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「黒翼の反乱」
しおりを挟む王都フォルセーンの夜は、静かだった。
静かすぎて、かえって何かが壊れているようだった。
瓦礫と廃墟が続く路地の奥、リィナは黒いフードを深くかぶり、濡れた靴音を響かせながら歩いていた。
雨は止んでいたが、空気は冷たく、乾ききらない石の匂いが、都市の腐敗を物語っていた。
かつてこの都は、アストラル連邦の心臓だった。
空を切るような塔と、魔導細工の灯が街を満たし、人々は星の名を口にして暮らしていた。
けれど今は――
「どこもかしこも、死んでるみたい」
彼女の言葉に、後ろを歩く魔導師は静かに頷いた。
「これは、時間の死だ。制度の、王政の、そして希望の死だ」
「あなたは……それを望んでいたの?」
「違う。私が望んだのは、“始まり”だよ」
その言葉は、やけに深く、そして哀しく響いた。
ふたりがたどり着いたのは、地下へと続く隠し路地だった。
人目を避け、壁に触れると、古い符術が青く灯る。
重たい石の扉が軋む音と共に、鉄の匂いと灯火の気配が広がった。
階段の先に広がっていたのは、地上とは別の都市だった。
焚き火の光に集う民。
闇市で売買される物資。
祈りの言葉ではなく、号令が飛び交う広場――そこが、“反乱の都”だった。
「ここが、“黒翼の会”の根城?」
リィナは目を細め、青く光る壁画を見つめた。
それは、片翼を広げた黒鷲の紋章。かつて王家が狩り尽くした反乱軍の象徴だった。
「君が彼らに認められるかは、わからない。ただ……」
魔導師は立ち止まり、振り返る。
「彼らは、君の“真名”を知っている。だからこそ警戒する」
扉が開いた。
そこには、銃剣を背にした青年が立っていた。
右目に縫い傷。瞳は鋭く、だがどこか懐かしい光を湛えている。
「リィナ・アゼレイド……本当に、お前なのか?」
リィナの呼吸が止まった。
その声、その姿――間違いない。
「……ユエン……」
かつての乳兄弟、王宮の書庫で泥遊びをしていた頃の、唯一の友。
「死んだって……聞いたのに……!」
「そういうお前こそ、塔に囚われてたって噂だった。……まさか、こんな形で再会するとはな」
ユエンは微笑み、だがすぐにその表情を引き締めた。
「お前が誰であれ、ここは戦場だ。血筋じゃなく、意思で立てるやつしか、俺たちは受け入れない」
その言葉に、リィナはうなずいた。迷いは、もうなかった。
「私は……“生かされた”だけの存在じゃない。取り戻しに来たの。失われたものも、私自身も」
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