【完結】私の婚約者は、妹を選ぶ。

❄️冬は つとめて

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楽しい旅行。

星降る丘へ。

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星降る丘に向かいながら、先程のシエリアとの会話をエドワードはエリシアに話した。

「護衛を、お父様が…… 」
エリシアは困ったように微笑んで頷いた。

「お父様なら、するかも。」
旅行の話をした時、異常な程の心配を見ているエリシアである。

「ごめんなさい、エドワード様。」
「エリシアが謝る必要はないよ。」
優しく言うエドワードにエリシアは首を振った。

「ううん。私が、シエリアやお母様のように強くないから…… お父様は心配して。」
エリシアは悲しそうに俯いた。

「いや、あの二人と比べたら駄目だろう。」
方や三階から飛び降りる令嬢と、方や二階から飛び降りようとした婦人である。彼女らは普通より飛び抜けて強いのである。

エドワードはシュガレス婦人の身体能力は知らないが、ドアの開け方を見れば力強かったと頷く。

シュガレス婦人トラシエリアヒョウに比べたらエリシアは仔猫である。

「気も、シエリアやお母様より弱いし…… 」
「いや、あの二人と比べたら駄目だろう。」
傍若無人に振る舞うシエリアを抑えることの出来る武骨な婦人である。普通の女性より、彼女らはずば抜けて精神力も強いのである。
初対面の時のシュガレス婦人の精神圧力は凄まじかった。

シュガレス婦人鉄の意志シエリア鋼の精神力、その二人と比べたら、エリシアは透き通った硝子である。

ぱりーーん

どことなくガラスの割れる音が聞こえたような気がした。

(あの二人と比べたら、そりゃ心配ですよねシュガレス殿お父さん



その頃の父と母は。

「むむっ、不吉な…… 」
「あなた、反省しなさい!! 」
夫婦の部屋で、正座をさせられている夫であった。

「男はオオカミなんだぞ!! 紳士な顔していても、心の中はオオカミが牙を向いているんだ!! ピンクのレディさんも歌ってるし、男の私が言うんだから間違いない!! 」
父は男の気持ちを証言する。

「あなたが、見つけてきた婚約者でしょ!! 」
結婚それ旅行これとは話が別だ!! 」
夫が見つけてきた相手だと妻は主張するが、耳をかさない。

「か弱いエリシアが、エドワードオオカミに襲われたらどうする!? 気の弱いエリシアが、断りきれずぱくんちょと食べられたら!! 
うわああああぁああーー!! 」
「落ち着きなさい、あなた!! 」
土下座のように床に顔を埋めて泣きじゃくる夫に、妻は扇子で頭を叩いた。


「それに…… シエリアやお母様と比べると地味だし。」
「何を言ってるんだ!! 」
エリシアの自分を下卑する言葉についエドワードは声を荒げる。

「すまない…… 」
エドワードはエリシアに向かい合った。

「君は、清楚で優雅で美しい。この俺の心を一目で奪った。」
「エドワード様…… 」
エドワードは優しく微笑むみ、頭を掻いた。

「エリシアは俺を夢中にさせて、ぽんこつにした。そして、エリシアの為なら、どんな困難にも向かって行ける。」
エドワードはそっとエリシアの左手をとった。その薬指に優しく口づけをする。

「エリシアが傍にいてくれれば、俺は幸せだ。」

星降る丘で、その指に婚約指輪を贈ろうと思っているエドワードである。

「エドワード様…… 」
「エリシア…… 」
頬を染めてエドワードを見るエリシア。エドワードの手がエリシアの頬にかかる。

ガサッ!! ガサガサッ!!

低い木の枝が音をたてて揺れた。

ぱっと、二人は真っ赤になって離れた。

「だ、誰だ!! 」
照れ隠しにエドワードは、揺れた木に向かって声をあげた。

だが返事はない。

「風か? 猫か? 」
それとも人か? 星降る丘はデートスポット、自分達以外のカップルが歩いていても不思議ではない。向こうも気まずくて、黙っているのかもしれない。

「行こう、エリシア。」
エドワードはエリシアの手をとって歩き出した、その場を離れるように。

しかし後を追うように足跡が聞こえる。一人の足音が。


「シエリア? 」
「まさか…… 」

(野暮じゃないと、お金をせしめて行ったのに。)

まるで童謡の『森の熊さん』のように。

♪ところがシエリアが、後からついてくる。トコトコトッコトコと、トコトコトッコトコと。♪

エドワードは身構え、エリシアの肩を抱いた。










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