【完結】私の婚約者は、妹を選ぶ。

❄️冬は つとめて

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楽しい旅行。

楽しい旅行。

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海の見える小高い丘の中腹にエリシアは立っていた。潮風が彼女のさらさらの金髪を撫でる。

「きれい…… 」
「君の方がずっと…… 」
傍らに寄り添うエドワードはエリシアを見つめながら呟いた。優しい瞳がエリシアを見詰める。

楽しそうに無邪気に丘滑りをして遊んでいる子供達が眼の前を通り過ぎる。

「きゃ~、たのし~~!! 」
柔らかな金髪をしたシエリアも。


「「……… 」」
二人は子供達に混じり、無邪気に丘滑りをしているシエリアを見た。

「……ごめんなさい。シエリアが。」
「いや、なんとなくこうなるのではと…… 」
二人は困ったように微笑みあった。


それは一週間前。
今迄のお詫びをかねてエドワードはエリシアを旅行に誘った。

エリシアは嬉しそうに頷いた。
だが、

「駄目だ!! 」
父の反対にあう。

「あなた。」
「お父様。」
「駄目だったら、駄目だ!! 」
父の頑なな、反対だ。

「お父様、旅行と言っても部屋は別だし 」
「あたりまえた!! 嫁入り前の娘に、エドワードあの男!! 」
父は怒りで震えだした。

「人となりが知れて、いい機会だと思いますわ。わたくしは。」
母は旅行に賛成する。結婚してから、性格の不一致など目も当てられない。

「駄目だ、駄目だ!! 」
父は立ち上がった。

「男はオオカミなんだぞ!! 吟遊詩人の二人の女性ピンクのレディさんも歌ってるではないか!! 『この人だけは大丈夫だなんて、うっかり信じたらダメダメダメ、ダメ、ダメダメよ』と!! 」
父は昔流行った歌の歌詞を叫んだ。

「オオカミに食べられたらどうする!! 傷物にされたら、いや殺す!! 食べられる前に、父が殺してやる!! 」
社会的に抹殺、いや闇夜に命の危機かも知れない。

「あなた、いい加減にしなさい!! 」
パシーンと、夫の頭に妻の扇子が炸裂する。

「診ような噂がたったらどうする!! 」
夫は涙目で妻に訴える。

「そうしたら、責任をとって貰いましょうエドワードさんに。婚約なんだし。」
「お父様、結婚まで節度あるお付き合いをするから大丈夫よ。」
旅行を許して貰おうと、エリシアは父を説得する。母は何かあってもエドワードに責任をとらせるから大丈夫だと夫に言い聞かせる。

「信じられるか!! 男はオオカミなんだぞ!! ピンクのレディさんも歌ってるんだぞ!! 」
「あなた!! 」
「絶対、駄目だ!! 旅行なんて、許さないぞ!! 」
叫びながら、夫はその場から逃げ出した。扉の影から顔を出して、再び叫んだ。

「エリシア、父は反対だ!! 絶対に許さないぞ!! 」
そして再び走り去った。

「お父様…… 」
「はぁ…… あの人たら。」
悲しそうに父が出て行った扉を見ながらエリシアは呟いた。

「大丈夫よ、わたくしが説得するから。」
母は優しく微笑むと、扇子をぶんぶんと振りをしだした。力尽くの説得のようだ。

「お母様…… 」


「聞いたわシア、旅行に行くんですって!! 」
「エリー…… 」
父が出て行った扉から代わりにシエリアが飛び込んで来た。

「ひどいわ、シア!! わたしも連れて行って!! 」
シエリアは、縋るようにエリシアにしがみつく。

「ごめんなさい、エリー。今回はエドワード様との旅行なの。」
エリシアはしがみつかれた腕を放すように引き抜こうとした。

「いやーー!! わたしも行く!! 連れてって、連れてって、連れてってーー!! 」
放すまいとより力を込めてエリシアにしがみつく。

「シアだけ、ずるい!! わたしも行きたい!! 連れてって!! 」
「やめなさい、シエリア!! 二人の邪魔をしないって、約束したでしょ!! 」
邪魔それ旅行これは、話が違うわ!! 」
シエリアはエリシアにしがみついたまま母に反論する。

「楽しい旅行、わたしも行きたい!! 行く、絶対行く!! 」
「駄目よ、諦めなさい。」
「エリー、ごめんなさい。」
我儘を言うシエリアにエリシアは謝る。

「そんなに行きたかったら、女友達と行きなさい。」
「女友達は婚約者彼氏に夢中で相手にしてくれないもん!! 女の友情は薄情よ!! 」
「……… 」
エリシアは身につまされた、婚約者エドワードに夢中でシエリアを疎かにしていると。

「じゃ、男友達と行きなさい。」
このさい、恋人をゲットしろとの母のあたたかい言葉である。

「恋愛感情のない男性と、旅行なんて行けるはずないじゃない!! 」
「そ、そうね…… 」
大胆な行動をする割には、身持ちの硬いシエリアであった。胸の脂肪攻撃をするのはエリシアに近づく男性にしないのである。
婚約売約済みの男性には全く持って、興味ないシエリアであった。

「お父さまだって、口ずさんでるじゃない。ピンクのレディさんの歌『年頃になったなら慎みなさい』て!! 」
「あなたの場合は、落ち着きなさい!! 」
子供っぽさが抜けないシエリアに母は怒った。

「いや、いや、いやーー、エリーも行く!! 行くったら行く!! 」
「シエリア、いい加減にしなさい!! 」
パシーンと、娘の頭に母の扇子が炸裂する。 

「ごめんね、エリー。また今度、一緒に行こうね。」
シエリアを説得するために、と声をかける。
「信じられないわ!! 女友達はみんなそう言うもの!! 」
しかし、今度はなかなか来ない。

「ぜったい一緒に行くんだから!! 」
叫びながら、シエリアはその場から逃げ出した。扉の影から顔を出して、再び叫んだ。

「男はオオカミなんだからね!! ぜったい二人っきりにしないんだからね!! 」
「あなたが、ただ行きたいだけでしょう!! 」
母の叱咤を無視して、シエリアは再び走り去った。

「シエリア…… 」
「はぁ…… あのたら。」
悲しそうにシエリアが出て行った扉を見ながらエリシアは呟いた。

「大丈夫よ、わたくしが説得するから。」
母は優しく微笑むと、扇子を両手で持ちぶーんぶーんと素振りをしだした。力尽くの説得のようだ。


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