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月野木天音とプリミティスプライムの伝説
第95話「そしてプロローグへ」
しおりを挟む俺の放った一撃で皇都の半分が壊滅。
「ようやくだ」
ネルフェネスさんに連れられ、ここへはじめて訪れたときに衝撃を覚えた
あの高くそびえ立っていた壁は崩壊し、瓦礫も残らない地平の向こうには
目指していたディフェクタリーキャッスルの姿がある。
しかし、想定外だ。
皇国軍の戦力のほとんどを破壊したはずなのに
まだ抗おうとする者たちがはだかる。
”武装したローブの集団“
あれは皇国軍の兵士などではない。
地下に潜りし教会の信徒たち。
でかい一発をかませば潜んでいた地下からぞろぞろ這い出てくることは想定していたけど
これは想定外だ。
プリミティスプライムになって間もない月野木天音が
もう教会を掌握していることには驚きだ。
思えばここまで想定外つづきだった。
『魔王様! 魔王様! 援軍を!』
俺はイザベラからの救援要請に沈黙した。
それは全くの想定外⋯⋯
本来ならば破壊の能力を持つ吉備津瑠美花を神に覚醒させて
目的を達したのちに倒す算段だった。
その計画は大きく外れ、外野に置いておいたはずの月野木天音が神となって現れた。
本音を話そう。
俺は月野木天音と戦いたくなかった。
彼女が戦場に現れるたびに何度も警告した。
そして東堂あかねを抹殺してまで、リグリット村に彼女を閉じ込めた。
正直、動揺していた。
俺は救援を求める仲間の声に耳を塞ぎ、無様にも仲間を失った。
そして何もすることができなくなった。
「もういい。軍を退く」
月野木天音が神ならば、俺がこの世界を支配する必要はない。
月野木天音ならばどんな世界だとしてもより良い世界にしてみせるはず。
それに精霊の思惑通りに動かされているのも癪だ。
月野木天音ならプリミティスプライムだろうとディオールだろうと
この世界の歴史を塗り替える。
魔王としての役目はここまでだ⋯⋯
『それは逃げているって言うんだよ。ハルト』
ルーリオ⋯⋯
『ハルト、君は弱くなったね』
「なぜ⋯⋯」
『そんなに強そうな格好をしているのに。どうしてだい?』
「それは⋯⋯」
『あの子だね?』
「違うッ!」
『さっきから必死に言い訳を並べ立てて、あの子から逃げようとしている。
そんなダサいハルトを見ていて、黙っているのを我慢んできなくなっちゃったよ』
「違うルーリオ、これはこの世界のための選択だ。俺は最善を選んだ。逃げてなんかいない」
『そうやってまだ自分を誤魔化すの? 笑っちゃうな。ハルトはあの子の前じゃ何もできない。
僕といるときみたいにうまく喋れない。言葉が続かない、出てこない。それでもなんとか自分の得意な話に
持ち込もうと躍起になる。だけど相手に意味不明な顔されて、最期は恥ずかしさでいっぱいになって逃げ出してしまう』
「⋯⋯」
『君がいくら強くなろうとクライム・ディオールを名乗ろうと、君はあのときの右条晴人のままだ』
「ルーリオ、それ以上は何も⋯⋯」
『“好きだ”という一言がそんなに恐い? 』
「⁉︎」
「それは戦争することよりも?これは君が月野木天音に“好きだ”という一言をいうためにはじめた戦争だ。だから逃げちゃダメだ』
「ルーリオ⋯⋯」
『その一言を言わずに逃げるなら君はすべての世界の愚か者だ。君のために多くの血が流れた。僕もそのひとりだ』
「⋯⋯」
『勇気を出せ。 どんな攻撃にさらされても君は恐れず立ち向かっていくクセに告白から逃げるのは笑っちゃうぞ』
『そうだよ』と、今度はシルカが背中を押す。
『あの子が私たちの仲間にしたかった子でしょ。がんばって』
「ロザリーさんーー」
俺はーー
真っ暗な世界からすっとまぶたを開けると眼前に広がるのは敵の大群。
武器を手に敵意丸出しで俺に迫って来る。
戦場のど真ん中に立つ俺が手のひらを翳せば半径100メートルにいる奴らは一瞬で消し飛ぶ。
この世界に来て何年経ったのだろうか⋯⋯。
修学旅行だったあの日、乗っていたバスは突如現れた魔法陣に飲み込まれた。
俺がこの手で葬ってきたクラスメイトたちと一緒に飛ばされてきたこの異世界で俺は魔王となった。
身に纏うは漆黒のレリーフをあしらった黄金の鎧。背中の真紅のマントが翻る。
俺は伝えなければならない。あの日伝えるはずだったあの言葉をだから戦ってきた。
俺は遠く高台にそびえる純白の城を見つめる。
月野木天音(あまね)、俺のこの想いをーー
純白のドレスに身を包み、螺旋階段を降りて来る私に神官たちが“神よ⋯⋯”とかしずく。
私がこの世界にやってきて何年経ったのであろうか⋯⋯。
父と母にさえ会うことが叶わなくなったこの異世界で私は神となった。
額に紋様が現れるや腰までのびた髪は黄金色に染まり、私の瞳は翡翠に輝いた。
私に立ちはだかるは魔王 クライム・ディオール。
それはともにこの異世界へやってきたクラスメイト右条晴人(うじょう はると)。親友、この世界で出会ったかけがえのない人々を手にかけた悪魔。
友たちと一緒に過ごした穏やかな日々を思い返すたびの涙が頬を伝う。
「ダグラス・オルトよ。トライトエールを」
「ははー」
「ーー伝えたいことがあるんだ
伝えたいことがあるんだーー」
「俺はお前のことが」
「私はお前を」
「ーー好きだ
殺すーー」
つづく
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