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森の中のとみぃ
8話。キャンプ
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洞窟に到着してアイリスさんを降ろすと、彼女はぐったりとしながらもなんとかお礼を言ってくれた。
「ありがとう……ございますわ」
「いいから、とにかく休んで」
表情や目の下のクマを見る限り、かれこれ長い期間マトモに寝ていないことが伺える。
一週間の平均睡眠時間が3時間を切ったと言っていた同僚も同じような顔をしていたので間違いない。
「っと……俺がいたんじゃ安心して眠れないか」
眠りに落ちるまで見守ろうかと思ったが、そんなことをすればただの不審者である。
「とりあえずこんな物しかなくてごめんなさい」
魔力を通して新品未使用状態にした作業服をアイリスさんにかけてから俺は洞窟の外に出る。
魔法を使い土を操って洞窟の入口を塞ぐ。
完全密閉するとよろしくないので、空気穴代わりに上の方は空けておく。
俺も魔物も動物も簡単には入れない。
これなら少しは安心して眠れるかな?
「よし、じゃあとりあえず……狩りかな」
抱き上げた時、めちゃくちゃ軽かった。
女性が一人でこんな森の中、まともな食事も出来ていなかったのだろう。
「魔物は倒すと黒い霧になって消えるからなぁ……食える動物って近くに生息してるのかな?」
まぁ肉の手持ちは多少ある。狩れなくても手持ちを食べさせればいいか。
それより野草や木の実、果物の在庫がほとんど無いからそっちを優先しよう。
方針も決まったので、洞窟からあまり離れないよう気をつけながら森の中を駆け巡る。
もしも、万が一迷子になって洞窟に戻れなかったらアイリスさん閉じ込めただけになっちゃうからね。ただの拉致監禁……
「お、これも食えるやつ。名前は知らんけど」
散策中に食べられる野草を発見、引っこ抜いて鞄へと放り込む。
聖竜さんにしっかりと教わったので、食べられる野草や木の実、果物についての知識は豊富なのだ。
聖竜さんは肉は狩って来てくれるけど、野草などは俺が採取してたからね。
その時に食べられるものと毒のあるものの見分け方を教わった。
しかし聖竜さん、詳しかったな……
もしかしたら食いしん坊竜なのかもしれない。
「っと、日が落ちてきた」
いつの間にか夢中になっており、気が付けば夕方、そろそろ戻らねば。
まだ寝てたら問題無いが、もし起きていたら不安しか無いだろう。
「お?」
洞窟へと戻る途中、デカい鹿を見つけた。
やけにデカいが、足は4本だし、体の色も普通、魔物ではなく動物かもしれない。
「どっこいしょー!」
動物であるなら鹿は食えるはず、できる限りで気配を消しながら接近、その頭部に拳を振り降ろした。
「あっ!」
ベコリと頭蓋骨を粉砕する感触があったが、巨大鹿はそのまま黒い霧へと姿を変えて消えてしまった。
「魔物だったのか」
ただのデカい鹿だと思ったのに……
いや、5メートル超はさすがに有り得ないのか?
それにしてもあまり強く無いな、光属性を使っていないのにワンパンとは……
「まぁ悩んでも鹿肉は手に入らないから仕方ないな」
一応落ちている魔石を回収してから洞窟の入口まで戻った。
「アイリスさーん! 起きてますかー?」
洞窟の入口、俺が作った壁をドンドン叩きながら声をかけると、中でモゾモゾ動く音が聞こえた。
「アイリスさーん!」
「起きていますわ!」
起きてるのか。なら入っても大丈夫かな?
壁に手を当てて魔力を流す。
元あったように地面に戻して中を覗くと、壁にもたれかかって座っているアイリスさんの姿が見えた。
「眠れました?」
「ええ、おかげさまで」
ふむ……多少は肌艶良くなってはいるのかな?
睡眠は取れたようだし、あとは食事か。
よく考えたら作ってから声をかければよかったな……
「すぐ食事の用意をしますね」
洞窟の外に出て土の魔法を使い、土鍋とかまどを作る。
適当に拾った枝に火魔法で着火。水魔法で鍋を満たして肉や野草、塩辛い木の実を放り込む。
魔法って超便利。
適当に煮込む男の料理が完成。
【物質創造】で食器を創造して取り分ける。
「あまり美味しくないかもしれませんが……」
「いえ……それよりこのお皿とスプーンはどうやって作りましたの?」
皿とスプーン?
アイリスさんの視線の先には俺が【物質創造】で創った木でできた皿とスプーンがあった。
そういえば【物質創造】は【錬金魔法】と呼ばれていて、無から有を生み出す魔法ではなくて、有るものを変化させる魔法と言われているって聖竜さんが言ってたな。
「魔法ですよ。【物質創造】と言ってイメージした物を魔力で創る魔法です」
「そのような魔法がありますのね……知りませんでしたわ」
アイリスさんは興味深そうに食器を受け取り眺めている。
興味津々なのはいいけど、早く食べないと食器消えちゃうよ?
「アイリスさん、この魔法には制限時間があります。多めに魔力を込めたのでしばらくは大丈夫ですが、食べてる途中に効果時間が終わってしまうと……」
「急いで食べますわ!」
説明を終えるより早く、アイリスさんは綺麗な所作でスプーンでスープを掬い口へと運んだ。
「暖かい……」
「まぁ出来たてですからね」
そう返事をしてから俺もスープに口を付ける。
うん、普通。美味くもなければ不味くもない。
その後食事を終えるまで会話は無かった。
アイリスさんが2回もオカワリをしてくれたのはなんだか嬉しかった。
「ありがとう……ございますわ」
「いいから、とにかく休んで」
表情や目の下のクマを見る限り、かれこれ長い期間マトモに寝ていないことが伺える。
一週間の平均睡眠時間が3時間を切ったと言っていた同僚も同じような顔をしていたので間違いない。
「っと……俺がいたんじゃ安心して眠れないか」
眠りに落ちるまで見守ろうかと思ったが、そんなことをすればただの不審者である。
「とりあえずこんな物しかなくてごめんなさい」
魔力を通して新品未使用状態にした作業服をアイリスさんにかけてから俺は洞窟の外に出る。
魔法を使い土を操って洞窟の入口を塞ぐ。
完全密閉するとよろしくないので、空気穴代わりに上の方は空けておく。
俺も魔物も動物も簡単には入れない。
これなら少しは安心して眠れるかな?
「よし、じゃあとりあえず……狩りかな」
抱き上げた時、めちゃくちゃ軽かった。
女性が一人でこんな森の中、まともな食事も出来ていなかったのだろう。
「魔物は倒すと黒い霧になって消えるからなぁ……食える動物って近くに生息してるのかな?」
まぁ肉の手持ちは多少ある。狩れなくても手持ちを食べさせればいいか。
それより野草や木の実、果物の在庫がほとんど無いからそっちを優先しよう。
方針も決まったので、洞窟からあまり離れないよう気をつけながら森の中を駆け巡る。
もしも、万が一迷子になって洞窟に戻れなかったらアイリスさん閉じ込めただけになっちゃうからね。ただの拉致監禁……
「お、これも食えるやつ。名前は知らんけど」
散策中に食べられる野草を発見、引っこ抜いて鞄へと放り込む。
聖竜さんにしっかりと教わったので、食べられる野草や木の実、果物についての知識は豊富なのだ。
聖竜さんは肉は狩って来てくれるけど、野草などは俺が採取してたからね。
その時に食べられるものと毒のあるものの見分け方を教わった。
しかし聖竜さん、詳しかったな……
もしかしたら食いしん坊竜なのかもしれない。
「っと、日が落ちてきた」
いつの間にか夢中になっており、気が付けば夕方、そろそろ戻らねば。
まだ寝てたら問題無いが、もし起きていたら不安しか無いだろう。
「お?」
洞窟へと戻る途中、デカい鹿を見つけた。
やけにデカいが、足は4本だし、体の色も普通、魔物ではなく動物かもしれない。
「どっこいしょー!」
動物であるなら鹿は食えるはず、できる限りで気配を消しながら接近、その頭部に拳を振り降ろした。
「あっ!」
ベコリと頭蓋骨を粉砕する感触があったが、巨大鹿はそのまま黒い霧へと姿を変えて消えてしまった。
「魔物だったのか」
ただのデカい鹿だと思ったのに……
いや、5メートル超はさすがに有り得ないのか?
それにしてもあまり強く無いな、光属性を使っていないのにワンパンとは……
「まぁ悩んでも鹿肉は手に入らないから仕方ないな」
一応落ちている魔石を回収してから洞窟の入口まで戻った。
「アイリスさーん! 起きてますかー?」
洞窟の入口、俺が作った壁をドンドン叩きながら声をかけると、中でモゾモゾ動く音が聞こえた。
「アイリスさーん!」
「起きていますわ!」
起きてるのか。なら入っても大丈夫かな?
壁に手を当てて魔力を流す。
元あったように地面に戻して中を覗くと、壁にもたれかかって座っているアイリスさんの姿が見えた。
「眠れました?」
「ええ、おかげさまで」
ふむ……多少は肌艶良くなってはいるのかな?
睡眠は取れたようだし、あとは食事か。
よく考えたら作ってから声をかければよかったな……
「すぐ食事の用意をしますね」
洞窟の外に出て土の魔法を使い、土鍋とかまどを作る。
適当に拾った枝に火魔法で着火。水魔法で鍋を満たして肉や野草、塩辛い木の実を放り込む。
魔法って超便利。
適当に煮込む男の料理が完成。
【物質創造】で食器を創造して取り分ける。
「あまり美味しくないかもしれませんが……」
「いえ……それよりこのお皿とスプーンはどうやって作りましたの?」
皿とスプーン?
アイリスさんの視線の先には俺が【物質創造】で創った木でできた皿とスプーンがあった。
そういえば【物質創造】は【錬金魔法】と呼ばれていて、無から有を生み出す魔法ではなくて、有るものを変化させる魔法と言われているって聖竜さんが言ってたな。
「魔法ですよ。【物質創造】と言ってイメージした物を魔力で創る魔法です」
「そのような魔法がありますのね……知りませんでしたわ」
アイリスさんは興味深そうに食器を受け取り眺めている。
興味津々なのはいいけど、早く食べないと食器消えちゃうよ?
「アイリスさん、この魔法には制限時間があります。多めに魔力を込めたのでしばらくは大丈夫ですが、食べてる途中に効果時間が終わってしまうと……」
「急いで食べますわ!」
説明を終えるより早く、アイリスさんは綺麗な所作でスプーンでスープを掬い口へと運んだ。
「暖かい……」
「まぁ出来たてですからね」
そう返事をしてから俺もスープに口を付ける。
うん、普通。美味くもなければ不味くもない。
その後食事を終えるまで会話は無かった。
アイリスさんが2回もオカワリをしてくれたのはなんだか嬉しかった。
応援ありがとうございます!
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