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婚約者は、妹を選ぶ。(本編)
エリシアとエドワード。
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「ようこそ、おいでくださいました、エドワード様。」
馬車が止まると玄関先で待っていたエリシアが降りてきたエドワードに挨拶をする。
さらさらと流れる金髪に若草色の爽やかなドレスを着たエリシアに、エドワードは一瞬目を見張った。慎ましく可憐に挨拶をするエリシア。
エリシアを目に止め、エドワードはあたりをきょろきょろと見回す。
(ああ…… エリーを探しているのね。)
エリシアは少し悲しくなった。
「こ、これを…… 」
ゴソゴソと馬車から可愛らしい花束を取り出すとエリシアに差し出す。
「これを私に? 」
「ああ、受け取ってもらえるかな…… 」
「うれしいです、ありがとうございます!! 」
エリシアは花開くように微笑んだ。
「あ、いや。喜んで貰えて嬉しい、です。」
エドワードは茶色の髪を掻きながら、茶色の瞳を漂わせた。
「あの…… このプレゼントも、ありがとうございます。」
エリシアはエドワードから届いたプレゼントのネックレスに手を置いた。小さな可愛らしい花の形のネックレスだ。
「ああ、つけてくれたんだね。記念品。」
「記念品? 」
エリシアは首を傾げた。
「ああ、婚約者以外の女性にプレゼントを贈るのは…… その、憚れるから。記念品なら贈っても、いいだろうと…… 思って。」
エドワードは、都合のいいことをエリシアに言った。
(ああ、やっぱりシエリアにプレゼントを贈りたくて。)
エリシア俯いた。
「ええ、そうですね。婚約者でもない女性にプレゼントを贈るのは、よくないですわ。」
「や、やはり、そうですね…… 」
困ったように微笑むエドワードに、居心地悪そうなエリシア。
その時、
「受けとめて、エドワードさま~!! 」
「えっ!? 」
「キャーーーアァ!! エリーー!! 」
シエリアが降って来た。
エリシア青ざめ悲鳴をあげ、エドワードは手を手を広げてシエリアを受け止めた。
エドワードの顔にシエリアの脂肪がぶつかってクッションとなり彼女無傷、エドワードはシエリアの重さに尻もちをついた。
「きゃ~ エドワードさま~ 受けとめてくれて、ありがとう~ 」
地に転がるエドワードに覆いかぶさるように縋り付くシエリア。
シエリアが助かって良かったと思う気持と、目の前で二人がイチャつく姿に複雑な表情をするエリシア。それを目にしたエドワードは気まずそうに言った。
「取り敢えず、立とう。ドレスが汚れるよ。」
シエリアの可愛らしいピンクのドレスを気遣うふりをして彼女を放した。
「しかし、どうして上から? 」
立ち上がったエドワードは不思議そうにシエリアに聞く。
「ドアが開かなかったから、窓から出ちゃった。テヘッ。」
「窓から? 危ないな。」
そう、シエリアはドアに鍵をかけられたので窓から出てきたのだ。シエリアの部屋は三階で、母はまさか彼女が飛び降りるとは思わなかった。これを知ったら母は、今度は窓のない地下に彼女を閉じ込めるだろう。
シエリアは窓から出ると使用人に見つからないよう外をつたって玄関まできて、エドワードを見つけて三階から飛び降りたのだ。
使用人達も、今更羽交い締めにしてシエリアをエドワードから引き離し閉じ込めるなとできず見守るしかなかった。
下手に動けば『虐待か?』と思われるかもしれないからだ。
「キャ~ シアの花束かわいい~!! ねぇねぇ、わたしには~ 」
「ああ、もちろんあるよ。」
馬車から取り出すとシエリアに花束を渡す。その花束はエリシアに渡した花束よりほんの少し大きかった。
(私のより大きい…… )
縁談相手の自分よりほんの少し大きい花束にエリシア傷つく。先程エドワードはネックレスのプレゼントを記念品と呼んだ。婚約者以外の女性にプレゼントを贈るのが憚れるなら、そう思っているのならネックレスのように同じ花束をシエリアに贈って欲しかった。
(世間的にも、縁談相手に気を使うなら少しでも大きい方の花束を渡すよね…… )
自分はそれほど気にかけて貰えないのかと悲しい気持ちになる。
顔をあげて二人を見ると、エドワードと目が合う。彼は困ったように微笑む。
(私を見る時は何時も困ったように微笑むのね。)
エリシアが彼を見ると、エドワードは何時も困ったように自分に微笑むのだ。
「その…… エリー、かなり近いと思うんだか…… 」
「普通、普通、今どき普通よ~ 」
シエリアはエドワードが近いと窘めても近づくことをやめない。言えば言うほど面白そうにシエリアは彼にしがみつく。
「その…… こういう事は、やはりよくないと…… 」
ちらちらとエリシアを見ながら、窘める。
(そうよね、縁談相手の目の前でイチャつくのは気まずいわよね。)
エドワードと目が合うと、いたたまれず俯いた。
「じゃ、俺はここで。」
「えっ? 」
エドワードの声にエリシア顔をあげる。
「え~~ もう、帰っちゃうの~? 今来たところなのに~ 」
「ああ、すまない。」
エドワードはシエリアから離れると待たしている馬車に乗り込もうとして振り向いた。
「それじゃ、また来週…… 」
エドワードはシエリアを見て、エリシアへと目を止めて言った。
「あ、はい。」
エリシアは、つい返事をして来週も会う約束をしてしまった。
エドワードはほっとしたように微笑んで、馬車に飛び乗り帰っていった。
「あ~あ、帰っちゃった~ 修行僧のようで、エドワードさま~ 面白いのに~ 」
「修行僧? 」
訳が分からずエリシアは首を傾げた。
「また来週会えるから、いいわ~ 」
シエリアは楽しそうにお茶の準備をしている場所に向かって歩き出した。
「来週…… 」
(またエドワード様は、シエリアに会いに来るのね。)
エリシアは馬車が去っていった後を振り返り、シエリアを追って歩き出した。
馬車が止まると玄関先で待っていたエリシアが降りてきたエドワードに挨拶をする。
さらさらと流れる金髪に若草色の爽やかなドレスを着たエリシアに、エドワードは一瞬目を見張った。慎ましく可憐に挨拶をするエリシア。
エリシアを目に止め、エドワードはあたりをきょろきょろと見回す。
(ああ…… エリーを探しているのね。)
エリシアは少し悲しくなった。
「こ、これを…… 」
ゴソゴソと馬車から可愛らしい花束を取り出すとエリシアに差し出す。
「これを私に? 」
「ああ、受け取ってもらえるかな…… 」
「うれしいです、ありがとうございます!! 」
エリシアは花開くように微笑んだ。
「あ、いや。喜んで貰えて嬉しい、です。」
エドワードは茶色の髪を掻きながら、茶色の瞳を漂わせた。
「あの…… このプレゼントも、ありがとうございます。」
エリシアはエドワードから届いたプレゼントのネックレスに手を置いた。小さな可愛らしい花の形のネックレスだ。
「ああ、つけてくれたんだね。記念品。」
「記念品? 」
エリシアは首を傾げた。
「ああ、婚約者以外の女性にプレゼントを贈るのは…… その、憚れるから。記念品なら贈っても、いいだろうと…… 思って。」
エドワードは、都合のいいことをエリシアに言った。
(ああ、やっぱりシエリアにプレゼントを贈りたくて。)
エリシア俯いた。
「ええ、そうですね。婚約者でもない女性にプレゼントを贈るのは、よくないですわ。」
「や、やはり、そうですね…… 」
困ったように微笑むエドワードに、居心地悪そうなエリシア。
その時、
「受けとめて、エドワードさま~!! 」
「えっ!? 」
「キャーーーアァ!! エリーー!! 」
シエリアが降って来た。
エリシア青ざめ悲鳴をあげ、エドワードは手を手を広げてシエリアを受け止めた。
エドワードの顔にシエリアの脂肪がぶつかってクッションとなり彼女無傷、エドワードはシエリアの重さに尻もちをついた。
「きゃ~ エドワードさま~ 受けとめてくれて、ありがとう~ 」
地に転がるエドワードに覆いかぶさるように縋り付くシエリア。
シエリアが助かって良かったと思う気持と、目の前で二人がイチャつく姿に複雑な表情をするエリシア。それを目にしたエドワードは気まずそうに言った。
「取り敢えず、立とう。ドレスが汚れるよ。」
シエリアの可愛らしいピンクのドレスを気遣うふりをして彼女を放した。
「しかし、どうして上から? 」
立ち上がったエドワードは不思議そうにシエリアに聞く。
「ドアが開かなかったから、窓から出ちゃった。テヘッ。」
「窓から? 危ないな。」
そう、シエリアはドアに鍵をかけられたので窓から出てきたのだ。シエリアの部屋は三階で、母はまさか彼女が飛び降りるとは思わなかった。これを知ったら母は、今度は窓のない地下に彼女を閉じ込めるだろう。
シエリアは窓から出ると使用人に見つからないよう外をつたって玄関まできて、エドワードを見つけて三階から飛び降りたのだ。
使用人達も、今更羽交い締めにしてシエリアをエドワードから引き離し閉じ込めるなとできず見守るしかなかった。
下手に動けば『虐待か?』と思われるかもしれないからだ。
「キャ~ シアの花束かわいい~!! ねぇねぇ、わたしには~ 」
「ああ、もちろんあるよ。」
馬車から取り出すとシエリアに花束を渡す。その花束はエリシアに渡した花束よりほんの少し大きかった。
(私のより大きい…… )
縁談相手の自分よりほんの少し大きい花束にエリシア傷つく。先程エドワードはネックレスのプレゼントを記念品と呼んだ。婚約者以外の女性にプレゼントを贈るのが憚れるなら、そう思っているのならネックレスのように同じ花束をシエリアに贈って欲しかった。
(世間的にも、縁談相手に気を使うなら少しでも大きい方の花束を渡すよね…… )
自分はそれほど気にかけて貰えないのかと悲しい気持ちになる。
顔をあげて二人を見ると、エドワードと目が合う。彼は困ったように微笑む。
(私を見る時は何時も困ったように微笑むのね。)
エリシアが彼を見ると、エドワードは何時も困ったように自分に微笑むのだ。
「その…… エリー、かなり近いと思うんだか…… 」
「普通、普通、今どき普通よ~ 」
シエリアはエドワードが近いと窘めても近づくことをやめない。言えば言うほど面白そうにシエリアは彼にしがみつく。
「その…… こういう事は、やはりよくないと…… 」
ちらちらとエリシアを見ながら、窘める。
(そうよね、縁談相手の目の前でイチャつくのは気まずいわよね。)
エドワードと目が合うと、いたたまれず俯いた。
「じゃ、俺はここで。」
「えっ? 」
エドワードの声にエリシア顔をあげる。
「え~~ もう、帰っちゃうの~? 今来たところなのに~ 」
「ああ、すまない。」
エドワードはシエリアから離れると待たしている馬車に乗り込もうとして振り向いた。
「それじゃ、また来週…… 」
エドワードはシエリアを見て、エリシアへと目を止めて言った。
「あ、はい。」
エリシアは、つい返事をして来週も会う約束をしてしまった。
エドワードはほっとしたように微笑んで、馬車に飛び乗り帰っていった。
「あ~あ、帰っちゃった~ 修行僧のようで、エドワードさま~ 面白いのに~ 」
「修行僧? 」
訳が分からずエリシアは首を傾げた。
「また来週会えるから、いいわ~ 」
シエリアは楽しそうにお茶の準備をしている場所に向かって歩き出した。
「来週…… 」
(またエドワード様は、シエリアに会いに来るのね。)
エリシアは馬車が去っていった後を振り返り、シエリアを追って歩き出した。
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