18 / 45
楽しい旅行。
星降る丘へ。
しおりを挟む
星降る丘に向かいながら、先程のシエリアとの会話をエドワードはエリシアに話した。
「護衛を、お父様が…… 」
エリシアは困ったように微笑んで頷いた。
「お父様なら、するかも。」
旅行の話をした時、異常な程の心配を見ているエリシアである。
「ごめんなさい、エドワード様。」
「エリシアが謝る必要はないよ。」
優しく言うエドワードにエリシアは首を振った。
「ううん。私が、シエリアやお母様のように強くないから…… お父様は心配して。」
エリシアは悲しそうに俯いた。
「いや、あの二人と比べたら駄目だろう。」
方や三階から飛び降りる令嬢と、方や二階から飛び降りようとした婦人である。彼女らは普通より飛び抜けて強いのである。
エドワードはシュガレス婦人の身体能力は知らないが、ドアの開け方を見れば力強かったと頷く。
シュガレス婦人とシエリアに比べたらエリシアは仔猫である。
「気も、シエリアやお母様より弱いし…… 」
「いや、あの二人と比べたら駄目だろう。」
傍若無人に振る舞うシエリアを抑えることの出来る武骨な婦人である。普通の女性より、彼女らはずば抜けて精神力も強いのである。
初対面の時のシュガレス婦人の精神圧力は凄まじかった。
シュガレス婦人にシエリア、その二人と比べたら、エリシアは透き通った硝子である。
ぱりーーん
どことなくガラスの割れる音が聞こえたような気がした。
(あの二人と比べたら、そりゃ心配ですよねシュガレス殿)
その頃の父と母は。
「むむっ、不吉な…… 」
「あなた、反省しなさい!! 」
夫婦の部屋で、正座をさせられている夫であった。
「男はオオカミなんだぞ!! 紳士な顔していても、心の中はオオカミが牙を向いているんだ!! ピンクのレディさんも歌ってるし、男の私が言うんだから間違いない!! 」
父は男の気持ちを証言する。
「あなたが、見つけてきた婚約者でしょ!! 」
「結婚と旅行とは話が別だ!! 」
夫が見つけてきた相手だと妻は主張するが、耳をかさない。
「か弱いエリシアが、エドワードに襲われたらどうする!? 気の弱いエリシアが、断りきれずぱくんちょと食べられたら!!
うわああああぁああーー!! 」
「落ち着きなさい、あなた!! 」
土下座のように床に顔を埋めて泣きじゃくる夫に、妻は扇子で頭を叩いた。
「それに…… シエリアやお母様と比べると地味だし。」
「何を言ってるんだ!! 」
エリシアの自分を下卑する言葉についエドワードは声を荒げる。
「すまない…… 」
エドワードはエリシアに向かい合った。
「君は、清楚で優雅で美しい。この俺の心を一目で奪った。」
「エドワード様…… 」
エドワードは優しく微笑むみ、頭を掻いた。
「エリシアは俺を夢中にさせて、ぽんこつにした。そして、エリシアの為なら、どんな困難にも向かって行ける。」
エドワードはそっとエリシアの左手をとった。その薬指に優しく口づけをする。
「エリシアが傍にいてくれれば、俺は幸せだ。」
星降る丘で、その指に婚約指輪を贈ろうと思っているエドワードである。
「エドワード様…… 」
「エリシア…… 」
頬を染めてエドワードを見るエリシア。エドワードの手がエリシアの頬にかかる。
ガサッ!! ガサガサッ!!
低い木の枝が音をたてて揺れた。
ぱっと、二人は真っ赤になって離れた。
「だ、誰だ!! 」
照れ隠しにエドワードは、揺れた木に向かって声をあげた。
だが返事はない。
「風か? 猫か? 」
それとも人か? 星降る丘はデートスポット、自分達以外のカップルが歩いていても不思議ではない。向こうも気まずくて、黙っているのかもしれない。
「行こう、エリシア。」
エドワードはエリシアの手をとって歩き出した、その場を離れるように。
しかし後を追うように足跡が聞こえる。一人の足音が。
「シエリア? 」
「まさか…… 」
(野暮じゃないと、お金をせしめて行ったのに。)
まるで童謡の『森の熊さん』のように。
♪ところがシエリアが、後からついてくる。トコトコトッコトコと、トコトコトッコトコと。♪
エドワードは身構え、エリシアの肩を抱いた。
「護衛を、お父様が…… 」
エリシアは困ったように微笑んで頷いた。
「お父様なら、するかも。」
旅行の話をした時、異常な程の心配を見ているエリシアである。
「ごめんなさい、エドワード様。」
「エリシアが謝る必要はないよ。」
優しく言うエドワードにエリシアは首を振った。
「ううん。私が、シエリアやお母様のように強くないから…… お父様は心配して。」
エリシアは悲しそうに俯いた。
「いや、あの二人と比べたら駄目だろう。」
方や三階から飛び降りる令嬢と、方や二階から飛び降りようとした婦人である。彼女らは普通より飛び抜けて強いのである。
エドワードはシュガレス婦人の身体能力は知らないが、ドアの開け方を見れば力強かったと頷く。
シュガレス婦人とシエリアに比べたらエリシアは仔猫である。
「気も、シエリアやお母様より弱いし…… 」
「いや、あの二人と比べたら駄目だろう。」
傍若無人に振る舞うシエリアを抑えることの出来る武骨な婦人である。普通の女性より、彼女らはずば抜けて精神力も強いのである。
初対面の時のシュガレス婦人の精神圧力は凄まじかった。
シュガレス婦人にシエリア、その二人と比べたら、エリシアは透き通った硝子である。
ぱりーーん
どことなくガラスの割れる音が聞こえたような気がした。
(あの二人と比べたら、そりゃ心配ですよねシュガレス殿)
その頃の父と母は。
「むむっ、不吉な…… 」
「あなた、反省しなさい!! 」
夫婦の部屋で、正座をさせられている夫であった。
「男はオオカミなんだぞ!! 紳士な顔していても、心の中はオオカミが牙を向いているんだ!! ピンクのレディさんも歌ってるし、男の私が言うんだから間違いない!! 」
父は男の気持ちを証言する。
「あなたが、見つけてきた婚約者でしょ!! 」
「結婚と旅行とは話が別だ!! 」
夫が見つけてきた相手だと妻は主張するが、耳をかさない。
「か弱いエリシアが、エドワードに襲われたらどうする!? 気の弱いエリシアが、断りきれずぱくんちょと食べられたら!!
うわああああぁああーー!! 」
「落ち着きなさい、あなた!! 」
土下座のように床に顔を埋めて泣きじゃくる夫に、妻は扇子で頭を叩いた。
「それに…… シエリアやお母様と比べると地味だし。」
「何を言ってるんだ!! 」
エリシアの自分を下卑する言葉についエドワードは声を荒げる。
「すまない…… 」
エドワードはエリシアに向かい合った。
「君は、清楚で優雅で美しい。この俺の心を一目で奪った。」
「エドワード様…… 」
エドワードは優しく微笑むみ、頭を掻いた。
「エリシアは俺を夢中にさせて、ぽんこつにした。そして、エリシアの為なら、どんな困難にも向かって行ける。」
エドワードはそっとエリシアの左手をとった。その薬指に優しく口づけをする。
「エリシアが傍にいてくれれば、俺は幸せだ。」
星降る丘で、その指に婚約指輪を贈ろうと思っているエドワードである。
「エドワード様…… 」
「エリシア…… 」
頬を染めてエドワードを見るエリシア。エドワードの手がエリシアの頬にかかる。
ガサッ!! ガサガサッ!!
低い木の枝が音をたてて揺れた。
ぱっと、二人は真っ赤になって離れた。
「だ、誰だ!! 」
照れ隠しにエドワードは、揺れた木に向かって声をあげた。
だが返事はない。
「風か? 猫か? 」
それとも人か? 星降る丘はデートスポット、自分達以外のカップルが歩いていても不思議ではない。向こうも気まずくて、黙っているのかもしれない。
「行こう、エリシア。」
エドワードはエリシアの手をとって歩き出した、その場を離れるように。
しかし後を追うように足跡が聞こえる。一人の足音が。
「シエリア? 」
「まさか…… 」
(野暮じゃないと、お金をせしめて行ったのに。)
まるで童謡の『森の熊さん』のように。
♪ところがシエリアが、後からついてくる。トコトコトッコトコと、トコトコトッコトコと。♪
エドワードは身構え、エリシアの肩を抱いた。
28
あなたにおすすめの小説
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
王女に夢中な婚約者様、さようなら 〜自分を取り戻したあとの学園生活は幸せです! 〜
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
王立学園への入学をきっかけに、領地の屋敷から王都のタウンハウスへと引っ越した、ハートリー伯爵家の令嬢ロザリンド。婚約者ルパートとともに始まるはずの学園生活を楽しみにしていた。
けれど現実は、王女殿下のご機嫌を取るための、ルパートからの理不尽な命令の連続。
「かつらと黒縁眼鏡の着用必須」「王女殿下より目立つな」「見目の良い男性、高位貴族の子息らと会話をするな」……。
ルパートから渡された「禁止事項一覧表」に縛られ、ロザリンドは期待とは真逆の、暗黒の学園生活を送ることに。
そんな日々の中での唯一の救いとなったのは、友人となってくれた冷静で聡明な公爵令嬢、ノエリスの存在だった。
学期末、ロザリンドはついにルパートの怒りを買い、婚約破棄を言い渡される。
けれど、深く傷つきながら長期休暇を迎えたロザリンドのもとに届いたのは、兄の友人であり王国騎士団に属する公爵令息クライヴからの婚約の申し出だった。
暗黒の一学期が嘘のように、幸せな長期休暇を過ごしたロザリンド。けれど新学期を迎えると、エメライン王女が接触してきて……。
※長くなりそうだったら長編に変更します。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
旦那様に学園時代の隠し子!? 娘のためフローレンスは笑う-昔の女は引っ込んでなさい!
恋せよ恋
恋愛
結婚五年目。
誰もが羨む夫婦──フローレンスとジョシュアの平穏は、
三歳の娘がつぶやいた“たった一言”で崩れ落ちた。
「キャ...ス...といっしょ?」
キャス……?
その名を知るはずのない我が子が、どうして?
胸騒ぎはやがて確信へと変わる。
夫が隠し続けていた“女の影”が、
じわりと家族の中に染み出していた。
だがそれは、いま目の前の裏切りではない。
学園卒業の夜──婚約前の学園時代の“あの過ち”。
その一夜の結果は、静かに、確実に、
フローレンスの家族を壊しはじめていた。
愛しているのに疑ってしまう。
信じたいのに、信じられない。
夫は嘘をつき続け、女は影のように
フローレンスの生活に忍び寄る。
──私は、この結婚を守れるの?
──それとも、すべてを捨ててしまうべきなの?
秘密、裏切り、嫉妬、そして母としての戦い。
真実が暴かれたとき、愛は修復か、崩壊か──。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます!
ローザとフラン ~奪われた側と奪った側~
水無月あん
恋愛
私は伯爵家の娘ローザ。同じ年の侯爵家のダリル様と婚約している。が、ある日、私とはまるで性格が違う従姉妹のフランを預かることになった。距離が近づく二人に心が痛む……。
婚約者を奪われた側と奪った側の二人の少女のお話です。
5話で完結の短いお話です。
いつもながら、ゆるい設定のご都合主義です。
お暇な時にでも、お気軽に読んでいただければ幸いです。よろしくお願いします。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
もう何も信じられない
ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。
ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。
その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。
「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」
あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。
ほんの少しの仕返し
turarin
恋愛
公爵夫人のアリーは気づいてしまった。夫のイディオンが、離婚して戻ってきた従姉妹フリンと恋をしていることを。
アリーの実家クレバー侯爵家は、王国一の商会を経営している。その財力を頼られての政略結婚であった。
アリーは皇太子マークと幼なじみであり、マークには皇太子妃にと求められていたが、クレバー侯爵家の影響力が大きくなることを恐れた国王が認めなかった。
皇太子妃教育まで終えている、優秀なアリーは、陰に日向にイディオンを支えてきたが、真実を知って、怒りに震えた。侯爵家からの離縁は難しい。
ならば、周りから、離縁を勧めてもらいましょう。日々、ちょっとずつ、仕返ししていけばいいのです。
もうすぐです。
さようなら、イディオン
たくさんのお気に入りや♥ありがとうございます。感激しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる