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7.追想編
33姫殺しのラピスラズリ 後編
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***
『……へえ、そうなの』
耳元で聞こえる彼女の声は、明るいものだった。きっと今日も、ピンクとリボンで彩られた部屋で、布団で横になりながら、手持ち無沙汰にしていたのだろう。
しばらく黙っていると、彼女は弾むような口ぶりで言った。
『実はね、あの子、一昨日、おじいちゃんへの挨拶ついでに、私のところにも顔を出してくれてね、こんなこと言うのよ。「お前は外に出られないのに、私だけ出ていくことになってごめんな」って。だから私、思わず「どうぞ出てってください」って言っちゃった。そしたら、どうしたと思う? 笑っちゃうわよ、あの子ったら、ショック受けたような顔で部屋を出ていこうとするのよ』
受話器の向こうで、くすくすと声を押し殺して笑うのが聞こえた。ひとしきり笑った後、彼女は再び話し出した。
『私ね、ずっとあの子には外に出て行ってほしいと思ってたの。もちろん、嫌いとかそういう意味じゃないわよ。あの子は、私とは違う。外の世界へ羽ばたける翼がある。私がまぶしく見つめるだけの彼方を手に入れられるの』
遠くを見ている。電話越しだが、そんな雰囲気が伝わってきた。わずかながら、普段のお茶目さを控えた大人びた声色だったから。
『だからね、私は言ったの。この小さな箱庭の外、大きな世界で輝いてみせてって。そして証明してって。温室で育てられた深窓の花だって、誰よりも立派に咲きほこれることを』
その響きの余韻をかみしめる間、しばしの沈黙が訪れた。やがて、含み笑いの後、彼女は言った。
『あなたのその決断に、私は心から礼を言うわ。ありがとう。あと、あなたってば、私のこと、いつまでも名字で呼ぶものだから、友達と思ってくれてないのかと思ったけど、こうして連絡をくれたから嬉しいわ。嬉しいついでに教えてあげる。記念すべき巣立ちは、三日後の日の出と同時よ。本人が言ってたんだから間違いないわ。……行ったげて、コウ』
「……ああ」
受話器を持つ手に力を入れ、彼は強くうなずいた。
***
弥生の空に白い陽光がさす。朝焼けの雲居に目を細め、彼女は一つ深呼吸した。
見送りはいらないと言っておいた。そのために、世話になったひとたちへの挨拶は前日までに済ませておいたのだ。もう、振り返る必要さえない。リュックの中、大切にしまい込んだ入隊試験の合格証書が背中を押してくれる。
首元で、不揃いな髪が風で震えた。村びとは皆まだ起きたところであろう、静寂に満ちた門出の朝。
村の果てを示す簡易な柵が、手を広げた幅だけ途切れ、出入り口を示す札が立っている。ここは、越えれば果てしない道が広がる玄関口だ。
感懐を捨て、一歩踏み出し、その境界を越えようとした――そんな彼女に、彼は叫んだ。
「待ったあぁあっ!」
リュック越しに、肩が跳ねるのを見た。主体から双体に変化したコウは、全速力で走ってきたせいで乱れた息を整えながら、こんな早朝に大声を出してしまったことを後悔した。だが、出してしまったものはもう引っ込められないので、投げやりぎみに意識の外へと追いやった。
主体で走ってきたために足音には気づかなかったのだろう、ルシルは驚いたようだったが、こちらを振り向くことなく背を向け続けている。それでも、立ち止まっているところを見るに、話を聞く意思はあるのだろうと思われた。衝撃的な断髪式以降、学校の卒業までもその後も、一度も口をきいていない。だから、緊張がないわけではなかった。しかし、コウはまとわりつくそれを打ち破るように声を張った。
「ルシル、オレはあの後、ずっと考えてた。村長の孫としての使命を置いて、ここを去ると言ってから、オレはお前をどんな顔で見送ればいいのか考えてたんだ。笑えばいいのか、怒ればいいのか、泣けばいいのか……ずいぶん悩んだよ」
ルシルは、やはり無言で向こうを向き続けている。コウは、一度つばを飲み込んで、告げた。
「そして、答えが出た。オレは――お前を見送らないことにした」
わずか、ほんのわずかに、ルシルの髪が揺れた。風は止んでおり、真の静寂の中だった。
「お前とは、気づいたらずっと一緒だったな。楽しい時も、つらい時も、いつだってそばにいた。そんなヤツ、今となっちゃ、お前しかいねえんだ。オレはそんな、唯一の存在であるお前を、一人で行かせられねえみたいだ」
ルシルは何も言う気配はないが、万が一にでも先を取られないように、間髪入れずに続ける。
「お前がもう誰かに守られ続けるのは嫌なのはわかってる。生まれ変わろうとしてることも。だから、オレはお前を後ろ手にかばったりはしねえ。呼べば聞こえるだけの距離にいて、後ろが不安なら背中を合わせてやる。これからはそういう形でお前を支えていきたいんだ。河道家令嬢としてじゃない。一人の親友として、そして――同じ希兵隊の仲間として!」
大きく踏み出すと、コウはルシルの頭の上に手を伸ばし、あちらを向いたままの顔の前に一枚の紙を垂らした。それは、希兵隊入隊を認める唯一の証書。滑り込みで受験したコウの実力を、隊員となるに足ると証明する正式な通知だ。試験は個別に行うため、最後まで彼女の知るところではなかったはずである。現に、今、華奢な肩が再び跳ねたのを彼は確かに見た。
「一緒に行こう、ルシル。共に助け合って、誰かを守れるくらい強くなろう」
言いたかったことを最後まで言い切った後も、ルシルは背中しか見せてはくれなかった。ただ、今は振り向いてほしくない気もするような、複雑な心情だった。こんなに頬が熱いのだ。夕日ならまだしも、朝日では隠してくれるか心もとない。
しばらくして、一過性の火照りもひいたころ、大きく、しかし品のある嘆息が聞こえた。
「日の出というものがどういうものか、知っているか」
「……は?」
題意がよくわからず、間の抜けた声を漏らした。そのまま一時停止していると、合格証書がふっと短い息で揺らされた。邪魔だという意思表示に、慌ててルシルの顔の前に垂らしっぱなしだったそれを引き上げる。
大事に鞄にしまい込んでいると、ルシルは逆光の中、答えを投げてよこした。
「太陽のてっぺんが水平線から出た瞬間のことだ。これくらいは教養だ、知っておけ」
「……はあ」
またも、間の抜けた声。それが何だ、と返しかけて、コウはハッとルシルの背中越しに見える朝日を見た。まぶしすぎて直視はできないが、ちょうど地平線から完全に飛び立つところと見えた。ルシルと話をしていた時間は五分にも満たない。その間に寝床から顔を出し、一日の勤め先たる天上へ出発するほど、太陽はせっかちではない。
呆けるコウを、ようやくルシルは振り返った。ぽかんと小さく口を開けて固まる村一番の親友に、最大限のしたり顔を見せて、
「――遅い。待ちくたびれたぞ」
それだけ言って、ずんずん進み始める。慌てて後を追うと、彼女は先ほどまでの重い沈黙は何だったのかというほどの軽やかさで愚痴をこぼした。
「やれやれ、お前ならもっと早くにそう言ってくれると思っていたのに、当日まで引っ張るとは」
「ちょ、まさか、最初から……!?」
「まあ、お前が来なくても日が昇り切ったら行っていたさ。あと、過保護気味なセリフを吐いても置いていっていた。とはいえ、期待通りになるとは思っていたから心配はしていなかったがな」
「だって、おまっ……」
「何を悩んでいたのだか。そんなに難しい話でもなかったろうに。ああ、小心者だなぁ」
「待てコラ、ちょっ……お前なあぁぁ!」
静かな朝に、脱力しきった叫び声と、吹っ切れたような笑い声が溶けて消えた。
この日、垂河村から、庶民の一人息子と村長の令孫が旅立っていった。
けれど、村の外、飛壇への道のりに、貴賤の違う通行人は一人もいなかった。
並んで歩む二人の名は、大和コウと河道ルシル。
ただの、幼馴染だ。
***
彼は、そこまで話すと、これで終わりだという風に肩をすくめた。
会議は終わったというのに、何やら雷華に興味があるらしい美雷が彼女と話し込んでいるものだから、護衛官代理も帰れない。会議の間から今までも、警護のためにずっと縁側のあたりで立ち続けていたコウを心配して芽華実が出てきて、そこにくっついてきた雷奈と氷架璃が上京に至るまでの話をしてくれとせがむものだから、暇つぶしに語って聞かせていたのだった。最初から最後まで話し終えたというのに、まだ気まぐれな最高司令官は部屋の中だ。どうやら、修学旅行の後に壮大な自論を展開した雷華に興味があるらしい。ちなみに、アワとフーは惜しそうにしながらも、会議終了と同時に帰路についている。
「そういう経緯があって、オレも希兵隊になったわけだが、割と合ってるみたいだ。もともと、体力には自信あったしな」
「うん、体力あるのは知ってる。あんた、今日二時間くらい立ちっぱなしだろ」
縁側に座った三人の前で、コウは立ったまま回顧録を話していたのだった。どんな突発的な危険が美雷に降りかかろうとも、すぐに対処できるようにするためである。
「すごいな。貧血知らずだろ。ちなみに、そっちは体力テストとかあんの? シャトルラン何回?」
「二〇〇だけど」
「……一〇〇?」
「二〇〇だっつの」
中学三年生の男子なら、運動部でも一三〇回こなせれば称賛される程だ。褒めればいいのか引けばいいのかわからずにいる三人に、コウはパーカーのポケットに手を突っ込んだまま口を開いた。
「そうそう、さっきの話は、ルシルが人間たちにも話してもいいと思うって言ってたから話したんだ。少し前なら、人間に身の上を明かそうなんて毛ほども思わなかっただろうし、そもそも自分が由緒ある家の出だってことは同僚にもひた隠しにしてたからな。まあ、後者は本家の従姉が上京してきたこともあって、知れ渡っちまったから隠さなくなったわけだが」
「なんか、お嬢様って言われてみれば違和感ないよな。こう、伝統ある武家の娘、って感じが」
「言葉遣いはちょっと固いけれど、前から品があると思っていたのよ」
「あっ、もしかして、ルシルの髪型ってさっきの話が関係しとる? ほら、ルシルってショートカットに見えて後ろに少し長い毛を残しとろう? またロングヘアにしてみたくなって、どっちにも見えるようなスタイルにしとるとか?」
ぴんと挙手して言い放った雷奈に、両脇の二人はなるほどとうなずくが、コウは手をひらっと振って否定した。
「あいつは今でも短いままでいたいらしいけど、オレに気を遣ってるみたいだ。ま、それでも上手いもんで、鏡で自分を見たときには短く見えるように、オレが後ろや横から見たら長く見えるようにしてるんだと。『後ろ手にかばわず、背中を合わせるだけなら、正面からの見た目は関係ないな』なんて、生意気言うもんだぜ」
「おぉー……名言ったい。しかも、それが今も続いとるのはさすがったい」
「せっかく長い髪を気に入ってもらえてたんだもの、ルシルの気持ちもわかるわ」
「……ってかさ」
雷奈が小さく拍手し、芽華実が何度もうなずく横で、氷架璃は膝に頬杖を突き、反対の手でコウに指を突き付けた。
「コウって、ルシルのこと好きだよね?」
「……は!?」
叫んだまま口を閉じることができず、牙を見せたままのコウに、氷架璃は「だってそうだろ」と得意げに笑う。
「さっきの話しぶりからもわかるし、今までの態度見ててもそうだし、そもそも幼馴染を放っておけなくて自分まで上京するとか、好きに決まってんじゃん。ねえ、芽華実、雷奈」
同意を求められた二人は、かたや頬を染めてどぎまぎ、かたや呆れながら答えた。
「わ、私もそうかなーって思ったけど、聞く勇気なかったっていうか、間違ってたら申し訳なかったっていうか……」
「まさか直接聞くとは思わんかったばい。単刀直入なとこは氷架璃らしかね」
「絶対そうだと思ったもん! な、コウ?」
「い、いきなり何を……」
「さあ、白状するんだ。ルシルのことが好きなんだろ? え?」
催眠術でもかけるようなジェスチャーで両手の指をうねうね動かす氷架璃を、隣の雷奈がどうどうとなだめる。顔をうつむかせて肩を震わせるコウに、まさか怒鳴られるのではと芽華実がびくびくするが、冷やかし好きの少女は止まらない。あからさまにはやし立てる声で、黙り込んだ少年をからかい続ける。
「ほらほら言ってみろよ、どうなのさー?」
「…………」
「聞こえないぞー?」
「……す……たな……」
「ん?」
「好きで悪かったなああぁぁっ!」
境内中に響き渡る大声量だった。日柄もよくてうたたねしていた木々や鳥たちも叩き起こさんばかりの叫びは、石畳も灯篭も鳥居も、そこらじゅうの全てをびりびりと震わせ、残響の後にくっきりとした静寂を残した。
爆風にさらされたようにのけぞって固まった三人に、コウは頬に赤みを浮かべながらまくしたてる。
「ああそうだよ、好きだよ! 凛々しくて正しくて優しいあいつを、村にいた時からずっと見てた! 他の誰よりもあいつの支えになりたいって思ったから一緒に旅立ったんだ! 悪いか! 文句あるヤツぁ前に出やがれ!」
吹っ切れたような潔さで声を張り上げると、さながら猫のようにフーフーと息を荒らげた。その気迫は、たじろいだ氷架璃が「お、男前ぇ~……」と乾いた拍手を漏らすほどだ。灰色の鋭い眼光でジトッとにらまれた女子三人衆は、「文句ないです」とばかりにふるふると首を振った。
ようやく興奮が収まると、コウはそっぽを向いて、今度はまるで逆方向に針を振り切ったように、妙に静かな声で言った。
「……オレのことなんてどうでもいいんだよ。退屈だったから、頼まれるまま昔話をしただけだ。そんなこと追及する暇があったら、時尼の心配をしてやれ」
吹き抜ける風でほとぼりの冷めたコウの横顔。そこに浮かんだ表情を見て、三人は神妙に互いを見交わした。
「そういえば、コウが護衛に来たのは、体調不良の霞冴の代理やもんね。……そんなにひどかと?」
「ちょっと前から様子はおかしかったんだが、最近どうにもな……。昨日も、焦りまくったルシルに呼ばれて行ったら、あいつ、真っ青になって廊下で座り込んでたし」
そう言ったきり、考え込むようにコウは口を閉ざした。その顔に色濃く出ている当惑と憂慮から、相当な懸念を抱いていることが伝わってきた。
芽華実が指先をいじりながら、丁寧に言葉を選ぶ。
「いろいろ、あったものね。……大変なことが重なって、疲れているのかもしれないわ」
「っつーか、あいつが体壊し始めたのって、四月初旬くらいからなんだが、原因っていったら……やっぱり……」
コウが眉間に深くしわを刻む。一度唇を引き結んだ後、口を開きかけた、その時だ。
「お待たせ、コウ君。帰りましょうか」
雷奈たちは、障子を開く音に次いで聞こえた、柔らかい声に振り返った。雷華は部屋から見送っており、出てきたのは美雷だけだ。彼女は朗らかな笑みを浮かべながら、少し驚いたようにぱちぱちと瞬きをした。
「どうしたの、コウ君、そんな怖い顔して」
美雷の視線を追い、雷奈たちは再び護衛官代理に目を向けた。斜を向いたまま黙っていたコウが、ゆっくりと最高司令官に目を遣る。その瞳に、敵意に似たギラつきが見えたのは、気のせいではないだろう。
ぞく、と背筋に悪寒が走るほどの睥睨なのに、美雷は表情を少しも崩さない。それどころか、人差し指を口元にあてていたずらっぽく笑う。
「ああ、さっきの大声なら聞こえていたけど、大丈夫よ。見てたらわかるから、もう知ってるし」
「……んなことどうでもいいんだよ」
赤面するどころか眉一つ動かさず、コウはそう言い捨てると、触れれば切れそうな空気をまとって鳥居のほうへと歩みだした。自分たちに向けられた視線でもないのに射すくめられた三人に、美雷は何事もなかったかのように愛想よく挨拶を残して、足取り軽くコウの後を追った。
「…………」
雷奈は、コウが言い損ねた先を察すると同時に、手水舎の裏に隠れて泣いていた少女の涙を思い出していた。
雷奈自身も通過したことのある、成長と破滅の分岐点から、彼女はまだ歩みだせずにいる。
だが、停滞の時ももうすぐ終わりそうな気配がして、
――同時に、とてつもなく嫌な予感がした。
『……へえ、そうなの』
耳元で聞こえる彼女の声は、明るいものだった。きっと今日も、ピンクとリボンで彩られた部屋で、布団で横になりながら、手持ち無沙汰にしていたのだろう。
しばらく黙っていると、彼女は弾むような口ぶりで言った。
『実はね、あの子、一昨日、おじいちゃんへの挨拶ついでに、私のところにも顔を出してくれてね、こんなこと言うのよ。「お前は外に出られないのに、私だけ出ていくことになってごめんな」って。だから私、思わず「どうぞ出てってください」って言っちゃった。そしたら、どうしたと思う? 笑っちゃうわよ、あの子ったら、ショック受けたような顔で部屋を出ていこうとするのよ』
受話器の向こうで、くすくすと声を押し殺して笑うのが聞こえた。ひとしきり笑った後、彼女は再び話し出した。
『私ね、ずっとあの子には外に出て行ってほしいと思ってたの。もちろん、嫌いとかそういう意味じゃないわよ。あの子は、私とは違う。外の世界へ羽ばたける翼がある。私がまぶしく見つめるだけの彼方を手に入れられるの』
遠くを見ている。電話越しだが、そんな雰囲気が伝わってきた。わずかながら、普段のお茶目さを控えた大人びた声色だったから。
『だからね、私は言ったの。この小さな箱庭の外、大きな世界で輝いてみせてって。そして証明してって。温室で育てられた深窓の花だって、誰よりも立派に咲きほこれることを』
その響きの余韻をかみしめる間、しばしの沈黙が訪れた。やがて、含み笑いの後、彼女は言った。
『あなたのその決断に、私は心から礼を言うわ。ありがとう。あと、あなたってば、私のこと、いつまでも名字で呼ぶものだから、友達と思ってくれてないのかと思ったけど、こうして連絡をくれたから嬉しいわ。嬉しいついでに教えてあげる。記念すべき巣立ちは、三日後の日の出と同時よ。本人が言ってたんだから間違いないわ。……行ったげて、コウ』
「……ああ」
受話器を持つ手に力を入れ、彼は強くうなずいた。
***
弥生の空に白い陽光がさす。朝焼けの雲居に目を細め、彼女は一つ深呼吸した。
見送りはいらないと言っておいた。そのために、世話になったひとたちへの挨拶は前日までに済ませておいたのだ。もう、振り返る必要さえない。リュックの中、大切にしまい込んだ入隊試験の合格証書が背中を押してくれる。
首元で、不揃いな髪が風で震えた。村びとは皆まだ起きたところであろう、静寂に満ちた門出の朝。
村の果てを示す簡易な柵が、手を広げた幅だけ途切れ、出入り口を示す札が立っている。ここは、越えれば果てしない道が広がる玄関口だ。
感懐を捨て、一歩踏み出し、その境界を越えようとした――そんな彼女に、彼は叫んだ。
「待ったあぁあっ!」
リュック越しに、肩が跳ねるのを見た。主体から双体に変化したコウは、全速力で走ってきたせいで乱れた息を整えながら、こんな早朝に大声を出してしまったことを後悔した。だが、出してしまったものはもう引っ込められないので、投げやりぎみに意識の外へと追いやった。
主体で走ってきたために足音には気づかなかったのだろう、ルシルは驚いたようだったが、こちらを振り向くことなく背を向け続けている。それでも、立ち止まっているところを見るに、話を聞く意思はあるのだろうと思われた。衝撃的な断髪式以降、学校の卒業までもその後も、一度も口をきいていない。だから、緊張がないわけではなかった。しかし、コウはまとわりつくそれを打ち破るように声を張った。
「ルシル、オレはあの後、ずっと考えてた。村長の孫としての使命を置いて、ここを去ると言ってから、オレはお前をどんな顔で見送ればいいのか考えてたんだ。笑えばいいのか、怒ればいいのか、泣けばいいのか……ずいぶん悩んだよ」
ルシルは、やはり無言で向こうを向き続けている。コウは、一度つばを飲み込んで、告げた。
「そして、答えが出た。オレは――お前を見送らないことにした」
わずか、ほんのわずかに、ルシルの髪が揺れた。風は止んでおり、真の静寂の中だった。
「お前とは、気づいたらずっと一緒だったな。楽しい時も、つらい時も、いつだってそばにいた。そんなヤツ、今となっちゃ、お前しかいねえんだ。オレはそんな、唯一の存在であるお前を、一人で行かせられねえみたいだ」
ルシルは何も言う気配はないが、万が一にでも先を取られないように、間髪入れずに続ける。
「お前がもう誰かに守られ続けるのは嫌なのはわかってる。生まれ変わろうとしてることも。だから、オレはお前を後ろ手にかばったりはしねえ。呼べば聞こえるだけの距離にいて、後ろが不安なら背中を合わせてやる。これからはそういう形でお前を支えていきたいんだ。河道家令嬢としてじゃない。一人の親友として、そして――同じ希兵隊の仲間として!」
大きく踏み出すと、コウはルシルの頭の上に手を伸ばし、あちらを向いたままの顔の前に一枚の紙を垂らした。それは、希兵隊入隊を認める唯一の証書。滑り込みで受験したコウの実力を、隊員となるに足ると証明する正式な通知だ。試験は個別に行うため、最後まで彼女の知るところではなかったはずである。現に、今、華奢な肩が再び跳ねたのを彼は確かに見た。
「一緒に行こう、ルシル。共に助け合って、誰かを守れるくらい強くなろう」
言いたかったことを最後まで言い切った後も、ルシルは背中しか見せてはくれなかった。ただ、今は振り向いてほしくない気もするような、複雑な心情だった。こんなに頬が熱いのだ。夕日ならまだしも、朝日では隠してくれるか心もとない。
しばらくして、一過性の火照りもひいたころ、大きく、しかし品のある嘆息が聞こえた。
「日の出というものがどういうものか、知っているか」
「……は?」
題意がよくわからず、間の抜けた声を漏らした。そのまま一時停止していると、合格証書がふっと短い息で揺らされた。邪魔だという意思表示に、慌ててルシルの顔の前に垂らしっぱなしだったそれを引き上げる。
大事に鞄にしまい込んでいると、ルシルは逆光の中、答えを投げてよこした。
「太陽のてっぺんが水平線から出た瞬間のことだ。これくらいは教養だ、知っておけ」
「……はあ」
またも、間の抜けた声。それが何だ、と返しかけて、コウはハッとルシルの背中越しに見える朝日を見た。まぶしすぎて直視はできないが、ちょうど地平線から完全に飛び立つところと見えた。ルシルと話をしていた時間は五分にも満たない。その間に寝床から顔を出し、一日の勤め先たる天上へ出発するほど、太陽はせっかちではない。
呆けるコウを、ようやくルシルは振り返った。ぽかんと小さく口を開けて固まる村一番の親友に、最大限のしたり顔を見せて、
「――遅い。待ちくたびれたぞ」
それだけ言って、ずんずん進み始める。慌てて後を追うと、彼女は先ほどまでの重い沈黙は何だったのかというほどの軽やかさで愚痴をこぼした。
「やれやれ、お前ならもっと早くにそう言ってくれると思っていたのに、当日まで引っ張るとは」
「ちょ、まさか、最初から……!?」
「まあ、お前が来なくても日が昇り切ったら行っていたさ。あと、過保護気味なセリフを吐いても置いていっていた。とはいえ、期待通りになるとは思っていたから心配はしていなかったがな」
「だって、おまっ……」
「何を悩んでいたのだか。そんなに難しい話でもなかったろうに。ああ、小心者だなぁ」
「待てコラ、ちょっ……お前なあぁぁ!」
静かな朝に、脱力しきった叫び声と、吹っ切れたような笑い声が溶けて消えた。
この日、垂河村から、庶民の一人息子と村長の令孫が旅立っていった。
けれど、村の外、飛壇への道のりに、貴賤の違う通行人は一人もいなかった。
並んで歩む二人の名は、大和コウと河道ルシル。
ただの、幼馴染だ。
***
彼は、そこまで話すと、これで終わりだという風に肩をすくめた。
会議は終わったというのに、何やら雷華に興味があるらしい美雷が彼女と話し込んでいるものだから、護衛官代理も帰れない。会議の間から今までも、警護のためにずっと縁側のあたりで立ち続けていたコウを心配して芽華実が出てきて、そこにくっついてきた雷奈と氷架璃が上京に至るまでの話をしてくれとせがむものだから、暇つぶしに語って聞かせていたのだった。最初から最後まで話し終えたというのに、まだ気まぐれな最高司令官は部屋の中だ。どうやら、修学旅行の後に壮大な自論を展開した雷華に興味があるらしい。ちなみに、アワとフーは惜しそうにしながらも、会議終了と同時に帰路についている。
「そういう経緯があって、オレも希兵隊になったわけだが、割と合ってるみたいだ。もともと、体力には自信あったしな」
「うん、体力あるのは知ってる。あんた、今日二時間くらい立ちっぱなしだろ」
縁側に座った三人の前で、コウは立ったまま回顧録を話していたのだった。どんな突発的な危険が美雷に降りかかろうとも、すぐに対処できるようにするためである。
「すごいな。貧血知らずだろ。ちなみに、そっちは体力テストとかあんの? シャトルラン何回?」
「二〇〇だけど」
「……一〇〇?」
「二〇〇だっつの」
中学三年生の男子なら、運動部でも一三〇回こなせれば称賛される程だ。褒めればいいのか引けばいいのかわからずにいる三人に、コウはパーカーのポケットに手を突っ込んだまま口を開いた。
「そうそう、さっきの話は、ルシルが人間たちにも話してもいいと思うって言ってたから話したんだ。少し前なら、人間に身の上を明かそうなんて毛ほども思わなかっただろうし、そもそも自分が由緒ある家の出だってことは同僚にもひた隠しにしてたからな。まあ、後者は本家の従姉が上京してきたこともあって、知れ渡っちまったから隠さなくなったわけだが」
「なんか、お嬢様って言われてみれば違和感ないよな。こう、伝統ある武家の娘、って感じが」
「言葉遣いはちょっと固いけれど、前から品があると思っていたのよ」
「あっ、もしかして、ルシルの髪型ってさっきの話が関係しとる? ほら、ルシルってショートカットに見えて後ろに少し長い毛を残しとろう? またロングヘアにしてみたくなって、どっちにも見えるようなスタイルにしとるとか?」
ぴんと挙手して言い放った雷奈に、両脇の二人はなるほどとうなずくが、コウは手をひらっと振って否定した。
「あいつは今でも短いままでいたいらしいけど、オレに気を遣ってるみたいだ。ま、それでも上手いもんで、鏡で自分を見たときには短く見えるように、オレが後ろや横から見たら長く見えるようにしてるんだと。『後ろ手にかばわず、背中を合わせるだけなら、正面からの見た目は関係ないな』なんて、生意気言うもんだぜ」
「おぉー……名言ったい。しかも、それが今も続いとるのはさすがったい」
「せっかく長い髪を気に入ってもらえてたんだもの、ルシルの気持ちもわかるわ」
「……ってかさ」
雷奈が小さく拍手し、芽華実が何度もうなずく横で、氷架璃は膝に頬杖を突き、反対の手でコウに指を突き付けた。
「コウって、ルシルのこと好きだよね?」
「……は!?」
叫んだまま口を閉じることができず、牙を見せたままのコウに、氷架璃は「だってそうだろ」と得意げに笑う。
「さっきの話しぶりからもわかるし、今までの態度見ててもそうだし、そもそも幼馴染を放っておけなくて自分まで上京するとか、好きに決まってんじゃん。ねえ、芽華実、雷奈」
同意を求められた二人は、かたや頬を染めてどぎまぎ、かたや呆れながら答えた。
「わ、私もそうかなーって思ったけど、聞く勇気なかったっていうか、間違ってたら申し訳なかったっていうか……」
「まさか直接聞くとは思わんかったばい。単刀直入なとこは氷架璃らしかね」
「絶対そうだと思ったもん! な、コウ?」
「い、いきなり何を……」
「さあ、白状するんだ。ルシルのことが好きなんだろ? え?」
催眠術でもかけるようなジェスチャーで両手の指をうねうね動かす氷架璃を、隣の雷奈がどうどうとなだめる。顔をうつむかせて肩を震わせるコウに、まさか怒鳴られるのではと芽華実がびくびくするが、冷やかし好きの少女は止まらない。あからさまにはやし立てる声で、黙り込んだ少年をからかい続ける。
「ほらほら言ってみろよ、どうなのさー?」
「…………」
「聞こえないぞー?」
「……す……たな……」
「ん?」
「好きで悪かったなああぁぁっ!」
境内中に響き渡る大声量だった。日柄もよくてうたたねしていた木々や鳥たちも叩き起こさんばかりの叫びは、石畳も灯篭も鳥居も、そこらじゅうの全てをびりびりと震わせ、残響の後にくっきりとした静寂を残した。
爆風にさらされたようにのけぞって固まった三人に、コウは頬に赤みを浮かべながらまくしたてる。
「ああそうだよ、好きだよ! 凛々しくて正しくて優しいあいつを、村にいた時からずっと見てた! 他の誰よりもあいつの支えになりたいって思ったから一緒に旅立ったんだ! 悪いか! 文句あるヤツぁ前に出やがれ!」
吹っ切れたような潔さで声を張り上げると、さながら猫のようにフーフーと息を荒らげた。その気迫は、たじろいだ氷架璃が「お、男前ぇ~……」と乾いた拍手を漏らすほどだ。灰色の鋭い眼光でジトッとにらまれた女子三人衆は、「文句ないです」とばかりにふるふると首を振った。
ようやく興奮が収まると、コウはそっぽを向いて、今度はまるで逆方向に針を振り切ったように、妙に静かな声で言った。
「……オレのことなんてどうでもいいんだよ。退屈だったから、頼まれるまま昔話をしただけだ。そんなこと追及する暇があったら、時尼の心配をしてやれ」
吹き抜ける風でほとぼりの冷めたコウの横顔。そこに浮かんだ表情を見て、三人は神妙に互いを見交わした。
「そういえば、コウが護衛に来たのは、体調不良の霞冴の代理やもんね。……そんなにひどかと?」
「ちょっと前から様子はおかしかったんだが、最近どうにもな……。昨日も、焦りまくったルシルに呼ばれて行ったら、あいつ、真っ青になって廊下で座り込んでたし」
そう言ったきり、考え込むようにコウは口を閉ざした。その顔に色濃く出ている当惑と憂慮から、相当な懸念を抱いていることが伝わってきた。
芽華実が指先をいじりながら、丁寧に言葉を選ぶ。
「いろいろ、あったものね。……大変なことが重なって、疲れているのかもしれないわ」
「っつーか、あいつが体壊し始めたのって、四月初旬くらいからなんだが、原因っていったら……やっぱり……」
コウが眉間に深くしわを刻む。一度唇を引き結んだ後、口を開きかけた、その時だ。
「お待たせ、コウ君。帰りましょうか」
雷奈たちは、障子を開く音に次いで聞こえた、柔らかい声に振り返った。雷華は部屋から見送っており、出てきたのは美雷だけだ。彼女は朗らかな笑みを浮かべながら、少し驚いたようにぱちぱちと瞬きをした。
「どうしたの、コウ君、そんな怖い顔して」
美雷の視線を追い、雷奈たちは再び護衛官代理に目を向けた。斜を向いたまま黙っていたコウが、ゆっくりと最高司令官に目を遣る。その瞳に、敵意に似たギラつきが見えたのは、気のせいではないだろう。
ぞく、と背筋に悪寒が走るほどの睥睨なのに、美雷は表情を少しも崩さない。それどころか、人差し指を口元にあてていたずらっぽく笑う。
「ああ、さっきの大声なら聞こえていたけど、大丈夫よ。見てたらわかるから、もう知ってるし」
「……んなことどうでもいいんだよ」
赤面するどころか眉一つ動かさず、コウはそう言い捨てると、触れれば切れそうな空気をまとって鳥居のほうへと歩みだした。自分たちに向けられた視線でもないのに射すくめられた三人に、美雷は何事もなかったかのように愛想よく挨拶を残して、足取り軽くコウの後を追った。
「…………」
雷奈は、コウが言い損ねた先を察すると同時に、手水舎の裏に隠れて泣いていた少女の涙を思い出していた。
雷奈自身も通過したことのある、成長と破滅の分岐点から、彼女はまだ歩みだせずにいる。
だが、停滞の時ももうすぐ終わりそうな気配がして、
――同時に、とてつもなく嫌な予感がした。
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