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第3章
第16話 因縁の相手
しおりを挟む1つずつ戻ってくる感覚。
最初は耳だった。
「順調に餌が揃っている、あとは時間との勝負になりそうですね。」
「うるせぇ、何回も同じ事言うんじゃねぇ。」
「少しは貴様も考えたらどうなんです!?何度も何度ももううんざりですよ私は!さっさと戻って研究を進めないといけないというのに、使えない馬鹿ばっかりで!」
「へーへー」
「兎も角!今回は絶対に成功させねばなりません!あの忌々しい爬虫類を引き剥がし、私はAになってみせる!」
「へーへー」
「だというのに…何ですか!貴様は私の完璧な計算式にどうしていつもXを入れたがるのです!?全くいい加減学習したらどうなのですか!?絶対に失敗する!そう…絶対に!!あぁぁぁぁぁ」
「言ってろ。」
聞き覚えのある声だ。
そうだあれは忘れもしないあの声。
冷たい…風を感じる。強く声の方から吹いてくる。
振動を感じる。
一定のリズムで地面が震える様な振動。
「よぉ。お目覚めかな?お姫様。」
段々光を感じるようになってきた。瞼を開こうとするが力が入らない。体の感覚が無い。
「このままバラしてやりたいが生憎と時間が押してるんでねぇ。」
体が浮き上がる感覚。
運ばれているのか!?
視界が開けてきた!ぼんやりと奴の影が見える。
何処へ運ぶ気だ!
叫びは外へ飛び出す事は無く内側で反響するばかり。
どうする!!
肩を通って指先まで感覚が戻ると次は腰を通って足先へと感覚が伸びていくのが分かる。
手首が固定されている。だとすると足もか。
視界がハッキリしてきた。
「あぁ?暴れないのか?もう意識は戻っただろ。それともお姫様はこのまま運ばれるのがご所望か?」
黙れ!ックソ動けよ俺の口!!
「まぁ度の道行くとこは皆んな同じってな。」
ゔっ!!
いきなり地面に落とされ、腰に強い衝撃が走る。
「クソ!離せ!離せ!!」
首を捻って声の方を見ると、男が体を簀巻きにされたラビットの両耳を鷲掴んで持ち上げていた。
「妻と娘に会わせろ!!家族に手を出してみろお前を」
「お前を?何だよ?雌だろうが子だろうがそんなこっちゃどうでもいい事だ。」
ギシャーーー!!
ワイバーンの声!?
よく見ると拘束されたワイバーンが男の前に固定されている。そのワイバーンへ向かってまるでボールでも投げるかのようにラビットを放った。
「うわぁぁぁぁ!!」
一瞬だった。辺りに飛び散る血液と肉を引きちぎる生々しい音と共に骨を噛み砕く鈍い破裂音。
「ひぃぃぃ…」
「なんて酷い事を!」
他にも何羽ものラビットが拘束されている。
「酷い?んな事はないだろ?これはお前たちにしかできねー役目?とか何とからしいぜ。どうせ今だけさ、お前らは俺らよりも何倍も幸せなんだぜ?これ以上贅沢言うんじゃねーよ!!」
「ゔっぐ!!」
「あはっ!!ぅぅぅ…」
今までの遊んでいるような、どこか意志の無い表情をしていた男がラビット達に蹴りを入れるほんの一時、強い怒りの表情に変わった気がした。
「さぁて、そろそろ準備するかな。」
男はワイバーンにもう一羽ラビットを与えると食べている隙にワイバーンの背に乗り込んだ。
驚いたワイバーンが必死に抵抗するが、枷と背に付けられた蔵でしっかりと男と固定されており振り払えない。
「よーしいい子だ。」
「俺も連れて行け!」
絞り出した声に男は意外にも驚いた反応を見せた。
「いいぜ。乗れよ」
ギシャーー!!
男はナイフを投げて俺とワイバーンの枷を切った。
枷から解放た途端にワイバーンは大きな翼を広げ、空へと飛び立とうとしている。
俺はフラつく足に力を込めて駆け出した。
バサッバサッ
両翼から放たれる空気に葉や小枝が混ざり俺の頬や肩をかすめて行く。
怯むな
あっという間に浮き上がっていくワイバーンに向かって飛びかかり右手を伸ばした。
とどけーーー!!!!
右手の中指は、蔵の端を薄っすらかすめ舐めて重力に引き戻されていく。
ダメだとどかない!
その時、伸ばした右腕の脇下に男の腕が回り、引き上げられる。
「掴め!!」
右手で腕を、宙に浮いていた左手で肩口を掴んで何とかワイバーンの背に乗り込む事が出来た。
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