異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)

愛飢男

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第3章……迷宮攻略編

78話……グリエルへ

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 一瞬の静寂が場を包む。

 グリエルが陥落……たしか虫系の魔物が多いっていう迷宮だよな?

「迷宮都市グリエルが……ですか?」
「そうだ。あちらでも溢れ出しオーバーフロー……いや大暴走スタンピードが発生したらしい」

 ギルドマスターは沈痛な面持ちで話を続ける。

「3日ほど前か、王都冒険者ギルドから早馬でグリエル陥落の知らせを持ってきた」

 3日前か、そりゃ迷宮内に居た俺たちが知る由もないわな。

「なんでも大量の虫系の魔物が溢れ出してきてグレートビートルまで現れたそうだ」

 グレートビートル……グレートウルフに続いてまたグレートか……

「プラチナランク冒険者チーム風舞が応戦したようだが……」

 そこで言葉を切って首を横に振る……負けたのか。

「風舞が!?  マスター、リーダーのリリオットは!?」

 リンが焦ったように前に出てくる。
 この反応……知り合いかな?

「不明だ。だがことが起きてからもう数日経っている、今なら分かるかもな」
「クリード……」

 リンは眉を八の字にして俺を見つめてくる。
 なるほど、行きたいんだな。

 一度リンから視線を外して他のみんなを見るが異論は無さそうだ、なら答えは決まったね。

「行こうか」
「クリード……みんな……ありがとう」

 頭を下げようとするリンを止めさせる。

「ならクリード、俺からも頼みたい」

 今度はギルドマスターまで真面目モードなったな……苦手なんだけど……

「依頼だ。報酬はクリード、ケイト、サーシャ3名のオリハルコンランクへの推薦、リン、ソフィア、アンナのミスリルランクへの推薦、白金貨1枚でどうだ?」
「内容は?」

 報酬より先に内容言えよ。

「グリエルの奪還。現地の兵士や冒険者と協力して事にあたってもらいたい」

 ふむなるほど、どうせ行くなら戦うし問題は無いね。

「ただ……ショーンから聞いているが剣士の誇りと揉めたんだよな?  今回はその剣士の誇りも参加している」
「剣士の誇り?」

 あぁ、ディーンのとこね。

「解決してるよ、ディーンとは手合わせの約束もしてるし会えるならちょうどいいな」

 奪還作戦に成功したら一手ご指南願おう。

「そうか、あとは……勇者パーティも参加するらしい」
「マジで?」
「あぁ……お前の立場からすれば気まずいかもしれんが……」

 気まずいっちゃ気まずいけど、勇者のサポートしようぜって決めてるから俺は気にしない。

「それは別に大丈夫、俺は気にしてないし」
「そうか……なら」
「受けるよ」

 俺がそう答えるとギルドマスターは安堵のため息を吐いた。
 というかそんな状況なら迷宮攻略の話してる場合じゃ無かったんじゃないの?
 まぁそれはいいか、話の流れだし。

「それで、救援物資なんかは用意してるのか?」
「勿論しているが……」

 怪訝な顔してるけど俺が何を言いたいのか分かってないのか?

「なら俺が持っていってやるよ。馬車で運ぶより何倍も早いぞ」
「しかし……いくら大急ぎで集めているとはいえ相当の量があるぞ?」
「魔物の死体3000以上持ってるって言ったろ?  分かりやすく言えば俺の【アイテムボックス】の容量には制限が無い」

 そこでようやく理解したようだ。
 先程の話を思い出したのだろう。

「なるほど……ちなみに数人一緒に連れていくことは可能か?」
「人数によるな」

 あんまり多いと狭いし……というかグリエルまでどれくらい距離があるのか知らないな……

「なぁ、普通に馬車で移動するならグリエルまでどれくらい?」
「そうだな……1週間と数日と言ったところだな」

 ということは王都より少し遠いのか。

「王都からだと?」
「2日くらいだな」

 なるほど、それなら半日もかからず到着出来るかな?

『私が大きくなれば何人でも運べます。それに半日も掛かりません』

 俺が少し考えているとイヤホンからウルトの声が聞こえてきた。
 本来の大型トラックのサイズより大きくなれるみたいだし確かに問題無いな。

「分かった。すぐに出たいからすぐに動ける人間なら何人でも構わないよ」

 今は昼前、すぐに出発すれば今日中には余裕で着けるだろうし。

「分かった、すぐに人を集めよう」
「あ、武器に関しては全部金貨2枚で売ってやるよ、同行する職員に多めに金渡しといて」
「金貨2枚でいいのか!?」

 ここで売ってもいいけどどうせ運ぶの俺だしそれなら向こうで必要な本数だけ売る方が楽だしな。
 金額についてはゴブリンキングの剣が確か金貨3枚と大銀貨3枚だったと思うからそれよりは安くしたし問題無いだろ。
 どうせ俺たちは使わないだろうし……

「分かった、準備を整えるから少しここで待っていてくれ!」
「いや、その間に解体所行ってるから受付にでも集めてよ」
「む、そうか、分かった」

 それから一言二言交わして俺たちは解体所へ移動、そこで状態のまだ綺麗な7階層以降の魔物を適当に10匹出して職員に引き渡す。
 ミノタウロスは出さない、あれは俺らのご馳走だから。

 解体所職員から引き渡した証明の書類を受け取り受付へ、そこで魔物の代金を受け取る。

 流石にまだ準備は出来ていないようなのでギルド併設の食堂で軽食と飲み物を注文して待機。
 気が気でなさそうなリンを何とか落ち着かせて軽食を食べさせる。
 すると30分もしないうちに準備が出来たと声を掛けられた。早いな。

「こいつらが同行する。よろしく頼む」

 紹介されたのは3人の男性、1人はメガネを掛けた細身の男だがほかの2人は筋骨隆々で現役冒険者と言われても不思議はない体つきをしていた。

「よしじゃあ早速……」
「待てクリード、先にコイツにサインしろ」

 出発しようとしたがギルドマスターに引き止められる、手には書類を持っているようだ。

「なにこれ?」
「ギルドからの指名依頼だ。内容は物資輸送と護衛だな」

 書類を受け取り確認すると内容はギルドマスターの言った通り、報酬は金貨2枚となっていた。

「別にいいのに」

 結構ふんだくってるからね、これ以上となると少しだけ心苦しい気持ちになる。

「アホ、お前は冒険者で俺はギルマス、俺の頼みを聞いてもらうんだから報酬は当然だ」
「はいはい、まぁ受け取っておくよ」

 受け取るのは到着してからだけどね。

 受注書にサインをしてギルドマスターに返却、これでようやく出発出来るな。

「物資はこちらです」

 3人に案内されて早足で倉庫街へ、そこで集められた支援物資を【無限積載】で積み込む。

「まさか触れずとも収納出来るなんて……」

 そういえば前にケイトから聞いたけど、【アイテムボックス】
 は出す時は多少融通が効くけど入れる時は触れてないとダメって言ってたっけ?

「まぁ俺の勇者スキルみたいなもんなんで気にしないでください。それより早く行きましょう」

 適当に説明して納得させる。
 そこからも早足で一番近い門から外へ出てすぐにウルトを元の大きさへ、驚く3人をさっさと乗り込ませてグリエルへと向けて出発した。
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