異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)

愛飢男

文字の大きさ
222 / 266
積み残し編……もうちょっと続くんじゃよ

勇者現る

しおりを挟む
 王国軍が動き始めて1週間ほど、両軍の布陣が完了し、睨み合いが始まっていた。

 俺たちクリード家諸侯軍は王太子率いる本隊と共に行動していた。
 勇者が現れた場合、すぐさま飛び出すためである。
 ここが一番情報入るの早いからね。

 本来なら両軍魔法使いによる魔法戦が展開されるそうなのだが、お互いの魔法使いは未だ攻撃魔法は使っていない。

 教国軍の魔法使いは相手の魔法攻撃を防ぐために構えているのだが、相手側が魔法を撃ってこないのだ。

 ならばこちらから撃てばいいんじゃないの?  と思うがその辺は作戦ならなんやらで手は出さない方針らしい。

 帝国からの援軍も続々と到着はしているが、まだ全て揃ってないので時間稼ぎの面もあるのだろう。

 戦わず睨み合うことしばらく、ついに王国軍が動き始めた。
 とはいえ進撃してきたのではなくも魔法を放ってきたということもない。
 正面の軍が割れて、そこから数名が歩み出てきた。

 すぐに【五感強化】で視力を強化して確認、黒髪だ。

「殿下、黒髪の人間が3名出てきました」
「黒髪……勇者か」

 ここ1週間ほど毎日顔を合わせていたためかようやく俺と会話しても怯えなくなってきた王太子に報告、一瞬悩むような仕草をしたが、すぐにこちらに顔を向けて指示を出してくる。

「クリード侯爵、対応を頼めるかな?」
「御意に。前に出ます」

 行くぞ、とゲルトに視線で指示を送り前に出る。

 最前線に立ち、再度【五感強化】で視力を強化して3人の勇者を見る。

 ……ん?
 なんだか見覚えがあるような……

 3人の勇者は両軍のちょうど中間地点辺りまで来て立ち止まる。
 若干俯いているため顔が良く見えない……だけどなんか嫌な予感しかしない。

「御館様」
「行こう。俺たちも少し前に出る」

 相手が立ち止まったのでこちらも前に出る。
 100メートルほどの距離を挟んで3人の勇者と対峙する。

「ミィツケタァ」

 俺たちが立ち止まると同時、【五感強化】にて強化されている聴覚が勇者の呟きを捉えた。

 それを認識した瞬間、俺の全身から冷や汗が吹き出した。

「う……あ……」

 ウルトを呼ぼうとするが、上手く声が出ない。
 心臓が跳ねる。瞳孔が開くのが自分でもわかった。

「御館様!?」

 無意識のうちに一歩後退していたらしい。
 俺の後ろに居たはずのジェイドとフィリップがそれぞれ武器を構えて俺の前に躍り出る。

「御館様、何かありましたか?  もしや我々には感知出来ない攻撃を受けたのでしょうか?」

 ゲルトも杖を構えて俺の横に立つ。
 諸侯軍の兵士たちもそれぞれ武器を抜いて警戒態勢に入ったことも伝わってくる。

「レオさん、大丈夫ッスか?」
「レオ様落ち着いて」

 後方に居たはずのアンナとイリアーナも俺の様子がおかしい事に気付いたようで俺の傍まで駆け付けて来てくれた。

 両肩に乗せられた2人の手の温かさに少しだけ落ち着きを取り戻す。

「大丈夫、ありがとう。ちょっとマジで危ないから下がってて……」

 思い出した。
 確か高校に入ってすぐくらいの時にお付き合いをしていたとある女子生徒。

 その時は少し嫉妬深くて束縛がちょっと強めくらいだったのだが……

「レオくん?  その女だぁれ?  なんでうちから離れてほかの女と居るの?  ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ?」
「ひぃ……」

 これだ。
 いつの間にやらこんな……

 俺がほかの女子と会話するだけで目を見開いて問い詰めてくるようになってしまったのだ。

「レオ様、あの人怖い」
「レオさん、あの人目が死んでるんスけど……」

 ヤバい気配を垂れ流す女勇者……矢場井佳奈(やばいかな)は幽鬼のような不気味な動きで一歩、また一歩とこちらに近付いてくる。

「ヤバいヤバいヤバい!  アンナ、イリアーナはすぐに下がれ!  アイツはヤバい!」

 慌てて2人を引き剥がして後ろに下がるように頼む。このままだと……ヤバい!

「ねぇレオくん?  その女だぁれ?  うちが居るのに他の女の子と仲良くすのはなぜなぁぜ?  ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇナンデ?」
「あばばばば……」

 なんて奴を……王国はなんて奴を召喚してくれやがったんだ!

 アンナとイリアーナも本能で察したのか、俺から離れ徐々に後ずさる。
 そのまま本陣まで、なんならクリード侯爵領まで下がって欲しい。

「佳奈さん、それはちょっと気持ち悪いです……」

 ユラユラと近付いてくる矢場井佳奈に声を掛ける存在……勇者の仲間が居た。

 ありがとう!  敵だけど感謝するよ!

「レオにぃは僕のお婿さんになるんだよ?  小さい頃に約束したもん!」

 あ、やっぱ無しで。こいつもヤベェ奴だわ。

「うるさい雌豚。レオくんはうちのだから」

 グリンと効果音の付きそうな動きで振り返る矢場井佳奈。
 俺の幼馴染でもある1つ年下の女の子、妹尾兎斗(いもおうと)と睨み合う。

 もうやだ、帰っていいかな……
 というかこの2人は分かるんだけどもう1人は誰?

「はぁはぁ……レオきゅん……はぁはぁ……」

 誰だよ!?
 俺の名前呼びながらはぁはぁするなよ!?

 あまりの衝撃にさらに数歩後退る。
 すると、はぁはぁさんはそれに気付いたのか持っている杖を振りかぶった。

「逃がさない。『ディメンショナルロック』!」

 瞬間、俺たちと3人の女勇者たちを閉じ込めるように結界が現れた。

「はぁはぁ……これでレオきゅんは僕のもの……」

 ヤバいわ。こいつもヤバいわ。
 てか誰だよ。あっちは俺の事知ってるみたいだけど俺こんな女知らないぞ!?

「瞳さん、言いたいことはあるけどナイス!」
「チッ、陰キャがうちのレオくんに恋慕とかマジ有り得ないんですけど」

 もうやだ。逃げる。俺はアルスとよめーずに癒されるんだ!

 ほぼ本能に任せる形で【傲慢なる者の瞳】を発動、しかしなにも視界に変化は無い。

「え……」

 慌てて後方に振り返って転移を使おうとするが、これも発動しない。
 これは……この結界の効果?

「はぁはぁ……今逃げようとしたでしょ?  もう……逃がさないから」
「え、レオにぃ逃げようとしたの?  ダメだよ、レオにぃは兎斗と結婚するんだよ!」
「もう離さない。離れない。そうだ、赤ちゃん作ろ?  そうしたらレオくんはうちからもう離れられないよね?  ね?  ね?」

 言い争っていたはずの3人の瞳が俺を捕える。
 まさに蛇に睨まれた蛙、指先すら動かせない。

 もぉゃだ。ぉぅちかえる……
しおりを挟む
感想 194

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

処理中です...