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2.覚醒編
6閃光 後編
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***
氷架璃と芽華実が追いついた時、クロは犬をブロック塀に追い詰めていた。犬は激しく吠えているが、尾は足の間に挟んでおり、臆していることは一目瞭然だ。ギャンギャンと吠え立てる犬に、クロはひるむことなく近づいていく。
「やべっ、背水の陣だぞ!」
氷架璃が速度を上げてクロと犬に肉薄した。クロは犬に向かって、再び水を発射しようとする。黒い小さな手と手の間に水があふれだし、それが犬のほうへと飛んでいくが、水流にたたきつけられる直前、犬はスライディングしてきた氷架璃の腕に抱かれた。
「あーっぶね、ギリギリセー……」
「氷架璃!」
達成感に浸ったのも束の間、クロはすかさず追撃を行う。今度の攻撃は、球状の水の球ではなく、弾丸のような水の弾。小さいが、威力は破壊的で、避けた氷架璃の後ろのブロック塀が小さくえぐれた。それを見て、氷架璃は震え上がる。
「なっ、なんつー威力……ぎゃっ!?」
よそ見をしていた彼女は、つまずいて体勢を崩した。クロがその好機を見逃すはずもなく、再び体の前に水を生成する。――否、湯気が出ているのを見る限り、それは水ではない。これまでの水は、ボコボコと泡立ったりもしない。明らかに、熱湯だった。
ぞっとした氷架璃の腕が緩んだのだろう、犬がまたも抜け出し、クロに向かって吠え出した。
「バカ、やめろっ、やけどするぞ!」
止めようとする氷架璃だが、目の前で煮えたぎる熱湯への恐怖でそれ以上近づくことができない。犬が威嚇し続けるのは勇敢だからではない。吠え続けたその結果、何が起きるかがわからない無知に起因するのだ。
クロの生み出す熱湯が量を増した。
「やめろ……」
犬は吠え続ける。
「やめろって……」
芽華実と、追いついてきた雷奈や蘭華の声が響く。
「お前ら、二人とも……」
ボゴッ、とひときわ大きな水泡が弾けて。
「――やめろっていってんだろッ!」
一瞬だった。あたりを真っ白に包んだ光の、その発生源もわからないほどに。目を突き刺すような強烈な光は、収まるのもすぐだったが、まともに受けたその場の全員が、視力を取り戻すのに時間を要した。
「な、なんね、今の……」
「すっごくまぶしかったんだけど……」
「し、知らん……って、おっ?」
氷架璃は、水浸しになったアスファルトに、クロが伸びているのを見た。その体から湯気が出ているのを見る限り、熱湯を自分がかぶってしまったらしい。
「何だか分からんけど……、ざまあみろってんだ」
口の端をつり上げて笑い、どうせならプロが間に合わなかったことを皮肉ってやろうと、蘭華に目を移し――。
「な、何見てんだよ」
氷架璃は思わず一歩下がった。正確には、蘭華に見つめられていたことに驚いたのではない。彼女の常盤色の目が、信じられないものを見るような、困惑に満ちたものだったからだ。
「ありえない……」
「何が? クロのヤツが自滅したことがか?」
「いいえ、それは自らの作り出した熱湯を被ったことによるという自明の理。ありえないのは、クロを驚かせてひっくり返すほどの、閃光です」
蘭華は青ざめた顔で視線を落とした。
「今のは光の猫術、光術です。私は草猫、このクロは見たところ水属性。この場にいる、猫術を使える者はほかにいない。いない……はずなのに」
そこまで言って、彼女はきっと氷架璃を見据えた。そして、震える唇を開き、
「氷架璃さん、あなた、どうして猫術を使えるんですか?」
蘭華の言葉は、静かに落ちてアスファルトの地面にしみこんだ。
しばらく、誰もが言葉を失った。
我に返った氷架璃は、引きつった笑みを浮かべて言う。
「な、何言って……。私が猫術を? そんなわけないだろ」
「いいえ、発動したのはあなたです。証拠ならありますよ。手鏡は持っていますか?」
雷奈と芽華実が、同時に氷架璃を振り返った。その目を見て、息をのむ。雷奈が慌ててスマホを取り出し、自撮りモードにして氷架璃に突き付けた。カメラを通じて自分の顔が画面に映し出されたのを見て、氷架璃は思わず口を覆う。
「……どうなってんだよ、これ」
声を漏らすと同時に元に戻りはしたものの、彼女は確かに、黒いはずの自分の虹彩が青く変色しているのを見た。
未だ混乱の渦から抜けられない三人に、蘭華は静かに告げる。
「この件は、上に報告します。きっとほかの組織にも伝わるでしょう。どうにも今回の人間界開放は、イレギュラーなことばかり起きますね……」
彼女はしゃがんで、犬を抱き上げた。あれだけ吠えていた犬が今まで静かだったのは、先ほどの光で気絶していたかららしかった。
「とにかく、今はこの犬を飼い主のもとへ届けましょう。少し離れてしまいましたがね」
***
「佐藤」と書かれた表札の家には、犬小屋が見当たらなかった。どうやら屋内で飼っていたらしい。
インターホンを押して、ミルクという名のチワワを保護していることを伝えると、相手の女性は慌てて玄関を開けた。
「ありがとうございます、本当に、なんてお礼をしたらよいか……!」
まだ眠ったままのチワワを抱いて、その若い女性は涙ぐんだ。雷奈たちは、聞き込みで得られた情報と違う飼い主像に戸惑いを覚えた。どう見ても、老女には見えない。
すると、それに気づいたのか、あるいは気が緩んだためか、女性は涙をぬぐいながら話し始めた。
「この子は、私の祖母の犬だったんです。三日ほど前にいなくなってしまって。祖母も心配していて、私たちも探しに行こうと思っていたんですが……無理でした」
「何かあったんですか?」
芽華実が聞くと、女性はいっそう涙を浮かべた。
「その翌日、祖母が亡くなったんです。それで、捜索どころじゃなくなって」
脳卒中による突然の死だったという。つい先日まで、犬の散歩に出かけていた元気な人だったにもかかわらず。
それでも、犬だけでも戻ってきてくれてよかったとほほ笑む女性の言葉に、芽華実までも泣きだしそうになる。
上がってお茶でも、という女性の誘いを断り、三人は佐藤家を後にした。
道を進み、角を曲がると、一匹の猫が待機していた。胡桃色の体で、耳と尾の先が葉のように緑がかっている。首には黄緑の首輪をつけていた。
「あなた、蘭華ったいね?」
「はい。会話は大体聞こえていましたよ。すみません、巻き込んでしまって。そして、ありがとうございました」
二本足で立ちあがると、彼女はぺこんとお辞儀をした。そして、物憂げな表情を浮かべると、
「……飼い主さん、亡くなったそうですね」
「ああ……うん」
「気休めかもしれませんが……最悪の事態は免れたのだと思います。あの犬にまで何かあったら、お孫さんはもっと悲しんだでしょう。無事でよかったです。……そして、それは氷架璃さんが光術を発動したおかげです」
最後の言葉に、穏やかだった氷架璃の顔が曇る。蘭華は彼女を刺激しないよう、慎重に言葉を選んだ。
「ショックを受けた心中、お察しします。ですが、このことはぜひ明らかにしなければなりません。氷架璃さんも、何か心当たりがないか……少し考えてみてください」
失礼します、と会釈し、蘭華は去っていった。フィライン・エデンに戻るのだろう。
三人はしばらく、無言で立ちすくんでいた。
雷奈はちらりと氷架璃を見やって、すぐに視線を落とした。
(私もイレギュラーって言われた、ばってん……氷架璃もイレギュラー? 一体、どういうこと……?)
その時、雷奈の中にはある予感があった。
けれど、その予感はあまりにも突飛で、馬鹿げていて。
彼女は、頭の外へと押しやるようにして、想像してしまった三人のビジョンを打ち消した。
氷架璃と芽華実が追いついた時、クロは犬をブロック塀に追い詰めていた。犬は激しく吠えているが、尾は足の間に挟んでおり、臆していることは一目瞭然だ。ギャンギャンと吠え立てる犬に、クロはひるむことなく近づいていく。
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「あーっぶね、ギリギリセー……」
「氷架璃!」
達成感に浸ったのも束の間、クロはすかさず追撃を行う。今度の攻撃は、球状の水の球ではなく、弾丸のような水の弾。小さいが、威力は破壊的で、避けた氷架璃の後ろのブロック塀が小さくえぐれた。それを見て、氷架璃は震え上がる。
「なっ、なんつー威力……ぎゃっ!?」
よそ見をしていた彼女は、つまずいて体勢を崩した。クロがその好機を見逃すはずもなく、再び体の前に水を生成する。――否、湯気が出ているのを見る限り、それは水ではない。これまでの水は、ボコボコと泡立ったりもしない。明らかに、熱湯だった。
ぞっとした氷架璃の腕が緩んだのだろう、犬がまたも抜け出し、クロに向かって吠え出した。
「バカ、やめろっ、やけどするぞ!」
止めようとする氷架璃だが、目の前で煮えたぎる熱湯への恐怖でそれ以上近づくことができない。犬が威嚇し続けるのは勇敢だからではない。吠え続けたその結果、何が起きるかがわからない無知に起因するのだ。
クロの生み出す熱湯が量を増した。
「やめろ……」
犬は吠え続ける。
「やめろって……」
芽華実と、追いついてきた雷奈や蘭華の声が響く。
「お前ら、二人とも……」
ボゴッ、とひときわ大きな水泡が弾けて。
「――やめろっていってんだろッ!」
一瞬だった。あたりを真っ白に包んだ光の、その発生源もわからないほどに。目を突き刺すような強烈な光は、収まるのもすぐだったが、まともに受けたその場の全員が、視力を取り戻すのに時間を要した。
「な、なんね、今の……」
「すっごくまぶしかったんだけど……」
「し、知らん……って、おっ?」
氷架璃は、水浸しになったアスファルトに、クロが伸びているのを見た。その体から湯気が出ているのを見る限り、熱湯を自分がかぶってしまったらしい。
「何だか分からんけど……、ざまあみろってんだ」
口の端をつり上げて笑い、どうせならプロが間に合わなかったことを皮肉ってやろうと、蘭華に目を移し――。
「な、何見てんだよ」
氷架璃は思わず一歩下がった。正確には、蘭華に見つめられていたことに驚いたのではない。彼女の常盤色の目が、信じられないものを見るような、困惑に満ちたものだったからだ。
「ありえない……」
「何が? クロのヤツが自滅したことがか?」
「いいえ、それは自らの作り出した熱湯を被ったことによるという自明の理。ありえないのは、クロを驚かせてひっくり返すほどの、閃光です」
蘭華は青ざめた顔で視線を落とした。
「今のは光の猫術、光術です。私は草猫、このクロは見たところ水属性。この場にいる、猫術を使える者はほかにいない。いない……はずなのに」
そこまで言って、彼女はきっと氷架璃を見据えた。そして、震える唇を開き、
「氷架璃さん、あなた、どうして猫術を使えるんですか?」
蘭華の言葉は、静かに落ちてアスファルトの地面にしみこんだ。
しばらく、誰もが言葉を失った。
我に返った氷架璃は、引きつった笑みを浮かべて言う。
「な、何言って……。私が猫術を? そんなわけないだろ」
「いいえ、発動したのはあなたです。証拠ならありますよ。手鏡は持っていますか?」
雷奈と芽華実が、同時に氷架璃を振り返った。その目を見て、息をのむ。雷奈が慌ててスマホを取り出し、自撮りモードにして氷架璃に突き付けた。カメラを通じて自分の顔が画面に映し出されたのを見て、氷架璃は思わず口を覆う。
「……どうなってんだよ、これ」
声を漏らすと同時に元に戻りはしたものの、彼女は確かに、黒いはずの自分の虹彩が青く変色しているのを見た。
未だ混乱の渦から抜けられない三人に、蘭華は静かに告げる。
「この件は、上に報告します。きっとほかの組織にも伝わるでしょう。どうにも今回の人間界開放は、イレギュラーなことばかり起きますね……」
彼女はしゃがんで、犬を抱き上げた。あれだけ吠えていた犬が今まで静かだったのは、先ほどの光で気絶していたかららしかった。
「とにかく、今はこの犬を飼い主のもとへ届けましょう。少し離れてしまいましたがね」
***
「佐藤」と書かれた表札の家には、犬小屋が見当たらなかった。どうやら屋内で飼っていたらしい。
インターホンを押して、ミルクという名のチワワを保護していることを伝えると、相手の女性は慌てて玄関を開けた。
「ありがとうございます、本当に、なんてお礼をしたらよいか……!」
まだ眠ったままのチワワを抱いて、その若い女性は涙ぐんだ。雷奈たちは、聞き込みで得られた情報と違う飼い主像に戸惑いを覚えた。どう見ても、老女には見えない。
すると、それに気づいたのか、あるいは気が緩んだためか、女性は涙をぬぐいながら話し始めた。
「この子は、私の祖母の犬だったんです。三日ほど前にいなくなってしまって。祖母も心配していて、私たちも探しに行こうと思っていたんですが……無理でした」
「何かあったんですか?」
芽華実が聞くと、女性はいっそう涙を浮かべた。
「その翌日、祖母が亡くなったんです。それで、捜索どころじゃなくなって」
脳卒中による突然の死だったという。つい先日まで、犬の散歩に出かけていた元気な人だったにもかかわらず。
それでも、犬だけでも戻ってきてくれてよかったとほほ笑む女性の言葉に、芽華実までも泣きだしそうになる。
上がってお茶でも、という女性の誘いを断り、三人は佐藤家を後にした。
道を進み、角を曲がると、一匹の猫が待機していた。胡桃色の体で、耳と尾の先が葉のように緑がかっている。首には黄緑の首輪をつけていた。
「あなた、蘭華ったいね?」
「はい。会話は大体聞こえていましたよ。すみません、巻き込んでしまって。そして、ありがとうございました」
二本足で立ちあがると、彼女はぺこんとお辞儀をした。そして、物憂げな表情を浮かべると、
「……飼い主さん、亡くなったそうですね」
「ああ……うん」
「気休めかもしれませんが……最悪の事態は免れたのだと思います。あの犬にまで何かあったら、お孫さんはもっと悲しんだでしょう。無事でよかったです。……そして、それは氷架璃さんが光術を発動したおかげです」
最後の言葉に、穏やかだった氷架璃の顔が曇る。蘭華は彼女を刺激しないよう、慎重に言葉を選んだ。
「ショックを受けた心中、お察しします。ですが、このことはぜひ明らかにしなければなりません。氷架璃さんも、何か心当たりがないか……少し考えてみてください」
失礼します、と会釈し、蘭華は去っていった。フィライン・エデンに戻るのだろう。
三人はしばらく、無言で立ちすくんでいた。
雷奈はちらりと氷架璃を見やって、すぐに視線を落とした。
(私もイレギュラーって言われた、ばってん……氷架璃もイレギュラー? 一体、どういうこと……?)
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