそう首を振るエドワード。
「俺は最低な、男なんだーー!! 」
叫びながらぽんこつは部屋を走りながら出て行く。
「おい待て!! エドワード!! 」
同僚は叫び、呼び止めた。後を追ってドアを出ると既に米粒の大きさだ。
「この仕事どうするんだ!! 帰ってこーーい、エドワード!! 」
虚しく廊下に同僚の声が響いた。
仕事は夜中近くまでかかったそうだ。
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