異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)

愛飢男

文字の大きさ
203 / 266
積み残し編……もうちょっと続くんじゃよ

秘伝書

しおりを挟む
 ジェイドたちを連れて教国に戻りおよそ1ヶ月、正式に未開領域がクリード家の領地として下賜された。

「そういうことで開発を頑張って欲しい。当然ウチからも人は出すから」
「そういうことでって……アレクセイ、簡単に言うけどどうすりゃいいのさ?」
「優秀な魔法使いが居れば開発ってすごい楽らしいよ?  そういえばレオの奥さんに最高の魔法使い居るよね?  いやぁ偶然だなぁ」
「お前……」
「それにレオだって魔法使えるでしょ?  これは開発も早そうだ」

 ニコニコとそんなことを宣う。
 若干イラッとして睨みつけるが、アレクセイは何処吹く風だ。

「領地のことは全部レオが決めることなんだけど、こっちの希望としてはヒメカワ領との境の渓谷を渡る橋が欲しいかな?  人や物資を運ぶのにわざわざゴルベフ辺境伯領を経由するのもね……」

 橋って……
 確かにゴルベフ辺境伯領経由だとかなりの遠回りだけど、橋って……

 あの渓谷、見た感じ幅50メートルはあるぞ?
 深さもどれくらいあるのか……みんなが渓谷って言ってるから渓谷って呼んでるけどあれはもはや断裂だと思う。

 あそこに橋を架けるって……

「早速あたしの出番ね」

 一緒に話を聞いていたリンが声を上げる。

「出来るのか?」
「さすがに1人じゃ無理よ。お父様やお兄様、あともちろんレオにも手伝ってもらうわよ?」
「そりゃ手伝うけどさ……」

 俺に何ができるの?  って話だけどさ。


 翌日、よめーずや使用人たちに数日から下手をすると数週間戻らないと告げて俺とリンの2人はヒメカワの街へとやって来ていた。

 街並みを眺めながら領主の屋敷へと歩いていく。

「どう?  ここがあたしの実家の納める街よ」
「綺麗な街並みだね。それにいい匂いもする」
「アルマン教国一の食の街なのよ。天下の台所や食いだおれの街とも呼ばれているわ」

 大阪かよ。

 海が近いので新鮮な海産物がたくさんあり、海とは反対側にある山では牧畜も盛んなためいい肉も手に入りやすいらしい。
 食べたいものがたくさんある素晴らしい街だ。

 しばらくリンに案内されながら街を歩いていよいよ領主の屋敷に到着、警備兵もすぐにリンに気が付いたようですぐに中へと通された。

「クリード侯爵、本日はどのようなご用向きで?」
「お久しぶりですヒメカワ伯爵。今日は私が賜った領地との間に橋を架けるご相談に……」

 俺がヒメカワ領の北の未開地を領地としたことは当然ヒメカワ伯爵も知っていたらしく、話はスムーズに進む。

「それでお父様、ヒメカワ家の秘伝書を見せて欲しいの」

 秘伝書?

「ふむ、確かにあの渓谷に橋を架けるのなら秘伝書に書かれた技術が役に立つだろうな」
「でしょ?  それにレオなら実物を見たことあると思うし」
「そうだな」
「あの……」

 俺を置いてきぼりで話が進んでいたのでつい口を挟んでしまう。

「どうしたの?」
「いや、秘伝書って?」
「初代ヒメカワ家当主が書き残した秘伝の技術書よ。異世界の建築物やそれを魔法で再現する方法が書かれているの」
「なるほど、そんなものがあるのか」

 だから俺なら実物を見たことがあるってことか。

「他にも数学や理科の教科書だったり料理本だったりもあるわよ?」
「凄いな……」

 でもそれってラファエル的に全力でアウト!  な本だと思う。
 そういう知識はあまり広めて欲しくなさそうだったし……

 というか、リンがベラに教えた内容ももしかしたらヒメカワ家の秘伝書の内容なのかもしれない。
 けしからん。大変にけしからん。これは神と直接会った人間として検閲すべきではなかろうか?

「御館様、お持ちしました」
「ご苦労」

 リンと話している間に指示したのだろう、ヒメカワ伯爵は使用人から一冊の本を受け取っていた。

「あそこの渓谷は深すぎて柱は建てられない。よって吊り橋方式にすべきだと思うのだが……クリード侯爵はどう思われるか?」

 どう思われるかと言われましても……
 吊り橋で有名なのは明石海峡大橋かな?  当然見たこともあるし渡ったこともあるけど、作り方とか知らんぞ?

「いいと思いますが、基礎工事から始めた場合何年かかるか……」
「レオ、そこは魔法でどうにでも出来るわよ。そのためにあたしも来てるんだから」
「それはそうだけども」

 橋ってそんな簡単に架けられるものかね?

「リンの言う通りだな。しかしあの距離を渡すとなると相当に魔力が必要だが……」
「1日で終わるとは思ってないわ。何日かに分けて行うし、レオにも手伝って貰うから……だからお父様、その秘伝書貸して貰えないかしら?」
「ううむ……まぁリンとクリード侯爵になら……だが他の者には見せないように」
「もちろんよ。ありがとうパパ」

 ヒメカワ伯爵はなんとも言えない表情でリンに秘伝書を手渡す。
 娘にパパと呼ばれて嬉しかったのかな?  それより18禁の秘伝書が見たいです。

「じゃああたしたちは早速行ってくるわね」
「ああ、泊まる部屋は用意させておこう」

 ヒメカワ伯爵との話を終えて街の外へ、そのままウルトに乗り込んで渓谷へと向かう。

「どの辺に橋架けるの?」
「そうね、街道がこう通ってるから……この辺かしらね?」

 ヒメカワ伯爵領の地図を取りだして指でなぞりながら答えてくれる。
 ここからなら……ウルトなら30分もあれば到着しそうだな。
しおりを挟む
感想 194

あなたにおすすめの小説

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...