周三

不知火美月

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そう、思っていたのに・・・

もう全力で走れる、ジャンプも木にだって登れるし、狩りだって出来る。
明日、人間が来て練習が始まったら逃げよう。
なぁに人間はリハビリ、リハビリ言うので精一杯さ。
最初の扉は人間が開けた隙間を通って、後はドアに近づけば勝手に開く物ばかりなんだ楽勝さ。

だけど、次の練習は二度とやってこなかった。
朝人間がやってくると、俺は狭い檻に入れられて外へ運び出されてしまった。

そしてやってきたのが、犬や猫が沢山いる家だった。
そこでは毎日知らない人間が来ては誰かを連れて出ていく。
きっと俺は売られてしまったんだ。
考えてもみたら、足が欠けた猫を誰が好き好んで世話をしたいのか、きっとここにいる奴らは皆人間の餌になるのだろう。
そう、俺も――

「ほぉら、クロくん。君もお出かけしましょうねー。しっかり可愛くするんだよぉ?そうすればちゃんと選んで貰えるからねぇ!」

今日が俺の命日なんだぁ、きっとそうだ・・・
怖いなぁ・・・せめて痛くないようにして欲しい。

乗り物に揺られる間は恐怖で押しつぶされそうだった。
俺以外にも沢山の奴らが乗っているが、皆少なからず怯えていた。

「また玩具にされる玩具に!!」
「嫌だぁ俺はここに居たい!外はもうごめんだ!いい子にしますからいい子に」
「み、皆静かに。静かにしないと檻を蹴られるのよ!いや、それだけじゃないわ殴られるかもしれないの!!お願いだから静かにみんな静かにしてぇぇぇぇぇ!!!!」
「あはははは、皆もう終わり。終わりなのよ?知らないの?今から暗くて狭くて汚くて痛ぁい場所に行くの。そこでずっとずっとずーっと立ってるのよ?楽しいでしょ!!あはははは」

ふと、昔の事を思い出した。
『人間はとっても危険な生き物よ。決して油断しては駄目、忘れないで』
ママ、俺は今貴女の言っていた意味が痛い程分かります。


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