異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)

愛飢男

文字の大きさ
30 / 266
第1章……王国編

間話4……勇者たちの日々

しおりを挟む
 翌朝窓から差し込む陽の光で目が覚めた。
 体を起こして大きく息を吸いながら体を伸ばしながら昨日の出来事を思い出す。

 いきなり召喚されて魔王を倒せと言われたり、服はゴワゴワだし食事も美味しくない、電気ガス水道も無い生活。でも……

「この生活も悪くないかもしれない」

 そう呟くとほぼ同時、扉がノックされ昨日のメイドさんが入室してきた。

「勇者様おはようございます。朝食の支度が整っております」

 メイドさんの案内で昨日と同じ食堂へ、幼なじみたちと朝の挨拶を交わして食べる。
 相変わらずあまり美味しくは無いが昨日ほどは気にならなかった。

 食事を終えるとそのまま訓練、今日も神器を召喚する訓練だ。

「では訓練を開始する!」

 ゴルドさんの宣言で訓練が開始された。

 目を閉じて集中してみたり、頭の中に今まで何かで見た事のある剣の姿を思い浮かべてみたりするが一向に神器が召喚される感じは無い。

「出来た!」

 訓練が始まって2時間ほど経過したか、不意にそんな声が耳に入ってきた。
 誰が成功したのかと見てみると、そこにはいかにも魔法使いが持っていそうな杖を掲げた賢人の姿があった。

「おお、最初の成功者は賢者ケント殿か!  おい!」

 ゴルドさんは賢人が成功したのを見て脇に控えていた細身の男に指示を出す。
 指示を受けた男は小走りで賢人に駆け寄り話しかけた。

「おめでとうございますケント様。そちらの杖を鑑定させて頂けますか?」
「鑑定ですか?  テンプレの?  あぁ、良いですよ」

 細身の男はテンプレ?  と呟きなら杖を受け取り杖に向けて手をかざした。

「おお!【魔法効果増大(大)】【魔法範囲拡大(大)】【使用魔力減少】と3つも効果が付与されております!」

「3つ!?」「すげぇな」「さすが神器」と訓練を見学している兵士さんがざわついた。

 ゴルドさんも嬉しそうに頷いているしこの世界基準ではすごいのだろう。
 俺にはちょっとわかんないけど……

「ねぇ賢人、コツ教えてくれない?」

 スススと愛子が賢人に近付き教えを乞う。
 あ、俺も聞きたい!

「賢人、俺にもお願い」
「俺も頼む」
「私も」

 俺たちも置いていかれないように賢人のところに集まる。

 ゴルドさんや兵士さんの話じゃ分からないから賢人に教えてもらうんだ。

「えっと、まずは頭を目を閉じて空っぽにして」

 言われた通りに目を閉じる。
 頭を空っぽにしなければと考えるがどうやったら空っぽになるのだろうか?

「召喚してみて分かったけど、神器って自分の中にあるんだ。だから意識を自分の内側に向けて探すっていうか……」

 立っているとなんか上手く集中し切れない、なのでその場に座り目を閉じて意識を集中させる。
 自分の中……

 自分の中というのはよく分からないけど答えはもう持ってると言われたら探してみるしかない。

 しばらく目を開けず考え込んでいると、今度は「出来た!」知也の声が聞こえた。

 思わず目を開けてしまい知也を見ると、全身守れそうなくらい大きな白い盾を手にしていた。

「これが聖盾……」
「鑑定します」

 先程の細身の男性が今度は知也に近付き盾に手をかざしている。
 受け取らないのは大きいからかな?

「【衝撃吸収】【魔力霧散】【衝撃力発散】の3つですね」

 またしても兵士さんからどよめきが起こる。

 効果が付いているのは分かったけどどんな効果なのかは分かりづらいな……

 とりあえず後で賢人に教わるとして、まずは自分の神器だ。
 賢人と知也の神器を見ているとなにか感じるものがある、それをしっかり形にして……

「やった!  出来た!」

 再度集中しようとした時今度は愛子の声が聞こえてきた。
 愛子の手には長剣が握られている。
 薄く紫に光っていてやけに毒々しい。

「【不治】【毒攻撃】【身体能力向上】の3つです!」

 やっぱり毒じゃん……

 でも賢人だけじゃなくて知也と愛子も出来たってことは俺にできないはずは無い……

「出来た……」

 さぁ集中!  と思ったところで今度は香織の声。
 見ると香織は時代劇で見た事あるクナイのようなものを持っていた。

「【分身】【各種状態異常攻撃】【不可視化】です!」

 恒例の鑑定、恒例のざわつき、それが俺の焦燥感を煽った。
 ヤバい、俺だけ成功してない……

 やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい……

 何でだ?  アイツらに出来てなんで俺に出来ないんだ!?

「英雄……」
「すまない、ちょっと集中させてくれ」

 心配そうに声を掛けてきた知也を遠ざけて壁際に1人座り込む。

 確かに賢人には勉強、知也には運動でそれぞれ敵わない。
 愛子や香織だって得意分野で勝負したら勝てないだろう。
 でも、それ以外のことなら……

 アイツらが得意なことでトップに立つなら俺は全部で上位に食い込める。
 1つ1つでは敵わなくてもトータルでなら、全部合わせたら俺が1番なんだよ!
 なのに……

「アイツらに出来て俺に出来ないわけがない……」

 誰にも聞こえないように小さく呟いて心を落ち着かせる。

 その後昼食時にみんなからアドバイスを貰い午後の授業はキャンセルさせてもらって1人訓練所で召喚を試みる。

 結局2日目に召喚することは叶わず気落ちしたまま夕食を食べてメリルに慰めてもらいながら眠りについた。

 そして2日後、みんながそれぞれ兵士さんと訓練している時ようやく聖剣の召喚に成功することが出来た。

 俺の手にある聖剣は白く美しい輝きを放っている。
 持っているだけで力が漲ってくるような気もする。

「鑑定します」
「お願いします」

 聖剣を差し出して細身の男に鑑定してもらう。
 さぁどんな効果が付いてるのかな?

「なッ!!」

 細身の男は目を見開き絶句する。
 周囲の兵士さんや幼なじみたちもこちらに注目していた。

「どうしました?」
「し……失礼しました」

 俺が声をかけると男は額の汗を拭いてから口を開いた。

「【絶対切断】【身体能力向上(大)】【魔力向上(大)】【破邪攻撃】【各種状態異常無効】【魔法威力上昇】のむ、6つです!」

 瞬間、訓練所は静寂に包まれた。

 6つか……ほかの幼なじみたちは3つだった。単純に2倍……
 つまりそれだけ性能に差があるということだ。
 倍の性能があるなら少しくらい成功が遅れるのは仕方ないよね?

「おぉ……」や「さすが勇者様」など俺を賞賛する声がワッと聞こえてきた。

 うん、やっぱり俺はすごいんだ、俺が1番なんだ!

 勇者様、勇者様と呼ばれるのが心地いい。
 最初こそむず痒がったが今となっては当たり前だとすら思う。
 俺は選ばれた人間なのだから……

 それからの訓練は順調そのものだった。
 兵士さんと手合わせしてみても動きが遅く力も弱い。
 簡単に弾けてしまう。

 他にも賢人と一緒に魔力を感じるためだとかで白の中庭にある林で瞑想してみたり……
 これは神器召喚の時とは違い賢人と一緒にすぐ魔力を感じることができた。

 聖剣を召喚することに成功しておよそ2週間、騎士団や魔法師団の中に俺たちに勝てる人はほとんど居なくなった。
 今度ゴルドさんと戦って勝てばようやくお城から出て魔物と戦えるらしい。

 その時に名前が出たから気付いたのだが、どうやらエメラルド宰相ではなくエラルド宰相らしい。
 全く、紛らわしい名前はやめて欲しいよね。

 あ、そうそう、それとなんか近くの迷宮都市って街ではミスリルって希少金属が採れるらしいんだけど、その金属を使った鎧を作って貰えるらしいよ。

 何でもめちゃくちゃ高価な鎧だって言うけどすごく高性能みたいだし世界を救う勇者がそれを貰えるのって当たり前だよね?
しおりを挟む
感想 194

あなたにおすすめの小説

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

処理中です...