黒猫ちゃんは愛される

体育祭の時期だそうです

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　side：桐生大和

　初めて彼に興味を持ったのは、食堂だった。

　編入生を迎えに行った琉唯が、面白い玩具を見つけた子供みたいな顔で生徒会室に帰って来たのがきっかけで、慧を筆頭に編入生に興味を持った皆が食堂へ行く事になったんだ。

　おれは最初、行かないつもりだった。どうせおれは上手く話せないから編入生に会いに行ったとしても、いつもと同じ、無言で終わるだけだし。そもそも他人にあまり興味がない。生徒会の皆は別だけどね。

　だけど湊に誘われて、朝陽と夕陽に物理的に背中を押されて一緒に行くことになったんだ。

　慧と琉唯に関しては、遅いって言われた。最初からおれも行く前提で話が進んでたみたいだ。生徒会の皆はおれが上手く話せなくても、自然に接してくれる。みんなのおかげであんなに嫌だった生徒会書記なんて目立つ役職に居ても、なんとかやっていけてると思う。

　食堂に着いて、琉唯が駆け寄った子は髪の毛が鳥の巣というか･･････マリモみたいというか？なんか、個性的な子だった。

　琉唯はずっと抱きたいランキング1位を総ナメしてるけど、本人は生粋のバリタチだ。誰かを誘う時は小柄なチワワみたいな可愛らしい子を引っ掛けてるイメージがあるけど、これはまた不思議な人選。琉唯、好み変わった？

　まぁおれは琉唯が誰を抱こうが特に気にしないし、好きなようにすればいいと思う。ちょっと後ろの方でボーッと慧と琉唯がわちゃわちゃしてる所を見てると、湊と朝陽と夕陽が編入生じゃない子を観察してる事に気付いた。誰を見てるんだろ？

　チラリと目線を動かすと、そこには風紀のおーかみくんが居て、誰かを甲斐甲斐しく世話してた。あのおーかみくんが人の世話を⋯⋯？しかもなんだか楽しそうだ。

　あれ本当に中等部の時、世界中皆敵、みたいな顔してたおーかみくん？

　首を傾げつつも、おーかみくんをそんな風に変えたあの黒髪の子に興味が出たんだ。

　そのままジッと後頭部を見てたんだけど、そうしているうちに正面を見たくなってきた。どんな顔で食べさせてもらってるんだろう？あのおーかみくんに世話させてるんだから、女王様みたいな感じなんだろうか？

　おれは小さい時から気配をひそめるのが得意だ。注意して見られてたらさすがに無理だけど、普段なら気付かれずに近寄ることが出来る。これ、おれの数少ない得意技だと思ってる。だから気付かれないように場所を移動して、黒髪くんの顔を見てみようって思ったんだ。

　スルスルっと移動して、黒髪くんの斜め前で止まると、そこには柔らかそうなほっぺたを幸せそうにもぐもぐと動かすお人形さんみたいに綺麗な美少年が居たんだ。

　おーかみくんから差し出されるご飯を嬉しそうに食べ続ける彼から目が離せない。彼が美味しそうにご飯を頬張るたびに、胸がほこほこする。おいしい、とにっこりと顔を綻ばせる彼を見るたびに鼓動が跳ねた。

　美人故、無表情だと凄く綺麗だけど無機質なお人形のよう。なのに顔を綻ばせると途端に血の通った可愛さが前面に出てくる。彼が幸せそうにする度にどうして鼓動が跳ねてしまうのか。おれには分からなかったけど、慧と琉唯が殴り飛ばされたのにも気付かないくらい彼から目が離せなかった。