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推しの誘惑【完全版】

推しの誘惑・序章

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★『推しの誘惑』序章

「鷹城さんの……あ、あああ…アレをマイクにして……、アイドル・マコ……う、ううう、歌います……」

 高級ホテルのスイートルームに、影内真琴{かげうち・まこと}の羞恥に震えた声が響く。
 真琴は今、恋人の鷹城吾郎{たかじょう・ごろう}と共に、キングサイズのベッドの上にいる。しかし、二人の様子は普段とは違う。真琴が女性アイドルのコスプレをしているからだ。

 女子高生が着るような、制服風の華やかなステージ衣装。派手にアレンジした紺のジャケットに、赤いチェックのミニスカートをはき、足下はロングブーツだ。白いシャツにはカラフルなネクタイまでついている。ダークブラウンの髪は綺麗にブローされ、羽根のようなヘアアクセサリーがついていた。可愛らしいメイクも施されていて、どこからどう見ても、アイドルだった。

 今、真琴は大学生兼家政夫の真琴ではなく、〈大人気アイドル・マコ〉である。
 〈大人気アイドル・マコが、ストーカーから自分を助けてくれたファンの男性に、お礼といってエッチなことをする〉、という設定なのだ。

(ううう……。恥ずかしいよう)

 ――でもこれも全部、大好きな鷹城先生のためだから……。

 真琴は顔を真っ赤にしながら、鷹城のボトムのジッパーとボクサーパンツのゴムを下げ、とうに張り詰めた彼の男根を取り出した。鷹城はクッションに背を預けながら、股間をされるがままになっている。その表情ははっきりと興奮していた。漆黒の瞳が熱で潤んでいる。

「……っ。マコちゃん……。まじで、いいの……? 俺の、可愛がってくれるの?」

 頭の方で、少し上擦った甘い低音が響く。
 鷹城の役は、〈マコにガチ恋しているアイドルオタクの会社員〉である。羞恥に死にたくなっている真琴とは違い、大変ノリノリだ。

「う……うん。あたし、鷹城さんの……アレ……可愛がってあげる……」

 真琴は恥ずかしくて今にも泣きそうである。やや青みがかった黒い瞳がうるうるしている。

「ほんと? 嬉しいなあ。推{お}しのマコちゃんとスゴイこと出来るなんて、信じられないよ……」

 鷹城が真琴のさらさらの髪を撫でる。大きな手のひらは普段通りの彼で、真琴は少しほっとした。

「じゃ、じゃあ……始めるよ……? 上手に出来るか、分からないけど」
「こらこら。アイドル様が弱気なこと言っちゃいけないよ……。きみは天才なんだよ、マコちゃん。その圧倒的なオーラで、俺のこと虜にしてよ。……って、もうハマってるけどさ」

 鷹城が真琴の頬をさらりと撫でる。
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