すきま時間にShort Love Storyを。

辻堂安古市

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「始まりの日」02 君の姿を しばし留めん

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 わたしがキミのことを初めて知ったのは、高校に入学してしばらくしてから。

 集団宿泊合宿のキャンプファイヤーの時だった。
 各クラスの出し物の前に、学級委員の男子が応援団のエールを披露したんだけど、その中の一人にキミがいた。
 最初は「ふーん…あんな人が隣のクラスにいたんだ」って、そんな感じだったんだよ。そしたらたまたま隣にいたサクラが「あー、彼あんなこともするんだー」って言っていたから、なんとなく「サクラ、知り合い?」って聞いてみたんだ。


「あー、うん。中学一緒じゃないけどね。友達のカレシだったんだよ。それで知ってるんだ」

「……なーんだぁ彼女持ちかぁ……って?……「だった」??」

「なんかGW過ぎてから別れたって聞いたよ?」

「ふ~ん……そうなんだ。」


 で、この時はそれで終わり。
 クラスも違うから特に一緒に行動することもないしね。





 それでさ。
 だいたいこーいうイベントが終わったときってスナップ写真とか販売するじゃない?
 で、見て回ってたら。

 (あ。ここにもいる)
 (ここにもいた)
 (へ~ こんな顔もするんだ…)

 ……って、アレ?
 なんだって私この人の写真ばっか見つけるんだろう?
 まぁこの前サクラから聞いたから、ちょっと印象に残ってるだけだよね?

 ってその時はそう思ってたんだよ。



 







 でもね。




 わたし、ソフトボール部だからグラウンドで練習していると、そこにいるんだよ、サッカー部が。それでキミがボールを追って走ってる姿が目に入るんだよ。目で追っちゃうんだよ。

 時々キミがうちのクラスに入ってきて、キミの友達と話している姿をつい見ちゃったり、キミのクラスの前を通る時にドアや窓の隙間からちょっと中を見ちゃったりしちゃうんだよ。

 たまたま廊下ですれ違ったり、登校中のバスが同じだったりすると、自分がどんな顔してるか心配になって目を背けたり下を向いたりしちゃうんだよ。





 あー…これは多分、やっぱり、そういうことなんだ。




 でもキミはわたしのことを多分知らない。わたしはキミと知り合いになる方法が分からない。この前サクラと一緒にいたときに、キミとサクラが話してた時も、わたしはただ横にいるだけだった。ちょっと複雑な気持ちになってしまったのは、サクラには内緒だ。ちょっと近くにいて嬉しいけど恥ずかしいって気持ちと、サクラいいなぁって気持ちと…

 それから、キミは他の女の子と付き合ってるって噂もあったしね。








◇◇

 夏休み前にセンパイが引退した。
 ソフト部に残っているのはわたしとミサの2人だけになってしまった。
 2人で「来年後輩が入るまで頑張ろう!」って約束したけど、それでも2人でできることなんて、そう多くないから時間を持て余すし、精神的にも正直…辛い。それでも夏休みは週3回位にして頑張った。でも二学期に入ると、練習は夕方スタートで、お日様が沈むころには気持ちもなんだかすごく寂しくなってくる。グラウンドを見渡せば、陸上部やサッカー部、フェンスの向こうではテニス部が目一杯活動している。


 「……うらやましいな……」


 ついポツリと言ってしまった途端、目から涙があふれて止まらなくなって。ミサも一緒にグラウンドで座って泣いてしまった。


 くやしい。
 負けたくないよ。




 でも、それから部活は顧問の先生と話し合って、週2回だけ短時間するようになった。とにかく来年までソフト部をつなぐ。それが今のわたし達の目標。






◇◇◇
 
 朝、サクラとバス停でバスを待っていたら、キミが来た。つい「やったラッキー!」って思ったら、思いっきり顔に出てしまってたらしくて。


「……なになに?誰見てそんな顔してんのー?」


 ヤバ!

 そのまま「えー?何でもないよ?」って言ってはみたものの、視線の先にはキミがいる。サクラに視線を追われて……


「え?ちょっとまさか?」

 
 結局バレた。





 バス降りて教室に入るなり「ちょっと詳しく話を聞こうじゃない」って言われ、「いつから」とか「どこが」とか、まぁ聞かれ言わされて。……ニマニマしてめっちゃ楽しそうだね?もー!


「仕方ない。サクラさんが一肌脱ごうかー。おーいみんなー!」


「!!?」
 

 /// /// ちょっとやめてぇー!


「あ。ウワサをすれば」


あああああ!
なんでこんなタイミングでキミもウチのクラスに入って来るのよー!








◇◇◇◇


「なんだか最近、ウチのクラスに来ること多くなってない?」

「そ、そうかな?」


 いやまあ嬉しいデス。

 けどね。どんな顔していいか分かんなくなるし、来たら周りから突かれまくるから本当にバレないかヒヤヒヤするのよ!

 
「で、さ。隣のクラスでカレを狙ってたコ、ダメになったみたいよ?」

「ふ…ふ~ん?そうなんだ?」

「何言ってんの!チャンスだよ!」

「チャンスだなんて……」

 
 だってまだ話したこともないんだよ?
 そうだよ。
 まだ見てるだけでいいよ。
 だって断られたら悲しいもの。
 わたしはキミを見てるだけでも嬉しいんだから。



 そう思ってたある日。バスに乗ったらなんと隣にキミが!いや、乗る時にさりげなーくタイミング合わせてみたんだけど、まさか肩が当たるくらい近いとは思わないじゃない!

 それで心の中でキャーキャー言っていたら、



「……席、座る?」

 って!って!!!

「えと、大丈夫です」


 咄嗟に答えたわよだって隣にいたかったしでもその後は揺れるバスの中で肩が肩が肩が当たって体温が近くて近くで見て顔チラッと見たらやっぱり近くて恥ずかしくて見れなくてどんな顔していいか分かんなくて早くバス着いてよでもちょっとかなりもったいないからもう少しこのままで……!





 
「……サ、サクラ~」

「どしたの?」 

「あのね!あのね……!」

「そうかそうか。それじゃあそろそろプロジェクトを立ち上げましょうか」


「へ………?」



 わたしは知らなかったんだ。

 いつの間にか周りがニマニマしたいがために超おせっかいをやこうとしていたことを。








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