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目覚めると 心優しき ゴーレムが
しおりを挟む目を覚ます。その後、意識を取り戻したはずの僕だが、何故か目を開くことが出来ないでいた。
いや、そもそも目を開けるという行為そのものを行うための目がついていないのかもしれない。
そう、僕は────
『無機物になりました』
誰にも届かない声で物静かに報告をした。
『いやいやいやん。これじゃダメだ!感覚が感じられないから分からないけど、僕の所有者は誰なんだ!?雄の手汗を染み込ませられる生活なんて嫌だァー!!』
奇抜なファッションのオッサンが随時僕を持つなんてどういう拷問だ!?雫叉くん精神欠陥患者になるよ!?
致し方ないが最後の手段……!
『神様ァ~!!どうか、どうか視力をぉ!!』
同じ童貞とか言ってすみませんした。アンタは凄い、格が違うから所有者は美少女をおぉぉ!
その時だった。
清々しい朝を迎えたように、薄らと優しい光が注がれたような感覚に見舞われた。
真っ暗な世界から救われた。つまり、清らかな汗で僕は錆びていくんだな。いいんだな!
『カウントダウンは……まてん!さぁ!我が主よ!お姿を───』
慣れた動作を行うには労力も時間もかからない。
ただし、結論をまとめるまでにかかった時間は長かった。
『───人形?』
と言いつつも、目の前にあったそれは人形という可愛らしい印象のものではなかった。
土で出来ているような、いや、まんま土でできた身体を持ち、背景を見せないような巨大な体格の二足で佇んだ怪物がいた。宝石のような禍々しい、真っ赤な目は僕から離れないでいた。が、
『お空からこんにちはなの?』
初対面相手にいうセリフでないことは承知で尋ねるのは間違いだったかもしれない。
「──グ、」
『ぐ?』
「グオォオォオォーッ!!」
あ、オワタ。
耳に届いたのは、今までより遥かに近距離で、そしてハウリングによる刺激されたような音響以上の爆発的な振動だった。
そもそもの耳がないがために、負傷するというリスクは負わないが、苦痛の声を漏らしてしまった。
『ぐッ……!何処にそんな大声出せる器官が………あ、僕も耳ないのに聞こえたか』
尚、もう一度言うが耳がないためダメージはない。
地面が気迫で波紋のような模様をつくっては消し去り、また新しい波紋をつくるといった繰り返しとなっていた。少なくとも、至近距離故に僕が人であれば鼓膜が完全に破れ、最悪脳にまで影響が出ていたであろう。
さて、時間は長めに費やした。
身体は無機物出てきている。しかし!僕が僕である以上、取るべき行動は決まっている!
『荒れし大地の化身よ!我が戒めを聞くのだ!』
発言の内容はどうでもいい。いや、精神にグッとくるものがあるが、一番声がデカかった中二な友人のセリフを真似して吐き出した。
微かにだが、目の前の怪物の叫びが弱まった。どうやら言葉が通じるか不明だが、音は聞こえるらしい。ならば次の台詞は一気に注意を拡散させる呪文!
『後に可愛いメスgーーー』
「オォオ─────(ぐりッ)」
一文字を発音し終えるまでに突風が襲った。多くの砂埃が舞う中、目に砂が入る恐れがない僕が見たのは、
『………同類に嬉しく思うか人と同じ感性なのにツッコめばいいか言葉が通じたか、どれをいえば良いのだろうか』
頭部を文字通り180度回転させて後ろをガッツリ視界に入れた怪物に珍しくも態様の仕方を迷ってしまった。
ギギキッと先程の叫びより極端に静かな音をたてて振り向いた怪物と目が合った。
『あー、うん。ウィーアーフレンド……メイビー。おーけー?』
まるで夜の一人運動をしている際に親から現行を見られたような静けさが染み渡った。
それは束の間。
『あーわかる。わかるよその気持ち。一瞬の瞬間を目に焼き尽くすのはカメラマンと気持ちは同じだって!』
「ゴーゴーッ!」
『しかもずっと此処にいちゃあ……ねぇ。異性に飢えるのはわかるよ。ってか、異性?ゴーレムに性別ってあるの?』
「ゴーォッ!」
『性別わからずとも心は男………!いや!君は漢と書いて漢だ!』
現在進行形で互いを認め合う存在になりました。
え?言葉通じるのかって?
勘だよ勘。通じ合えるものがある、と言えばいいのかな?
『通じ合える仲……僕、君を相棒と呼ぶよ!』
「ゴー!!」
『わかった。何れ二人で目にしよう!理想郷を!』
スポ根漫画如く、もしも今の僕に手があれば固い握手を交わしているだろう。
その事に少々残念だと思いつつも、本来ならば最初に尋ねる必要のある重要な情報を教えてもらうことにした。
『それで相棒。此処は何処で僕は何だい?』
記憶喪失宜しくなテンプレな文章だった。
それでも、相棒は丁寧に”ゴーゴー”と言って説明してくれた。
『ふむふむ。此処ははるか昔、神々がこの世界を創った当初から存在した洞窟で、僕、いや僕自身である剣は世界を操作するための抑止力、言うなれば鍵で今は台座に突き刺さっているのか』
「ゴー」
コクリと頷く巨体。
僕が見える範囲は相棒の姿の背景の薄暗い洞窟だけ。自身の姿は確認出来ない視界の狭さだったが最低限度のことは知れた。
情報を提供されたが、物凄い重要なことに再度確認をするように呟いた。
『…………え?棒線含めて四文字で言葉わかっちゃったの?』
ゴーだけで伝わったんだけど。
神聖文字を解読したフランスのシャンポリオンもビックリな解析能力なんだけど、僕が。
「ゴ?」
『あーいや、何でもない何でもない。自分の適応能力に驚きのあまり声が出なかっただけだよ』
真顔のつもりで首をコトンとかしげる相棒に語る。ナルシスト発言だがこの場には僕と相棒(無機物)だけしかいないため心に傷はつかないはずだ。
『それより、僕って世界の破滅を握ってるのか~。何かビックリだね~』
「ゴ~」
第三者から見てみれば、明らかに後者の内容の方が重大なのだろうが、僕は平然としていられた。
『世界の命運が僕の手にあることより最初の相棒の声がビックリ過ぎて驚く元気なくなっちゃんだんだよね』
「ゴー………」
『え?あの叫びって嬉しかったからなの?なんで?』
「ゴーゴゴー。ゴー」
『剣に意志が宿り所有者が現れた時自分の役目は終わるんだって?』
「ゴー!ゴゴー!」
『そしたら長年暮らした此処から飛び出して冒険に行くんだ。出来れば僕も一緒に冒険に行きたいなぁ』
「ゴー……。ゴ、ゴー?」
『僕も相棒といたいからね。よし!それじゃあ相棒の同行を許してくれる美少女に所有者になってもらおう!一石二鳥だね!』
「ごぉー………!」
眼球である宝石から水を溢れさせた相棒に、僕は
『共に夢を目指そう。な、相棒!』
無機物と無機物同士だからこそ結ばれた友情があった。
こうして僕の少し長い相棒との洞窟での同居が始まった。
───これを言葉にした途端。互いに目を合わせて夢見た”同居”という素敵ワードと何か違うと思い初め、涙ぐんだのは完璧な後日談だ。
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