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1.フィライン・エデン編
1始まらなかった日常 ③
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***
次の日は、予想に逆らわず始業式であってくれた。
式が終わった後、三月までと同じ三年B組の教室で、やはり同じ担任教師を待つ間、雷奈達はクラスメイトに探りを入れてみた。
「え? 彼氏と?」
「うん。修学旅行で京都に行ったとき、付き合っとるって教えてくれたばってん、今もうまくいっとる?」
初等部から三人の共通の友人である希湖は、世間話の延長線で尋ねられたその問いに、少し照れながら答えた。
「もちろん。でも、小六の修学旅行は京都じゃなくて広島でしょ? 京都が選択肢に入るとしたら、中等部からなんだから、行くなら今年じゃない」
直近の修学旅行は、去年の秋に行った京都だ。だが、彼女は当然のように小学生時代の修学旅行に言及した。
それから、ふと首をかしげる。
「……あれ? でも、彼氏ができたのって中二の春だったような……。じゃあ、いつ雷奈たちに話したんだっけ……」
しばらく、天井を見つめて考え込む。けれど、それもそう長くはなく。
「……ま、いっか。それより、話戻るんだけど、そのA組の子がさ……」
こうしたやりとりを何人かと繰り返してわかったことを、雷奈たちは帰り道に復習していた。
「ようは、記憶は一年分ちゃんと残っとるけど、時間の巻き戻りには気づかず、こちらがヒントを与えたら疑問には思うばってん、考えるのを途中でやめてしまう……ってのが共通しとるね」
「記憶も消えちゃって完全に巻き戻っている、というわけじゃないのね」
「だな」
巻き戻った一年分のエピソードはきちんと覚えているものの、それがいつの出来事であったかが曖昧になっており、中三を繰り返していることに気づいていない……というのが所見だ。
「クラスメイトもほぼ同じではあったけど、ちらほら見たことないメンツもいたしな」
思い出せるだけでも、去年にはクラスにいなかったはずのおとなしそうな黒髪をした男子や、ほがらかで柔らかい雰囲気の色白な女子を見かけた。もしかすると、少しだけ変動があるのかもしれない。
「クラスも担任も変わらんっちゃけどねー」
そう言いながら先頭を歩く雷奈は、今日のホームルームで受け取ったクラス章――胸ポケットにつけておく、それだけで「皇学園中等部三年B組の生徒」と素性がわかるバッヂ――を手持無沙汰に放り投げてはキャッチしている。
「おい、そんなことしてたら落とすぞ」
「大丈……あっ」
「言わんこっちゃない」
キャッチし損ねた小さなバッヂは、指に当たってあらぬ方向へ飛んでいき、アスファルトの上を転がっていった。
バツが悪そうに笑いながら、雷奈はバッヂを追いかけた。
そうして手を伸ばした先で――バッヂは、持ち主よりも少しばかり大きな手に拾い上げられた。
「落としたよ」
微笑みながらそう言って、手にしたものを差し出した人物を、雷奈は目を丸くして見上げた。
中性的で愛嬌のある顔立ちをした少年だ。低身長の雷奈からすれば見上げる背丈ではあるが、氷架璃よりも少し高いくらいで、男子にしてはそれほど長身ではない。黒い髪はおとなしめの長さ形。
その後ろには、連れと思しき少女も立っていた。おっとりとした目元は柔和で、髪はさらさらとした明るいブラウンのセミロング。身長は芽華実と同じで平均くらいか。
「あ、ありがとう」
しばらく二人を見つめていた雷奈は、我に返ると、戸惑いながらもバッヂを受け取った。
手のひらに所属の証を乗せながら、もう一度まじまじと二人を見る。
二つ、気になる点があった。
一つ目は。
「あなた達も……皇の生徒?」
「ってか、え、同じクラス?」
芽華実と氷架璃が代弁したように、少年が着ているのはファスナー式の黒い学ラン、少女が着ているのは白地に赤が鮮やかなセーラー服だ。さらに、胸につけているバッヂは銀縁、三つ星、「B」と書かれている。それぞれ中等部、三年生、B組を表すものだ。雷奈が今、胸ポケットにつけなおしているものと同じである。
そして、もう一つは。
「あー、そういえば始業式後に……いたような、いなかったような」
「ひどいなあ、仮にもクラスメイトじゃないか」
記憶を掘り起こして頬をかく氷架璃に返した、やや高めの中性的な声で紡がれる言葉が、確信に至らしめた。
「悪い、覚えてないわ。でも、声に聞き覚えがあるから、すれ違ったことくらいあるかもな」
「無理もないよ。ボク、今日編入したばかりだもの」
「……は?」
「まあ、記憶は多少操作したから、みんなボクのことは、前からクラスにいる地味なヤツ、って認識してるだろうけどね」
「記憶、って……」
「仮にもクラスメイト」
呟いた雷奈に注目が集まる。解を得て、むしろ落ち着き払った雷奈は、ゆっくり一つまばたきをして言った。
「あなた達、本当に仮の、仮初めのクラスメイトったいね」
まっすぐに二人を見つめる雷奈の視線を、氷架璃と芽華実は何度か目でなぞった。そして、ハッと瞠目して、編入生二人を凝視する。
少女は微笑み、少年はその口から正否を告げる。
猫のような小さな牙が覗く口から。
「理解が早くて助かるよ」
その声は――声変わりしてなお中性的な少年の声が、どこで聞き覚えたのかを思い出して、氷架璃は叫んだ。
「えええ!? あんた、まさか……アワ!?」
「突然叫ばないでよ、猫は耳が敏感なんだから」
耳を手で覆って非難する少年は、どこからどう見ても人間だ。今、手で覆っている耳は頭ではなく顔の両脇にあり、しっぽが生えているわけでもない。だが、その声が、そして言葉の内容が、彼が前日出会った水色の猫であることの証明だった。
「少しは気持ちの整理がついたかな」
「ごめんね、驚かせちゃったわよね」
少女の声も、間違いなく昨日会った白猫のものだ。
「どういうこと……あんた達、人にもなれんの!?」
「正確には、人の姿をとれる、といったところよ。人になったわけじゃないから。フィライン・エデンの猫は、人間以上の存在。人間と同じ形になれるのは当然なの」
そういう理屈なのだろうか、と思わないでもない雷奈達だったが、少なくともフィライン・エデンの常識ではそうなっているらしい。
だが、百歩譲ってそうであったとして。
「で、なして皇の制服?」
「元々の目的のためよ」
フーの言葉を引き継いで、アワが説明する。
「ボクたちの世界は、かつて人間界の文化や技術、資源を元に発展してきた。現在は独自の発展を遂げて、一部人間界を凌駕する部分もあるけれど、それでも異なる発展をし続ける人間界の有形無形の産物を取り入れて、今後の発展に役立てようとする動きは変わらないんだ」
そのためには、人間界に、ひいては人間に接触する必要がある。そう彼は言う。
「昨日、ボクは君たちが『選ばれし人間』だと言ったよね。正確には『選人』というんだけど、その人間がまさにフィライン・エデンと人間界の橋渡しの役目をすることになっているんだ。神の気まぐれのもとに突然現れる選人。その出現とともに、通常は閉じられている二つの世界をつなぐ扉は開かれる。ボクたちは君たちという選人の出現とともに、交流を図ろうとやってきたんだ」
そう語る表情は真剣なものだ。だが、次なる言葉とともに、アワの顔が当惑に揺れた。
「なのに……こんなに不測の事態続きとは……」
「不測の事態……続き……?」
まだ情報は消化不良だったが、困惑に揺れる言葉が引っかかって雷奈は首をかしげた。
確か、時間の巻き戻りは彼らにとっても不測の事態だったはずだが、続きとはいかようなことであろうか。
「時間の巻き戻りだけじゃない。前代未聞なんだ」
雷奈達に正面から向かい合って、アワは告げようとする。
「いないはずの――」
――その背後に、何かがいた。
次の日は、予想に逆らわず始業式であってくれた。
式が終わった後、三月までと同じ三年B組の教室で、やはり同じ担任教師を待つ間、雷奈達はクラスメイトに探りを入れてみた。
「え? 彼氏と?」
「うん。修学旅行で京都に行ったとき、付き合っとるって教えてくれたばってん、今もうまくいっとる?」
初等部から三人の共通の友人である希湖は、世間話の延長線で尋ねられたその問いに、少し照れながら答えた。
「もちろん。でも、小六の修学旅行は京都じゃなくて広島でしょ? 京都が選択肢に入るとしたら、中等部からなんだから、行くなら今年じゃない」
直近の修学旅行は、去年の秋に行った京都だ。だが、彼女は当然のように小学生時代の修学旅行に言及した。
それから、ふと首をかしげる。
「……あれ? でも、彼氏ができたのって中二の春だったような……。じゃあ、いつ雷奈たちに話したんだっけ……」
しばらく、天井を見つめて考え込む。けれど、それもそう長くはなく。
「……ま、いっか。それより、話戻るんだけど、そのA組の子がさ……」
こうしたやりとりを何人かと繰り返してわかったことを、雷奈たちは帰り道に復習していた。
「ようは、記憶は一年分ちゃんと残っとるけど、時間の巻き戻りには気づかず、こちらがヒントを与えたら疑問には思うばってん、考えるのを途中でやめてしまう……ってのが共通しとるね」
「記憶も消えちゃって完全に巻き戻っている、というわけじゃないのね」
「だな」
巻き戻った一年分のエピソードはきちんと覚えているものの、それがいつの出来事であったかが曖昧になっており、中三を繰り返していることに気づいていない……というのが所見だ。
「クラスメイトもほぼ同じではあったけど、ちらほら見たことないメンツもいたしな」
思い出せるだけでも、去年にはクラスにいなかったはずのおとなしそうな黒髪をした男子や、ほがらかで柔らかい雰囲気の色白な女子を見かけた。もしかすると、少しだけ変動があるのかもしれない。
「クラスも担任も変わらんっちゃけどねー」
そう言いながら先頭を歩く雷奈は、今日のホームルームで受け取ったクラス章――胸ポケットにつけておく、それだけで「皇学園中等部三年B組の生徒」と素性がわかるバッヂ――を手持無沙汰に放り投げてはキャッチしている。
「おい、そんなことしてたら落とすぞ」
「大丈……あっ」
「言わんこっちゃない」
キャッチし損ねた小さなバッヂは、指に当たってあらぬ方向へ飛んでいき、アスファルトの上を転がっていった。
バツが悪そうに笑いながら、雷奈はバッヂを追いかけた。
そうして手を伸ばした先で――バッヂは、持ち主よりも少しばかり大きな手に拾い上げられた。
「落としたよ」
微笑みながらそう言って、手にしたものを差し出した人物を、雷奈は目を丸くして見上げた。
中性的で愛嬌のある顔立ちをした少年だ。低身長の雷奈からすれば見上げる背丈ではあるが、氷架璃よりも少し高いくらいで、男子にしてはそれほど長身ではない。黒い髪はおとなしめの長さ形。
その後ろには、連れと思しき少女も立っていた。おっとりとした目元は柔和で、髪はさらさらとした明るいブラウンのセミロング。身長は芽華実と同じで平均くらいか。
「あ、ありがとう」
しばらく二人を見つめていた雷奈は、我に返ると、戸惑いながらもバッヂを受け取った。
手のひらに所属の証を乗せながら、もう一度まじまじと二人を見る。
二つ、気になる点があった。
一つ目は。
「あなた達も……皇の生徒?」
「ってか、え、同じクラス?」
芽華実と氷架璃が代弁したように、少年が着ているのはファスナー式の黒い学ラン、少女が着ているのは白地に赤が鮮やかなセーラー服だ。さらに、胸につけているバッヂは銀縁、三つ星、「B」と書かれている。それぞれ中等部、三年生、B組を表すものだ。雷奈が今、胸ポケットにつけなおしているものと同じである。
そして、もう一つは。
「あー、そういえば始業式後に……いたような、いなかったような」
「ひどいなあ、仮にもクラスメイトじゃないか」
記憶を掘り起こして頬をかく氷架璃に返した、やや高めの中性的な声で紡がれる言葉が、確信に至らしめた。
「悪い、覚えてないわ。でも、声に聞き覚えがあるから、すれ違ったことくらいあるかもな」
「無理もないよ。ボク、今日編入したばかりだもの」
「……は?」
「まあ、記憶は多少操作したから、みんなボクのことは、前からクラスにいる地味なヤツ、って認識してるだろうけどね」
「記憶、って……」
「仮にもクラスメイト」
呟いた雷奈に注目が集まる。解を得て、むしろ落ち着き払った雷奈は、ゆっくり一つまばたきをして言った。
「あなた達、本当に仮の、仮初めのクラスメイトったいね」
まっすぐに二人を見つめる雷奈の視線を、氷架璃と芽華実は何度か目でなぞった。そして、ハッと瞠目して、編入生二人を凝視する。
少女は微笑み、少年はその口から正否を告げる。
猫のような小さな牙が覗く口から。
「理解が早くて助かるよ」
その声は――声変わりしてなお中性的な少年の声が、どこで聞き覚えたのかを思い出して、氷架璃は叫んだ。
「えええ!? あんた、まさか……アワ!?」
「突然叫ばないでよ、猫は耳が敏感なんだから」
耳を手で覆って非難する少年は、どこからどう見ても人間だ。今、手で覆っている耳は頭ではなく顔の両脇にあり、しっぽが生えているわけでもない。だが、その声が、そして言葉の内容が、彼が前日出会った水色の猫であることの証明だった。
「少しは気持ちの整理がついたかな」
「ごめんね、驚かせちゃったわよね」
少女の声も、間違いなく昨日会った白猫のものだ。
「どういうこと……あんた達、人にもなれんの!?」
「正確には、人の姿をとれる、といったところよ。人になったわけじゃないから。フィライン・エデンの猫は、人間以上の存在。人間と同じ形になれるのは当然なの」
そういう理屈なのだろうか、と思わないでもない雷奈達だったが、少なくともフィライン・エデンの常識ではそうなっているらしい。
だが、百歩譲ってそうであったとして。
「で、なして皇の制服?」
「元々の目的のためよ」
フーの言葉を引き継いで、アワが説明する。
「ボクたちの世界は、かつて人間界の文化や技術、資源を元に発展してきた。現在は独自の発展を遂げて、一部人間界を凌駕する部分もあるけれど、それでも異なる発展をし続ける人間界の有形無形の産物を取り入れて、今後の発展に役立てようとする動きは変わらないんだ」
そのためには、人間界に、ひいては人間に接触する必要がある。そう彼は言う。
「昨日、ボクは君たちが『選ばれし人間』だと言ったよね。正確には『選人』というんだけど、その人間がまさにフィライン・エデンと人間界の橋渡しの役目をすることになっているんだ。神の気まぐれのもとに突然現れる選人。その出現とともに、通常は閉じられている二つの世界をつなぐ扉は開かれる。ボクたちは君たちという選人の出現とともに、交流を図ろうとやってきたんだ」
そう語る表情は真剣なものだ。だが、次なる言葉とともに、アワの顔が当惑に揺れた。
「なのに……こんなに不測の事態続きとは……」
「不測の事態……続き……?」
まだ情報は消化不良だったが、困惑に揺れる言葉が引っかかって雷奈は首をかしげた。
確か、時間の巻き戻りは彼らにとっても不測の事態だったはずだが、続きとはいかようなことであろうか。
「時間の巻き戻りだけじゃない。前代未聞なんだ」
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