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籠の外3
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瞼をついて入る光が徐々に弱まると、騒がしい程に様々な音が聞こえ出した。
しかしそれらは全て聞き慣れた鳥籠での風で草葉が揺れる音や土を踏む音、ファーストウルフの遠吠え、ワイバーンの鳴き声や羽音、天龍の咆哮何かでは無い。
初めは聞き慣れない音だと思ったが、よく考えればよく知っている音だ。
じわりと胸の奥が熱くなる感覚・・・
そうだ、懐かしいんだ。
それはいつも普通のように聞いていた音、いつの間にか異常と通常があべこべになっていたんだ——。
金属が擦れる音、エンジン音、鳥のさえずりや、雑踏の音、人の声・・・
慌てて目を開くとそこには目を疑うような光景が広がっていた。
「これは——。街だ!俺達以外にこんなに人がいっぱいいたのか!?」
それは紛れもない街であった。木ではなく沢山の人口建物が並び、聞こえてくるのは獣ではなく人の声。夢にまで見た世界が今目の前にあるのだ、そう思った瞬間に今までの鳥籠での出来事が思い出されて、気づけば涙の粒が頬を伝って石畳に一瞬小さなシミをつくっていた。
「コウジ、どうした?大丈夫か?」
傍らでシュガーが心配そうに俺の顔を見上げている。平気だと伝えるとシュガーは心配させるなよ~。と微笑む。
「ではそろそろご移動願えますか?」
微笑ましく笑い合う2人の間を割って入るように男は独りでに歩き始めた。
ここで置いていかれては困ると、俺とシュガーは慌てて男の背中について行った。
男について歩いていると、今いる場所が大きな橋の上である事に気がついた。レンガのように均等に組まれた岩が脚となり橋を支え、その続きで橋の床も綺麗な石畳となって美しい緩やかなアーチを描く。手すりは木製で、朱色と黒が色付けされている。
何だか和洋が融合したみたいで変な橋だな・・・
そう思いつつ下を覗くと予想に反して水が一滴も無く驚いた。
そこに引かれたのは川では無く線路であった。
「コウジ!何やってるんだ、危ないぞ!」
慌てたシュガーが隣まで来た瞬間、大きな音と共に橋の下を小型の電車が通り過ぎた。
「何だあれ!?見ろよコウジ!水じゃなくて変なのが走って行ったぞ!!」
「おい!シュガー落ちるぞ!!ったく、危ないのはどっちだよ・・・」
興奮した勢いで橋の枠に飛び付き、一生懸命短い手を伸ばして訴えるシュガーを抱え下ろした。
「なーなー!アレは何だったんだ!?教えてくれよコウジー!」
少し気になるが、男を見失う訳にもいかないので再び歩き始めると、シュガーが前方に飛び出してきて両手で俺の右手を掴むと、引っ張ったり揺さぶって俺の進行の邪魔を始めた。
「今は出来る限り周囲を観察したいんだ。また後で教えてやるから」
正直少し面倒な所もあり簡単にあしらおうとするが、シュガーは諦める何処かキラキラした瞳で此方を一心に見つめて期待に胸を踊らせている。これでは俺が悪いみたいじゃないか?
きっと小さな子を持つ親も、こんな複雑な気持ちなんだろうなぁ・・・
『いやぁーだ!!』
しかしそれらは全て聞き慣れた鳥籠での風で草葉が揺れる音や土を踏む音、ファーストウルフの遠吠え、ワイバーンの鳴き声や羽音、天龍の咆哮何かでは無い。
初めは聞き慣れない音だと思ったが、よく考えればよく知っている音だ。
じわりと胸の奥が熱くなる感覚・・・
そうだ、懐かしいんだ。
それはいつも普通のように聞いていた音、いつの間にか異常と通常があべこべになっていたんだ——。
金属が擦れる音、エンジン音、鳥のさえずりや、雑踏の音、人の声・・・
慌てて目を開くとそこには目を疑うような光景が広がっていた。
「これは——。街だ!俺達以外にこんなに人がいっぱいいたのか!?」
それは紛れもない街であった。木ではなく沢山の人口建物が並び、聞こえてくるのは獣ではなく人の声。夢にまで見た世界が今目の前にあるのだ、そう思った瞬間に今までの鳥籠での出来事が思い出されて、気づけば涙の粒が頬を伝って石畳に一瞬小さなシミをつくっていた。
「コウジ、どうした?大丈夫か?」
傍らでシュガーが心配そうに俺の顔を見上げている。平気だと伝えるとシュガーは心配させるなよ~。と微笑む。
「ではそろそろご移動願えますか?」
微笑ましく笑い合う2人の間を割って入るように男は独りでに歩き始めた。
ここで置いていかれては困ると、俺とシュガーは慌てて男の背中について行った。
男について歩いていると、今いる場所が大きな橋の上である事に気がついた。レンガのように均等に組まれた岩が脚となり橋を支え、その続きで橋の床も綺麗な石畳となって美しい緩やかなアーチを描く。手すりは木製で、朱色と黒が色付けされている。
何だか和洋が融合したみたいで変な橋だな・・・
そう思いつつ下を覗くと予想に反して水が一滴も無く驚いた。
そこに引かれたのは川では無く線路であった。
「コウジ!何やってるんだ、危ないぞ!」
慌てたシュガーが隣まで来た瞬間、大きな音と共に橋の下を小型の電車が通り過ぎた。
「何だあれ!?見ろよコウジ!水じゃなくて変なのが走って行ったぞ!!」
「おい!シュガー落ちるぞ!!ったく、危ないのはどっちだよ・・・」
興奮した勢いで橋の枠に飛び付き、一生懸命短い手を伸ばして訴えるシュガーを抱え下ろした。
「なーなー!アレは何だったんだ!?教えてくれよコウジー!」
少し気になるが、男を見失う訳にもいかないので再び歩き始めると、シュガーが前方に飛び出してきて両手で俺の右手を掴むと、引っ張ったり揺さぶって俺の進行の邪魔を始めた。
「今は出来る限り周囲を観察したいんだ。また後で教えてやるから」
正直少し面倒な所もあり簡単にあしらおうとするが、シュガーは諦める何処かキラキラした瞳で此方を一心に見つめて期待に胸を踊らせている。これでは俺が悪いみたいじゃないか?
きっと小さな子を持つ親も、こんな複雑な気持ちなんだろうなぁ・・・
『いやぁーだ!!』
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